霞が関公務員の日常 -58ページ目
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【クイズ回顧】OBA-Q「天2」作戦記録(2007.1.13)

2007年1月13日に川崎市で開催されたクイズのサークル対抗の大会「天2」の記録です。
4年も前に書いた文章ですが、せっかく自分のブログを作ったので、今さらながら載せておきます。


(実際には2011年2月14日に載せましたが、トップページにこんな長文が載るのは気が引けるので、ひっそりと執筆日にさかのぼって載せておきます)



【OBA-Qのメンバー(U会長作成のキャッチフレーズ付き)】
  U(「泰然自若」総大将)←サークルの会長
  S夫(「博覧強記」知恵袋)
  S妻さん(「乾坤一擲」勝負師)
  Aさん(「質実剛健」御意見番)
  N子さん(「疾風怒濤」突貫娘)
  I(「猪突猛進」切込隊長)
  Oさん(「豪放磊落」ムードメーカー)
  T(「誤答上等」ヒットマン)
  AZ子さん(「沈着冷静」OBA-Qの良識)
  M(「電光石火」クイズの鬼)
  K(「機略縦横」天才軍師)←私(天才軍師はなかろう…)


※出場していない方は省略させていただきました。
※「さん」がついているのは、女性か私から見て年上の人です。




OBA-Q「天2」作戦記録(著:OBA-Q「天2」作戦参謀 K)



はじめに

クイズサークル博覧会、そして「天2」、すばらしいイベント、すばらしい大会でした。
主催者の皆様、ありがとうございました。


OBA-Qとしても、博覧会出展企画を成功させ、「天2」でも準優勝という好成績を収めることができました。
ここでは、OBA-Qが「天2」にどのような作戦を立てて臨んだか、その一端を(戦いの全貌を語るのは難しいので、純粋な作戦面に
限って)紹介したいと思います。



1.大会前日まで

SNS上での議論、12月と1月の2回開催した対策会を通じ、次のように作戦を立てました。


1回戦については、誤答時の解答権移動というルールのために、劣勢からの逆転は困難で、先に人数を減らした方が人数差以上に有利になると予想しました。


例えば、残り1人のAチームと残り3人のBチームという状態で、Aが誤答してもBは2人になるだけ、一方、Bが誤答するとAはキャプテンが出てくる。
このような極端な例でなくても、誤答のペナルティは人数の少ない方が軽いと一般化できます。


2択の問題が出ると、その差はさらに大きくなります。
先ほどのAとBの例で、全員の実力が同じで誤答しない場合、Aは25%、Bは75%の確率で正解します。
これが人数が多いことの利ですが、完全2択の問題が出ると、この利が失われ両方とも50%になります。


ここから事前に立てた作戦は、「とにかく先に人数を減らす」「人数が相手より少なければ突っ込む(特に2択は絶対押す)、多ければ慎重に」の2点。


2回戦については、劣勢からの逆転も可能と予想しました。
逆転に必要なのは、早押し機とタイムアウトの数。


ここから事前に立てた作戦は、「劣勢が確定した(相手が先に500点に到達するのを防げないと感じた)ら、早押し機とタイムアウトを温存して30問を超えてから勝負」「有利なときは何もする必要がない」。
また、タイムアウトは、最終盤で必要になる可能性があるので、できるだけ温存しておくこととしました。


準決勝・決勝については、作戦はそれほど意味がないのであまり考えませんでした。
準決勝では誤答5~6個までは全く問題ないことを確認する程度。


このような作戦の概要と、状況ごとに早押しをどの程度突っ込むか、2回戦のタイムアウトの取り方等の細かな点も含め、5ページほどの作戦書を作りました。
しかし、これは詳細すぎるので参考にとどめ、実際の作戦はAブロックを偵察してその場で立てることになりました。


また、問題のヤマとして、1月13日に関わる問題と時事問題を計数十問作り、全員で共有しました。


ところで、1月7日(日)の対策会は、偶然「クイズ丼」さんと同じ会場になり、1回戦と準決勝のシミュレーションができました(勝ち上がると対戦する2回戦のシミュレーションはせず)。

