ひとりの病室 | シジンの日記

シジンの日記

つれづれなるままに、心にうつりゆくよしなしことを、だらだらと書かせていただいてます。

ばたばたと転院やら退院やらする人が続いて、いつの間にか大部屋はひとり部屋になってしまった。
ひとりになると大部屋は大部屋と呼ぶように広い。
たぶん自分の家よりも広い。

ところで家にゴキブリが出たときから私は自分の視野内で動くものに敏感になった。
視界の端の方ででも、少しでも何かが動くとそれに反応する。
この能力で何匹ものゴキブリを駆除した。

ひとりになった広い病室で本を読んでいたりすると視界の端の方で何かが動くのを感じる。
もちろん私以外には誰もいないのだから何かが動くはずはない。
さすがに病院だからネズミやゴキブリが出ることはないだろう。
だいたい視野に飛び込んでくるのはネズミやゴキブリのような黒い何かではない。
雪のように白い何かが動いている。
それがとなりの誰もいないベッドの足元で、すーっ、と動く。

ふとした拍子に視界の端を白い何かが横切る。
私はそちらに目を向けるがもちろん何もいない。
そんなことが何度何度もも続く。
ときには、カサカサカサ、という謎の音が聞こえたりもする。
同室の人間がいるときにはそんなことはなかった。
広い病室に一人でいるようになってから始まった、

この白いものは何だろう?

きっと一種の妖怪なんだと思う、
不思議な現象を理解するためのシステムとしての妖怪。
家鳴りの親戚のようなものだろう。

これは一種のゲシュタルト崩壊。
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シジン