ゾンビ新世紀完全版5枚組DVD-BOX発売を祝して | スクリーンに雨が降る

 

この映画を愛して遥かな歳月が流れた。

夜明けを求めて、いかに長い夜を越えて来たことか…

今回のDVDボックス発売はファンにとっての祭りであり、それぞれがブログで歓喜の声を上げていた。

一方、この映画に関しての間違った解釈やデマ話に、正直驚きもした。

 

本作が一番好きだと言う自称業界人のブロガーが、TV放送版のサブタイトルを‘死者が地上を歩く日’などと間違い情報で流した時は、心底呆れ果てたものだ。

正しくは‘甦った日’であり、このようにデタラメでファンを混乱させる輩のいかに多い事!

 

 

かつて、その業界では知らぬ者のない男がいた。

その名をM山という。

自らマウントライトとかいう会社を作り「ゾンビ」の米版発売にも尽力したのだが、彼が流した情報は嘘としか解釈出来ない話があまりに多く、それが定説として今に伝わっている。
何を信じてよいのか分からない、それがこの「ゾンビ」という作品の魅力のひとつであったのも確かだが。

 

昭和54年3月、日本で公開されたバージョンからして嘘にまみれている。

監督は出資者側と共同で扱われ、惑星爆発映像や説明文がオリジナルであるかのように英字で付け足される。

この映像を「メテオ」からの流用だと伝えたのも、M山だった。

僕は確認していないので断言出来ないが、ある人はこの情報は事実でなく、「メテオ」にそんな映像はないという。

また、劇場プリントではアパートの場面で音楽が流れるタイミングが違っていたと断言している人がいるが、初公開時に2回行って、その後も映画館で十数回見た僕は、それはあり得ないと断言する。

 

TV初放映の通称「サスペリア版」に関してはBOXの解説書で詳細に記されているので語る事はないが、この時使用された惑星爆発はリピート編集されていて(本来爆発は一回)、上映フィルムとは効果音も違う。

後の再放送版でもこの音だけは修正されなかった。

 

昭和58年に海外で「DAWN OF THE DEAD」のビデオソフトが発売となり、待ち焦がれた僕は歓喜と絶望の混乱状態に陥る。

確かにカットされた映像は復活した。更に、時間も10分以上長い。

が、存在したはずの映像が消えている!音楽も違う!
 

昭和59年当時、吉祥寺近辺に海賊版ビデオを扱うレンタル店があった。

そこは放送禁止作品である「ウルトラセブン 12話」を平然と貸し出すような所で、未公開海外映画の輸入ビデオソフトも多量に置いていた。キワモノが集うブラックマーケットだ。

そこの常連である、※と知り合った。

 

※の友人に、日本芸能史に偉大な足跡を残す‘狂猫’メンバーの子息がおり、その彼も映画マニアである。

※は彼から、貴重なビデオをダビングしてもらっていた。

その一本に、「ゾンビ」の劇場公開宣伝番組があり、僕は驚くべきものを見る。

日本公開版でカットされた映像が、字幕入りで存在しているのだ。

後半のデパート内での生活場面は公開直前に、時間調整で削除されたという事実。

番組では、今回のDVDに収録された60秒予告(上映館の字幕入り)や当時の映画パンフレットにも載っている銀座での宣伝映像も見られ、小森和子とおすピーが‘割と面白かったわよ!’などと解説している。

後年「ディレクターズカット版」のパンフに掲載された写真は、このビデオが流れ着いたものだろう。

 

さて、これより数年前の事。

その店の常連に、「サスペリア版」の二ヶ国語放送を録画したビデオを所有する男がいた。

※がダビングを頼むと、万単位の額を要求されたそうだ。

当時まだ中学生だった※にそんな金額が払えるはずもなく、この話は立ち消えとなった。

この男こそ、まだ無名時代のM山だったという。

 

昭和60年、例の海賊ビデオ店から※に翻訳の依頼が来た。

「DAWN OF THE DEAD」米国劇場公開版の字幕原稿作成である。

が、※は英語の苦手な高校生、翻訳など出来るはずがない。

依頼する方もどうかしている。

で、困った※から、僕に連絡が来た。

 

こちらも英語は分からないが、力強い味方があった。

ヘラルド出版の「死者たちの夜明け」、この映画の原作本だ!

馬鹿な高校生が二人、必死で原稿を起こした。

小説に書いていないセリフは意訳ではなく、超訳で逃げたw。

だから後に‘デタラメな訳の海賊版’として、ごく一部で伝説となったわけだ。

 

ちなみにこのビデオは、同時期に出た海賊版商品の中で最も情報量の多い字幕としての完成度も誇っていたと聞く。

それから少しして、CICビクターから正式に国内での「ゾンビ」ビデオソフトが販売された。

ここで僕は、再び絶望を味わう。

内容は、すでに入手した米国劇場公開版と同一だから。

 

日本公開版を手にする最後のチャンスを失った!

その時は本気でそう思った。

 

 

夜明けの光はまだ見えない…

 


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「ゾンビ」初公開時の紹介番組。上映時に静止画処理される映像もネガ反転で使用された。

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予告映像には上映館のスーパーが入っている。


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エキストラ150人を動員したと言われる、銀座での公開前デモンストレーション映像。ミイラ男や酔ったホームレスにしか見えないようなのも混じっている(笑)。