1回戦ルールでいきなり4連敗して、このルールの厳しさと、比較的簡単な問題での多人数早押しに弱点があることを知ったことは、本番に向けてとても有益なことでした。

「クイズ丼」さん、ありがとうございました。



2.Aブロック偵察

博覧会の方のOBA-Q企画に携わらないメンバー数人で、Aブロックの偵察をしました。
得られた情報は次のようなもの。


<1回戦>
・ほぼスルーは出ないこと(平均1問)。
・5問目までと6問目以降の問題の難易度に差があるように感じたこと。(私が分かった問題は、最初5問が30%、それ以降が60%)
・5問目は数字が答になったこと。
・15問目は2択問題だったこと。
・ジャンルは科学がやや少なく(8%)、科学が得意の人が得意とする類の問題はさらに少なかったこと(科学を得意とする人のいない
OBA-Qには有利と思われた)。
・問題間のインターバルが短く、状況に応じて作戦を指示する余裕はないこと。


<2回戦>
・30問目まではスルーがかなり出て(平均8問)、予備問題突入は必至(各試合の使用問題数は47問と37問)であること。
・20問目までと21~30問目の問題の難易度に差があるように感じたこと。(私が分かった問題は、20問目までが17.5%、21~30問目が45
%)
・予備問題は1回戦の問題よりさらに簡単であること(私が分かった問題は90%)
・30問目までのジャンルは、2試合とも文学・歴史、芸能・音楽、スポーツが各4問、科学が3問、その他一般が15問であったこと。



3.1回戦

1回戦の開始直前に、メンバーに以下の作戦を伝達しました。


・1問目はキーワード問題。「キャプテン」の可能性が高いが、変えてくるかもしれない(Bブロック第1試合なので分からない)。候

補は「天」「10(Ten)」あたりか。
・5問目までは慎重に。難易度が下がる6問目以降は積極的に。
・14問目終了後に客席から合図するので、既に正解した人は合図を見たら、早押し機についている人の背中を叩いて次が2択であること
を知らせる。相手より人数が少なければ2択状態で即座に押し、多いか同じなら押す根拠を持てるまで待つ。(これは、ルール及びクイズ道徳に反しないと考えて私が提案し、OBA-Q全員で実行しました。主催者又は対戦相手の名古屋大学の方々が、ルール又はクイズ道徳に反するとお考えであれば、申し訳ありません。)
・相手より人数が少ないときは突っ込む、多いときは慎重に。


出場メンバーは、S夫、S妻さん、Aさん、I、N子さん、T、Oさん、AZ子さんの8人と、キャプテンのU。
M、私が抜け番。(ちなみに、出場はしませんでしたが、Oくん、Kくんを合わせた13人がOBA-Qチームです。)


1問目。キーワード問題ではあったが、キーワードの読みは外れて開催地の「川崎」。
普通の早押しと同じ状態になったが、S妻さんが「川崎大師」を正解して幸先のよいスタート。


常にリードするが大差はつかない展開となり、14問目終了時点でOBA-Q2人、名古屋大学5人。
次が焦点の15問目。客席から手を挙げてステージ上に伝える。


Aブロックでは、問題の最初に2つの選択肢を言ったので完全2択状態になったのが2問(5円玉、表層雪崩)、キーワード(ブッシュ大統領、三毛猫)を先に言ったので考えて答えられたのが2問(共和党、メス)。

当然、キーワードが先の方が望ましい。


問題は「今年の干支はイノシシ~」で始まった。
よし、キーワードが先、あとは2択になってくれと祈る。

「イノシシは奇蹄目、偶蹄目~」と続く。来たっ。
Oさんが押して「偶蹄目」と答える。正解!


続いてN子さんがプッチーニのオペラ「トスカ」を正解。
キャプテンUの登場となり、3問目で「化政文化」を正解して、名古屋大学に勝利。


ちなみに、この「化政文化」は、待ったりせずきちんとポイントで押していた。
どんなに有利で誤答のペナルティが重い状況でも、慎重にならず全力で早押しに挑むUの姿を見て、私は、何と頼もしき総大将かなと改
めて感じ入ったのでした。


その後、2回戦の対戦相手となる「岐阜クイズ愛好会(Mino-Ten)」対「クイズ丼」の1回戦を観戦。
対策会でOBA-Qが4連敗したクイズ丼に Mino-Ten が圧勝するのを見て、震撼する。



