中二モードも一周して徐々に更生し始め、4月に入った事もあり、大きなマイルストーンになる今月のCTの準備を始めています。
アメリカのお医者さんは、受診後、クリニカルノート、という、議事録のような、「今日の記録」をポータルにあげてくれる事が多いです。内容は、検査の結果やら、今後の予定やら、話したこと全部です。それにプラスして、最初に癌が見つかってからの記録が全て記載されています。なのでそれを見ると自分がこの病気とどんな歴史を辿って来たのか、とてもよく理解できます。
前回1月の面談時のノートを改めて見ていたら、今まで気が付かなかった項目があるのを見つけました。
2021年に肺に転移した際に通常の病理検査に合わせDNA解析を行っていました。 最初の直腸がんはStage3だと思われていたので、転移した原因を探る為にDNA解析した様です。本人全く知らずにいてびっくりです。
そこには私の変異はKRAS G12D、と書かれていました。 なんのことか全く分からないので、調べ始めたら、謎が謎を呼び、それから半日使って調べた結果、沢山の事、がんの仕組みや、種類、できる理由、移動、対処など、とてもとても基本的な事が分かり、なぜ先生が私に対しての化学療法に消極的になったのか等、先生達の思考の裏側も見えて来ました。 そして大事なのは、私が今日、いかに綱渡り的に生きているのか、という現実も理解できた事です。
ざっくり説明してみます。
DNAは物理的な3億の遺伝情報の列です。KRASというのは、その中の場所を特定する記号で、ここには細胞の増殖に関連する情報のアミノ酸があります。 G12D、というのは、12番目のDNAは本来Gと表されるアミノ酸(グリシン)のはずが、Dと表されるアミノ酸(アスパラギン酸)に変わってしまってますよ、という意味です。 これがまさに、私の癌の原因です。 本来Gの所に、Dが入っちゃってると、結果として、細胞の増殖を行い始めると、止まらなくなる、という結果をもたらします。 私の今の生活の全ては、このたった一つのアミノ酸のバグでもたらされた結果なのです。
なぜそれが起こるのか。 年齢や、食事や、いろいろな要因がある様ですが、起きた事は、コピーミス。 細胞の増殖自体は、常に行われていて、その際に間違って作られてしまった。それってでも、本来全く起きない事ではなく、その為にそういうバグった細胞を殺す細胞もいて、そういうチェック機能も人間は持っているんだけど、なんらかの理由で機能しなかった結果、それが組織の馴染んで腫瘍ができる、という流れです。
私はKRAS G12Dだけど、G12Cとかの場合もあります。 それはCで表される、Dとは違うアミノ酸(システイン)がDNAとして入ってる場合。他にもG12Vとか、色々ある様で、それぞれ特性が違います。
で、私のG12Dですが、これに効く薬がないんです。この場合の薬ってのは、分子標的薬。この特定のアミノ酸を攻撃して、細胞を壊すことができる薬で、副作用も少なくて細胞を消滅させる薬です。G12Cは肺がん由来のDNAに多くて、これにはよく効く薬があるらしいのですが、Dのアミノ酸は物理的な表面が滑らかで、薬の分子を引っ掛けられないで対処できないのだそうです。
この、KRAS G12Dは攻略不可能と言われていて、再発もしやすいタイプです。 自己防衛にも優れていて、抗がん剤も効きずらく、放射線にも強いので、切って取り除く、が現在唯一有効な手段。 なので、私は、出来たら、切る、を続けるしか無いんです。 もし、体にこの細胞がまだいて、今冬眠してるか、ステルスモードになってるかして、いつか活動を始めるとなると、それは、炎症している箇所に馴染みやすいので、体はなるべく、健康に保たないといけない。 だから、私の主治医の先生は、酒を控えて、肝臓を炎症のない健康に保ち、血圧を下げて、血管に炎症ができない様、気をつけろ、と言っているのだと、気がつきました。
じゃあ、私は治癒は無いのか? というと、実はそうとも言えないみたいです。 がん細胞にも寿命があるのです。 寿命というか、生き続けるわけでは無い。 どっかに隠れてても、TP細胞が見つけて、対処するとか、馴染める臓器が無くて、彷徨っているうちに栄養がなくなって分解するとか、時間と共に、消滅するリスクも増える。 だから、毎日散歩したり運動したりして、血流を上げて、免疫を活性化するよう、勧められたのだと、理解しました。
KRAS G12Dは有効な化学治療が見つかっていないので、私は今日まで綱渡りの様な絶妙なバランスで生きて来たことがよく分かりました。 このタイプの癌は寛解していても、時間が経たないとリスクは変わらずにあるのです。
早速酒やめました。