なぜ立憲民主党には 「マトモな候補者」 がいないのか····
野党が質の低い 「炎上議員」 を量産してしまう理由
*PRESENTS Online (6月17日) より*
地方選挙で与党系候補者の敗北が続いている。
早稲田大学公共政策研究所の渡瀬裕哉さんは
「岸田政権は風前の灯であるが、2009年の政権交代時とは状況が大きく異なる。
人材難の野党は、無理に候補者を擁立しようとして、トラブル傾向がある人物を公認する事案が頻発している」 という──。
※ 街頭演説会に参加する立憲民主党の泉健太代表と岡田克也幹事長 (2023年4月22日)
◆ 岸田政権は 「風前の灯」 だが····
岸田内閣支持率の超低空飛行を背景とし、4月の衆議院補欠選挙・5月の静岡県知事選挙のような注目選挙だけでなく、地方の首長選挙で与党系候補者が惨敗する事例が出始めている。
日本の選挙の地合いに “ 大きな変化 “ が起きつつあるようだ。
9月に自民党総裁選挙が視野に入る中、岸田首相は事実上解散権を封じられており “ 八方塞がり状態 “ に陥っている。
したがって、2009年以来の与野党の政権交代が非現実とは言えない状況になりつつある。
しかし、2009年と比べて野党の “ 政治家の顔 “ が国民には見えてこない。
前回の政権交代時は 「影の内閣」 やマニフェストが公表されており、政権交代後のビジョンについては “ 不完全ながら “ も国民には示されていた。
しかし、現在の主要野党は 「影の内閣」 やマニフェストを提示していないことはもちろん、選挙区候補者を十分に擁立できていない有様となっている。
つまり、彼らには政権を担当する “ 構想も能力すらもない “ のだ。
◆ 野党が第一に取り組むべきは 「マトモな議員を揃えること」
安倍政権時代に板についてしまった “ 万年野党体質 “ は、日本の政党政治から活気を奪ってしまった。
本来、国民は健全な政党政治を育成するため、政党交付金を各政党に “ 税金から支出している “ が、各政党はその利権に甘んじるばかりで、本気で政権交代を目指す意欲を失っている。
野党政治家は政権運営の責任が問われる与党ではなく、万年野党の “ 第一党でいることに満足 “ している。
まさに、日本の野党政治家の政治姿勢は “ 政党政治の堕落 “ を象徴するものだと言えよう。
そのため、日本に健全な政党政治による競争が復活するために、一からやり直すことが必要だ。
このまま解散総選挙に突入したところで、その結果は国民にとって良いものになるはずがない。
野党が第一に取り組むべきは 「マトモな議員及び立候補予定者を揃えること」 である。
当然であるが、全衆議院小選挙区で、有権者に選択肢となる候補者を提示できない政党に与党になる資格はない。
国民全員に選択の機会を与えられない政党に “ 政権担当能力は無い “ からだ。
仮に単独政党で全小選挙区に公認候補者を立てられないなら、複数政党で協力しても良い。
それが国民から政党交付金を受領し、政権交代を目指す政党の “ 最低限の義務 “ だ。
しかし、上記の通り、小選挙区の野党の候補者枠は依然としてスカスカだ。
◆ SNSで大炎上する新人候補者たち
もちろん、現在の野党には、良い人材が集まらないことも事実だ。
だが、政権交代を目指す野党が “ そのような言い訳 “ をするなら、むしろ、それほど魅力がない政党は解散したほうが国民のためだ。
※ 国民民主党の東京4区公認内定予定候補者の井戸まさえ氏。
元草津町議の性被害疑惑をめぐる発言で大炎上した (2021年12月9日 撮影)
そして、無理をして公認候補者を擁立しようとすると猫の手も借りたい状況となる。
立候補予定者に対して “ 十分な事前審査 “ をすることなく、トラブル傾向がある人物を公認してしまうことも少なくない。
そして、公認候補者のトラブルに巻き込まれて、党幹部が公認取り消しやトラブルの火消しを強いられるとともに、党としてのブランドイメージを傷つけてしまうこともある。