4.2回戦

2回戦の作戦の大きなテーマは、何人正解する必要があるか。
「7人以上の正解は現実的じゃない。5人(8×6×4×3×2=1152 なら18問正解)で勝てるかもしれないけど、6人正解(6×5×
3×3×2×2=1080 なら15問正解)を目指すべき」というのが結論。


さらに、Mino-Ten の1回戦の圧倒的なパフォーマンスを見て、OBA-Qの誇る2枚看板、UとS夫といえども6~7問の正解は期待できない、5人ではなく6人正解が絶対に必要だと意を決しました。


出場メンバーは、U、S夫、S妻さん、Aさん、M、N子さん、Oさん、AZ子さんの8人と、キャプテンの私。
最初に早押し機につかないのも私。
I、Tが抜け番。


実力的には、U、S夫が抜けて強く、Aさんが続く。
残り6人はほぼ同じだが、S妻さん、M、N子さん、私の4人は簡単な問題でのスピード勝負に強く、OさんとAZ子さんはスピードよ
りも知識で正解するタイプ。


問題の傾向は、1~20問目が難しく、21~30問目が中ぐらい、31問目以降は極端に簡単になる。
6人以上の正解者を出すためには、OさんかAZ子さんのどちらかに、早い段階でどうしても1問取ってもらいたかった。


2回戦の直前に、メンバーに作戦を伝達しました。まずは全員共通作戦。


・20問目までは慎重に。誤答はできるだけ控え、得意ジャンルの問題だけ積極的に押すなどメリハリをつけて押していく。
・21問目からは積極的に。どれぐらい積極的に行くかは状況による。
・31問目からは徹底的に早く押していく。
・相手にリーチがかかったら、早押し機を全部失うまで解答権を取り続けるつもりで押す。大量の早押し機を残したまま負けるのは、恥
ずかしいことだ。


そして、個人別作戦。
「勝敗の鍵を握るのは、OさんとAZ子さんの2人です。スピード勝負になる前、20問目までに1問取るつもりで、積極的にいってくだ
さい。次に、S妻さん、N子さん、M、私。この4人は、30問目以降、スピード勝負に勝ってチームの勝利をもぎ取る責任があります。U、S夫、Aさんは信頼しています。普通にクイズをやってください」と伝える。


試合開始後は、タイムアウトのことばかり考えていて、展開をあまり覚えていないのだけど、N子さん、AZ子さん、S妻さんの女性陣が次々に正解し、U、S夫のツートップも点数を稼いでいく。
Mも正解し、あれよといううちに、OBA-Qが432点(4×3×3×3×2×2)、Mino-Ten はまだ2桁という大きなリードを奪う。


試合前は劣勢になったらどうするかばかり考えていて、先リーチをかけられても、こちらが144点以上(4P、2P、1P2人の4連答で1000点到達)、早押し機が6個以上あればまだ勝負できるので、それは何とかクリアしてくれと思っていました。
AZ子さんが2問目に早々と「ミドリガメ」で正解して、それはクリアできると思ったら、まさかの大量リード。


でも、まだ勝ったわけじゃない。
ここから10問連続して取られて追い上げられるが、Uが正解して540点でリーチ。


このタイミングでは、U(5P)と私(1P)を交代、AZ子さん(3P)と私(1P)を交代、タイムアウトをかけない、という3つの選択肢があった。
ポイント前に押して答をひねり出す展開になるのでクイズの実力差が現れにくいこと、Uが6Pにしても648点で2Pの人にリーチがかか
らないこと、そして最大の理由、私がクイズをやりたかったことという3つの理由で、タイムアウトをかけてUがout、私がin。


さらに Mino-Ten に追い上げられますが、S夫、S妻さんの正解で 1080点(U5、S夫4、S妻3、N子3、AZ子3、M2)で勝利。

Mino-Ten は、10×6×2×2×2の480点。
よく見ると、正解数は14問対17問で3問も Mino-Ten の方が多いのですね。
本当に薄氷の勝利でした。


リードを保ち、誤答もなかったので、私が采配をふるう場面はほとんどありませんでした。
状況ごとの作戦のバリエーションを披露したかったという思いも少しありますが、総大将と前線の将兵が活躍して参謀は暇というのが、
いちばんいい戦い方なのでしょう。


