『ループ』
はい! 『リング』シリーズ3作目です! 一応、今作で三部作完結です。
00年作品ですから、7年前ですね。おお……これもそんなに前の作品だったのか(汗)。つい最近の気がしていましたが(汗)。
リングシリーズは毎回どんでんがえしがありますし、内容も全く違って来るのですが、その点が素直に凄いと思います。
それでは解説を。
※以下、ネタバレ注意! まだ読んでいない方は、読んでからにして下さい。
< 主な登場人物 >
・「二見 馨」……今作の主人公。20歳の大学生。父が入院している病院で、「杉浦礼子」に出会い、恋をする。『転移性ヒトガンウイルス』の治療法を探す為にアメリカに行く。
・「杉浦 礼子」……一児の母。息子が入院している病院で、馨と出会う。
・「二見 秀行」……馨の父。生命工学の大学教授。20年前、『ループ・プロジェクト』に係わっていた。『転移性ヒトガンウイルス』発病により、癌となる。
・「クリストフ・エリオット」……研究者。『ループ・プロジェクト』の最高責任者。
・「天野 徹」……研究者。終盤の『ループ・プロジェクト』に参加していた。馨に、『ループ・プロジェクト』の事や、エリオット達の事を説明する。
< 感想 >
今作は、“ホラー”だった『リング』、“SFサスペンス”だった『らせん』とは全く違う“SF”となっております。
『リング』と『らせん』は、まあ近かったのですが、『ループ』とは、かなりかけ離れております。その理由はオチに大いによるのですが。
何となく、ゲームの『シム・シティ』『シム・アース』、映画の『マトリックス』を連想してしまいました。読んだ事のある方なら納得出来ると思いますw
鈴木先生はよくもまあ、毎回全く違った視点でのシリーズが書けたものだと思います。これも才能ですね。この点は非常に評価しています。
今作まで来ると、貞子や、浅川や、安藤や、“呪いのテープ”等はあまり重要ではなくなってきます。
貞子や浅川さんに至っちゃ、名前が出る来るだけで、登場シーンが無いですからね(汗)。
勿論、話に関係はするのですが、重きが全然違います。理由は……やっぱりオチに係わりますね。
それにしても、やっぱり浅川さんはかわいそうな人や(泣)。安藤さんは上手い事やってるのに(涙)。
これはこれで面白かったです。哲学の要素もあったし。
でも、個人的にはリングが1番好きですねw
さて、次回は外伝である『バースデー』の事を書きたいと思いますw
< 核心と矛盾 >
何回も注意して来たので、これ以降を読む方は、既に読み終えている方か、ネタバレしても良い方のみだと判断して書きます。
さて、ループ世界に降臨した事によって、2度目のループ世界を救った高山(馨)ですが、この辺りが大いに矛盾。
まず、ループ世界は2つの未来がある事を頭に入れて下さい。
1回目の世界は、『らせん』の世界。貞子と組んだ高山が世界を滅ぼした世界です。『ループ』の中で言っている、“ガン化”とはこれ以外の何ものでも無いはずです。
2回目の世界は、馨(高山)が復活した世界。貞子(リングウイルス)と戦う為に、ループ世界に降臨した後の話です。
以上の事を念頭に置いてお読み下さい。
= = =
1、貞子が処女の件
馨がエリオットに頼んで、安藤を導き、貞子の子として復活する場面ですが、この誕生シーンにて、“処女からの誕生”と描写されています。
これはおかしいです。
この時点で貞子は最低3回は安藤とセックスをしています。
おまけに、高山の前に、安藤の息子を出産しています。
貞子が増殖するのは、まだちょっと先なので、2人を出産した貞子は、高野舞から産まれた貞子のはず。ですから処女な訳無いのです。
もし貞子が処女膜再生能力を持っているのなら、まあ、“処女”と言い切ってもいいかもしれませんが。
2、誰が安藤を導いたのか
エリオットが馨の依頼で安藤を導き、貞子の子として復活する事は上で書きました。
エリオットが干渉した事柄としては、“高山の腹から暗号が載っている新聞紙を出す事”、“高山のDNAに暗号を刻む事”、“高野舞が呪いのビデオを観るように仕向ける事”でした。
これは現実世界からの技術があれば、容易な事として理解出来ます。
ですが、馨が意思を持ったまま復活したのは、2回目の世界なのです。ここまではいいです。
しかし、1回目の世界(滅亡する未来。『らせん』での話)で、安藤を真相に至らしめたのは誰でしょう?
1回目では、誰も干渉していないはずなのです。エリオットが干渉したのは、2回目の時が初めてのはず。
では、何故高山はこんな事が出来たのでしょうか? おかしいです。
ループ世界の中のみで、死亡以降に干渉能力を持ったというのでしたら、無理やり納得出来るのですが。
ループ世界にも幽霊って居るのかなぁ?
ああ、元祖貞子が居るから居るのかもしれないなぁ(汗)。
そこまで(残留思念・幽霊)、プログラムしていたとしたら大したものです。
3、死後、高山の意志は2つに分かれた事
1回目の世界(『らせん』の世界)のラストで高山は復活しました。
そして貞子と組んで、世界を滅ぼす事にします。
この高山は、死亡直前に現実世界への接触した事を覚えているはずなのです。なのに、その事には触れず、世界が滅びて行く様を見たいと言い切っています。
復活と同時に、自分が現実世界に行けなかった事も理解し、願いが叶えられなかったから、ヤケクソになって世界を滅ぼしたのでしょうか?
馨とは全く逆の行動をしています。
エリオットによって、その様に成長させられたとしても、同一の人間で、こんなにも変わる事があるのでしょうか?
とても疑問です。
= = =
こんなところかな? 重箱の隅ですみません。
シリーズ通じて思った事ですが、諸悪の根源って、エリオットじゃないですかね?(汗)
それにしても浅川さんと、その家族はかわいそう。
馨もどうせなら、最初の誕生の時に合わせて産まれて、浅川さんも助けてやれば良かったのに……。
いや、待てよ?
ループ世界に干渉出来るのなら、そもそも貞子の存在を消して(消去して)しまえば良かったのじゃないかな?
いや、高山(馨)の性格からして、自分でケリを付けたいと思ったんじゃないかな? きっとそうでしょう。
……と自己補完して、今回は終わりにしたいと思いますw