今やこの時代に、男性と女性の区別などほとんど意味を喪ったはずだし、それは単なる才能の差だと知っているけど、それでもこの作品には「男性」作家には辿り着けないオンナの深みが垣間見える気がする。
もちろん、男性作家さんの描くオンナがすべて類型的で概念めいたものとも思わないし、必ずしもつまらないわけではない。
ただ、才能ある女性作家さんが描くオンナたちには、良くも悪くもオトコの側からは手の届かないあやしさが漂ってくると感じることが多い。
そして、このモノ語りの中の「野田」ちゃんや「キク」ちゃんはそれが格別と言っていい。
私は”ブンガク”が分からないオトコだし、”ブンガク”は必ずしも分かる必要もないという立場だが、その分からなさの具合が途轍もない。
その意味でも、島本理生さんは、また読んでみたい数少ない作家さんになりそうだ。