たとえば、国民民主党が東京15区で擁立していた女性の公認候補者の過去のキャリアに問題が発覚し、同候補者が泣きながら動画を投稿した挙げ句、結果として公認が取り消される “ 事件 “ があった。
また、東京4区では虚偽の性的被害で告発されて、冤罪被害にあった草津町長らに事実確認を怠った記事を書いた元衆議院議員・ジャーナリストの井戸まさえ氏を公認したことで、同党がX (旧ツイッター) 上で大炎上し、玉木党首が火消しに動いたこともあった。
人材難のなか、少数野党が新人候補者の発掘に際してトラブルを避けることは非常に難しいと言えよう。
◆ なぜ 「トラブルメーカー」 を公認してしまうのか
また、現職議員であったとしても問題行動を起こさないとは限らない。
日本維新の会では中堅議員の足立康史衆議院議員が度重なる “ 問題発言の累積 “ によって、半年間の党員資格停止の処分を受けた。
同議員は “ 元 “ 官僚のピカピカの経歴であるが、過去に事務所運営で元スタッフと訴訟沙汰になっただけでなく、党内のガバナンスの手続きを軽視し、SNS上で放言を繰り返すことで知られる。
このような “ パーソナリティに難がある人物 “ を党内で一人処分するだけでも、選挙が見えてきた微妙な時期ともなると、敵対勢力やメディアからのネガティブキャンペーンを受けるきっかけとなり、有権者が政党の統治能力に疑問を抱くようになってしまう。
この事例は表面上のキャリアを重視し、組織人として難がある人材を選んで要職に就けてきてしまった失敗事例である。
野党第一党の立憲民主党も同様だ。
直近の事例だと、梅谷守衆議院議員が地元の選挙区で日本酒を配ったことで公職選挙法違反として告発されている。
この事態を受けて、立憲民主党は同議員に対して 「軽率な行為が党の信頼を傷つけた」 として党員資格1カ月間の停止の処置を取った。
※ 公職選挙法違反の疑いで告発されている立憲民主党の梅谷守衆議院議員 (2024年5月23日) - 写真提供 = 共同通信社
実際、古い政治体質が残っている地域においては、このようなことはあり得るかもしれない。
だが、政権交代を見据えるとなると、 「昔からやっているから」 というようなナアナアのメンタリティで、違法の疑いがある行為をする人物だらけでは、当該政党はスキャンダル塗れとなり直ぐに信頼を失墜することになる。
政党が “ 不適切な人物 “ に公認を与えてしまうと、政党全体のブランドイメージは大きく毀損する。
それにもかかわらず、なぜ政党は不祥事やトラブルを起こすタイプの人材を “ 公認候補者として採用 “ してしまうのだろうか。
◆ 「極めて原始的な方法」 で行われている人材選抜
その原因の一つは、各野党の不祥事は通常の企業が採用活動で行う “ ノウハウが欠落している “ ことにある。
もちろん、政治の世界には “ マトモな性格の人間 “ が集まりにくい、という業界事情はあるが、現状の公認候補者選定の在り方は論外なものだ。
経歴書の提出などの形式的なことはもちろん行われるが、その後は都道府県連幹部や政党本部の面談のみで審査を終わらせる政党が少なくない。
キラキラの経歴書やご立派な面接の受け答えの “ 裏 “ に潜む、その人物のパーソナリティの問題点などは 「勘や噂」 に頼って判断しているのが現状だ。
政党の公認候補者は “ 未来の日本を担う人材 “ であるはずだが、政党による人材選抜は極めて “ 原始的な方法で行われている “ と言えよう。
※ 写真はイメージです
候補者選びの一つの方法としては、アメリカのように党内予備選挙を行う方法があり得る。
この仕組みは模擬的な選挙戦を通じて、候補者をある程度ふるいにかけることができる。
しかし、日本の野党は各地域に十分な党員を抱えておらず、このような党員参加型の公認候補者選びを実行することは困難だ (これも政党助成金を受け取りながら、政党としての活動を “ サボってきた “ 結果だ) 。
◆ 賢い企業が最重視するのは 「不適正な人間を採らないこと」
