経理の仕事をしてもうすぐ6年になる。

40代も半ばにして6年という年数は短いのだけど、
この仕事は自分の性に合っているとつくづく感じる。
もっと早くこの仕事に就きたかった。

僕にとって経理の仕事の何がいいかというと、
なんといってもごまかしが利きにくいところになる。
経理をするには計算や数字が得意でないといけないのだけど、
それらは正しい・間違っている、合っている・合っていないが
はっきりしており、自分の計算能力がそのまま反映されやすい。
そのおかげで自分の得意分野を活かすことができる。

江戸時代の幕府の役人では、勘定方は実力主義が反映されていたため、
身分の低い旗本でも出世のチャンスがあったらしい。
計算能力が必要とされる仕事は、
世襲ではなんともならないところがあったのだろう。
個人の能力が評価されやすいフェアな世界だったんだなと思う。

また、会計のルールは一般に公開されていてある程度はっきりしている上に、
経理はどんな小さな会社でも常に必要とされる、一定の需要のある仕事である。
そして、日本の社会の中でならどこにいっても通用するという、
汎用性の高さがまたいいなと思う。



僕はもともと技術者になりたくて、新卒では金融系のシステムエンジニアになった。
IT業界はドッグイヤーといわれるほど技術の陳腐化が速い業界だと知ってはいたが、
そのために開発手法も常にトレンドがあり、
仕事の進め方や仕様書の記述の仕方などもあまりかたまっておらず、
年月をかけて洗練されたものになっているとはいい難かった
(まあ普通は学生がそんなことを知っているとは思わないが)。

しかも設計思想を持った技術者らしい技術者のいない会社に
入社してしまったため、かなり多くのシステムが属人化していた。
そういう社風のため、侃々諤々とオープンに技術的な議論をする雰囲気はなかった。
またそういう内にこもった、その会社内でしか通用しない
知識や技術を仕事にするのは、あまりしたいことではなかった
(しかも金融のシステムはメインフレーム系で、技術的にもかなり古いものだった)。

そこからそういう仕事を変えるべく、もともと興味のあった法律を
仕事にしようと転職もしたのだが、需要が少ないのがネックだった。
だから総務人事をしながら法律的な仕事も時々関わる程度だったのだが、
今思うのは、こういう仕事は客観的な指標が乏しく、評価をつけにくい。

読解力が弱い人は、人が言っていることを聞いて理解することも、
自分が言っていることが矛盾のあるおかしなことだと認識することもできない。
そんな、人の言うことに耳を貸さず、はったり上等で堂々とごまかしたり、
臆面もなく人に責任を押し付けることができる人が、往々にして大きな顔をしていたりする。
だから、優れた上位者が適切に人を評価して判断しないと、
悪貨が良貨を駆逐するバカげた状況になりかねないのだが、現実にそうなっていた。
長い期間にわたって日本の経済が発展しないのは、こういうところが要因だと思う。



その点、経理はいい。
計算はできる・できないがかなりはっきりしている。
会計ルールは社会に開かれている。
一定の需要もある。
オープンでフェアな世界だ。
そして、誠実で真面目であることが評価される。
すばらしいことですね。