ケラリーノ・サンドロヴィッチさんの作品は、一昨年の『砂の女』、昨年の『世界は笑う』に続いて三作目だが、KERA・MAP作品は初観劇。
導入部分後のタイトルバック的演出から、もう面白い。
そして、最初は妙な違和感から始まる架空の方言による会話劇が、ある意味ユートピアのようなこの島世界を屹立させていく様は圧巻。
巧みな舞台空間、映像、音響、さらにはキャストによる自在な配置転換、いくつものエピソードや伏線を織り交ぜ、全てがラストへと流れていく様子に感心した。
またキャストが良い。
一癖も二癖もありそうな登場人物が、進むに連れて、どんどん活き活きして魅力的に見えてくるのも心地良い。
こんな舞台を構築し得るケラリーノ・サンドロヴィッチさんの頭脳に驚嘆である。
傑出した舞台だった。
ただ、一点。
主人公、フジオ君のラストの決断はそれとしても、以前の彼を知る人々(家族や友人、彼のことを心配しているだろう人々)は、このまま取り残されたままできちんと前を向いて歩いていけるのかが気になってしまった。