そこで、日本の政党は最低限の仕組みとして、日本の大手企業が採用している人材採用のシステムの導入を進めることが望ましいだろう。
企業の採用活動は同企業の “ 生死を分ける “ 重要な業務であり、採用活動に関するテクノロジーは急速に進化している。
特に企業側は “ 問題がある人物 “ を特定して 「不採用」 とすることには極めて熱心だ。
なぜなら、一度雇用した人間をクビにするのは困難であり、なおかつ “ 社内でトラブルを起こされた “ 場合の損失も馬鹿にならないからだ。
企業経営者は優秀な人材を採りたいと願うものだが、賢い企業は優秀さよりも “ 不適正な人間を採らないこと “ を心掛けているのだ。
たとえば、一昔前から採用プロセスではAI が活用されており、人間が介入せず事前に用意された質問に対して回答させ、その声、表情、しぐさなどを分析して自動的にパーソナリティ診断を行う仕組みが導入されてきている。
同システムを一次面接に利用することで、人間によるバイアスを排除した “ 客観的なデータ “ を得ることができる。
また、そこまでのシステムを用いなくても、賢い企業は全ての就職希望者に対してシステムを用いた “ 不適性検査 “ を実施している。
そのため、必要なコストは比較的安価であり、中小企業でも導入が可能だ。
不採用を判定するためのシステムは、履歴書・経歴書に記載されたご立派な肩書等 “ 以外の “ 組織人として重要要素を持っているか、を判定するのに活用される。
◆ 半年以内に、野党は公認候補者を 「無理やり」 立てていく
政党が公認候補者の不採用を判定するシステムを導入する “ メリット “ は極めて大きい。
自らが手を挙げて政治家になろうという人物は、実はそれなりに “ 立派な肩書 “ の人物が少なくない。
しかも、愛想も悪くない人物も多いため、その人物がスキャンダル体質や不和を起こす人物であるかを “ 人間が見極める “ ことは難しい。
したがって、客観的に一定の “ 判断材料を与えてくれる “ システムを導入することは非常に意味がある。
また、人材不足で背に腹は代えられず、ほぼ全ての公認候補者に党として公認を “ 出さざるを得ない “ 場合であっても、事前にその人物のパーソナリティの “ リスク情報 “ を把握できているか否かは、その後のリスク対応に “ 天と地ほどの差 “ が出る。
その公認候補者が “ どのようなトラブルを起こしやすい “ のかを知ったうえで、さまざまな助言をすることができるからだ。
冒頭で述べた通り、岸田政権は風前の灯であるが、野党は十分に小選挙区で旗すら揚がっていない状態だ。
今後、選挙が強く意識される半年以内に、野党は多くの小選挙区で公認候補者を無理やり立てる作業を進めていくことになる。
しかし、その公認作業の過程で (政治家として) “ 不適切な人物 “ が多数含まれることがあれば、野党は選挙後の政権交代どころか、政党運営すらままならなくなるだろう。
現状の日本の政党政治は政策の議論を行う以前の状態であり、政党を “ 一般常識的なレベル “ で運営できる体制にすることから始めなくてはならない。
その第一歩が政党の公認候補者として 「マトモな議員及び立候補予定者を揃えること」 である。
筆者は、日本の政党が近代化し、健全な政党政治が行われるようになることを強く願っている。
渡瀬 裕哉 (わたせ ゆうや)
早稲田大学公共政策研究所 招聘研究員
『 マトモな議員及び立候補予定者 』
東京都都知事選挙を例に出すまでもなく、政治家になろうと考えている連中の大半は “ ロクでもない人物 “ ばかり (真剣に考えている一部の立候補者もいますけど) です。
また、国会議員も政治資金問題を筆頭に、自分たちで何とかしようという自浄能力を全く持たない、金に汚いウジ虫連中であります。
まずは、いつまでも権力の座にしがみついている “ 老害議員 “ の連中を政界から引退させない限り、健全な政党政治は “ 絶対に不可能 “ だと思います。