それと、私はスピード勝負に勝つ責任があり、スピードのないOさんには20問目までに取ってくださいとか偉そうに言いながら、30問目を過ぎて「『岡』という漢字のつく都道府県~」という絶好のポイントで押し勝ったのがOさんで(誤答でしたが)、1回も解答権を取れないのが私でした。
本当に失礼を申し上げました。



5.準決勝、決勝

準決勝と決勝に関しては、作戦は特にありません。
Uの「弱者を見くびるなかれ、強者を恐れるなかれ」という1対1の心構えを再確認して、準決勝に臨みました。


打順は、I、私、T、Aさん、M、S夫、Oさん、S妻、U。

N子さん、AZ子さんが抜け番。
早いが誤答も多い1~3番に、TBSテレビの「天」と同じ4番Aさん・5番M・9番U、6~8番も「天」と同様に6番に実力者のS夫、
7番に勝負のポイントとなるOさん、プレッシャーのかかる8番にS妻さんを置いた、オーソドックスな布陣。


多くの人に得意ジャンルの問題がぴったりやってくる幸運にも恵まれ、常磐クイズセンターに勝利。
私も早押し機について2問目に得意のスポーツが飛び込んできて、「チップイン」で正解。
後にも先にも、私が解答権を取った唯一の機会となりました。


決勝の相手はA(あ)。
相手の方が個々人の実力は上なのだろうと思いつつも、取れる作戦は何もありません。
個々人がベストを尽くすだけです。


出場メンバーは1回戦と同じに戻し、N子さんとAZ子さんを入れて、Mと私が外れる。
打順は、準決勝での私の位置の2番手にN子さん、Mの5番手にAZ子さんを入れて、あとは同じ。


善戦しましたが、敗れました。
相手の力が上だったと認めるしかないでしょう。


準優勝という結果は満足できるものでした。
個々人の力と、U総大将の度量と、そして何より「クイズを楽しむ」というサークルの信条が、この結果をもたらしたのだと思います。
私が中心になって知恵を絞った作戦も、少しは貢献できたかなと思います。



6.おわりに(私と「天」)

最後に少し自分語りをさせてください。

私は、1995年のOBA-Q結成当初からメンバーでしたが、1996年にテレビ朝日の「アタック25」に出場して情けない負け方をして以来、クイズがあまり楽しくなくなり、OBA-Qからフェードアウトしてクイズの世界を離れました。
実力もないのに勝ちたいという思いばかり強かったのが原因だと思います。


転機になったのは2002年の「天」。
テレビをつけたら偶然(存在すら知らなかった)、「天」をやっていて、見知ったOBA-Qの仲間がホノルルクラブと激闘を繰り広げ
ていました。


あまりの熱戦に感動し、Uに「すごかったね」と言ったら、Uから「またOBA-Qに来たら」と誘われました。
正直5年も行っていないので気後れしましたが、行ってみたらブランクを感じず楽しむことができ、OBA-Qメンバーに復帰しました

「クイズを楽しむ」というOBA-Qの信条と、「天」が、私をクイズの世界に戻してくれたのだと思います。


このように「天」は私にとっても出場した方々とは違う意味で思い入れのある大会だったので、「天2」ではOBA-Qを少しでも勝利に近づけるための作戦立案に全力を注ぎました。
それが、メンバー全員で「クイズを楽しむ」ことにもつながると信じて。


さて、大会の最後に、主催者のI君から「博覧会の次回開催は、協力してくれる人の意見を重視して決めたい」という発言がありました
まさにそうあるべきだと思い、自分に何ができるか考えてみました。


クイズ界において、団体戦での作戦立案という分野は、比較的未開拓の分野だと思います。
私にとっては得意分野なので、全力で作戦を考え、実行し、その顛末をクイズ界に広く公表することで、クイズの発展にわずかでも貢献
できるのではないかと考えます。


「天2」について本稿を書き、「天3」開催の際にも同じことをすることで、「クイズサークル博覧会」に協力していきたいと思います(楽しんでるだけじゃんと言われると返す言葉がない…)。


最後に、主催者のグランドスラムの方々と、すべての参加者の方々に、あらためてありがとうございました。

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