この間、ずっと前に録画していた「トロイ」を見た。
僕は主演のブラッド・ピットが好きだし、トロイア戦争の話も昔から好きだったので
そこそこ期待して見たんだけど、ちょっといただけないできばえだった。
原作とはいろいろ違ったからね。

何より残念だったのが、アキレウスの苦悩について何も描かれていないことだった。
原作では、アキレウスは、「戦えば短いが英雄として死ねる。
戦わなければ地味だけど落ち着いた長い人生が与えられる」という予言を与えられる。
最初は「英雄としての死」を選び、ギリシア軍最強の戦士として活躍するが、
ギリシアの総大将と女をめぐって仲たがいをし、へそを曲げて戦いに参加しなくなる。
そのために、ギリシア軍は次第に劣勢となっていく。

ところが、親友(映画では従弟)がトロイア軍に殺されたことに怒り、
再び戦いに参加することでギリシアが優勢となっていくのだが、
アキレウスはトロイアの王子に踵を弓で射られて、予言どおりに死んでしまう。

個人的には、このアキレウスの苦悩が、トロイア戦争の中での最大のポイントだと思う。
人の生き方として、現代にも通じる内容だしね。
また、能力のある人は大なり小なり個人主義の傾向が強い、
ということを示唆しているようで、すごく興味深い。
でも、映画ではアキレウスが「英雄としての死」と「地味だけど平穏な長寿」の
選択に悩む姿は一切カットされ、その分、恋愛色が強くなっていた。
映画が売れるように、商業主義に流された感が否めない気がした。

ところで、トロイア戦争については、
マンガギリシア神話7巻、「トロイの木馬」(里中満智子、中公文庫)が詳しくて面白い。
興味がある人は読んでみたらいいと思う。