1979年に日本で初公開された、映画「ゾンビ」。
緊急輸入という宣伝通り、イタリア経由での翻訳のため資料が不足していたと思われる。
今回から日本ヘラルド映画のフィルムを中心に、これまでに映像ソフトで日本語字幕に翻訳された内容を解析する。
悪夢にうなされるTV局員のフランが、同僚に声をかけられる。
生放送中のスタジオは、死者が甦ったという衝撃の話題で大騒ぎだ。
偽善的な態度で学者の話をたしなめる司会者だが、事態の重大さは人々の正気を失わせてゆく。
日本ヘラルド映画版(以下、H版)の翻訳は、「ファンが騒いでる」。
ここの原語は、THE SHIT'S REALLY HITTING THE FANだ。
FANには感情を掻き立てる・煽るといった意味があり、HIT THE FANは、大変な事態と訳される。
よって、この部分の真の翻訳は、
「大混乱だよ」
フランの同僚が紙コップを手に現れる。
H版では字幕の出ない部分。
言っている内容は、「私のコートを返して」だ。
フランが眠っている間、彼女のコートを羽織っていたわけだ。
しかし、後のバンダイビジュアル版(以下、B版)では映像に合わせたのか、飲み物の表記に誤訳された。
意訳するならば、せめて「もう交代して」だろう。
H版の最大の誤訳は、レスキューステーションを「穴うめ局」とした事だ。
フランたちが揉めているのは、ゾンビ災害の為の「緊急避難所」が次々と壊滅しているにもかかわらず上司の指示でテロップを流し続けているのが理由だ。
視聴率のために、古い情報でも構わないという非人道的な上司に歯向かうフラン。
「閉鎖した局に援護を送って殺したいの?」では意味が通じない。
「閉鎖された避難所を表示して、人々を殺す気?」
現在は、ほぼこの訳で統一されている。
避難所のリストを叩きつけ、大声で叫んで出て行く女性オペレーター。
H版で字幕のない部分だが、テレビ放送の吹き替えでは「ダン!」と叫んでいる。
女性が席を離れた後、交代する局員の名を呼んだように処理したようだ。
が、シナリオでの交代する男性の名前はdustyだ。
彼女は「Damn」(クソが!)と叫んだと思われる。
このセリフはシナリオに記載されていないが、B版の上記の意訳が正解ではなかろうか。
少なくとも、上のブルーレイ翻訳の「デイヴ!」でない事は確かだ。
プエルトリコ人の住む低所得者住宅を取り囲むSWAT部隊。
この数週間で亡くなった家族や友人の遺体を、政府の指示に逆らい引き渡さないマルチネス達。
隊員のロジャーは、複雑な思いで突入する。
すでにゾンビと化した住民が襲い掛かる中、彼は同僚の黒人隊員・ピーターと運命を共にする事となる。
ウーリー「出て来い プエルト・リコのバカめが」
ウーリー「プエルト・リコ人と黒助はぶっ●してやるぞ」
ウーリー「なぜあんな貧乏な奴らがこんなホテルにいる」
ウーリー「なぜ呼び出さん 奴らをぶっ●してやるんだ」
狂ったSWAT隊員・ウーリーの暴言は、H版が最も過激に翻訳されている。
この一連は、H版では翻訳字幕の出ない部分が多い。
ウーリーの暴走を止めるロジャーに「離れろ!」というピーターのセリフも訳されないし、上の最初の被害者場面も一切字幕がない。
甦った夫に抱きつく女性がその名を呼ぶのだが、光山昌男氏が字幕監修したLDではビルと誤訳している。
正しくは、「ミゲル」。
住民たちは政府に逆らってまで、何故遺体を地下に隠していたのだろうかというロジャーの疑問に静かに答えるピーター。
cause they still believe there's respect in dying
H版の翻訳は、「死の尊厳を信じてるからだろ」。
上のブルーレイ字幕では、より具体的に意訳された。
が、死者に敬意を払うとは家族や友人を物のように政府が処理するのを許せなかったという気持ちではなかろうか。
あえて僕なりに意訳するなら、こうしたい。
「たとえ死んだ後でも 守りたかったのさ」














