あの時の風景 | (株)ジオブレイン 公式ブログ <五反田の中心で、「ツモ!」をさけぶ>

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麻雀をこよなく愛する社長と個性豊かな私達社員。
紙、WEB、イベントと様々な媒体を使用し、お客様の立場に立った、
お客様の喜ぶ仕事を、お客様と共に創りあげています。

株式会社ジオブレイン 代表取締役社長 南部隆宏

人はときに、趣味を深く追求する。
私、MS部の片山もかくいうそのひとりである。
「釣り」というジャンルについては。

私の場合、釣りが好きすぎて、それを仕事にしていた時期がある。
「ジャーナリズム」に憧れて、某バスフィッシング雑誌の編集の仕事をしていた。
アメリカ伝来のこの釣りを深く知るために、私は積極的に海外のライターや雑誌と連携し、お互いの情報を交換したものだ。

テリーというライターと出会ったのは、ラス・ベガスで開催された釣り具の展示会である。
テリーは日本製の超リアル小魚ソックリのルアールアーが大好きだった。
とあるブースを物色していると、彼が話しかけてきた。

「日本人だよね。あのメーカーのルアーなんだけど、実際使ってみて感想があれば教えてほしい」

と、自己紹介もなく、突然本題で切り出してきた。

30分ほど会話したあげく、「ところで名前って聞いたっけ?ディナーでも一緒に行かないか」と誘われ、大笑いしながら朝まで釣りを語り、呑み明かした。

その後テリーとはメールや電話で何度も会話した。
だけど、8年前、私は一方的に連絡を絶ってしまった。
大好きだった雑誌編集者を辞め、ウェブの世界へと転職した時期だ。
編集者時代はある程度自由があったが、ウェブの世界は忙しく、彼からメールをもらっても返信するのに1ヵ月かかってしまうことが増え……。

いつの間にか音信不通になっていた。

昨年12月初旬、見慣れない電話番号が携帯を鳴らした携帯電話吹き出し ♪

テリーである!

初対面時と同じようなフランクさで、
「明日暇か、時間取れるか?」と切り出した。
「今、どこにいると思う? 銀座のホテルモントレーにいるんだよ。明日は土曜日だから休みだろ?」。
一歩的な語り口調に大笑いしていると、今度はマジメな感じで話し出す。

「どうしても会って話がしたいんだ。時間がほしい」

「じゃぁ、今から会おうか。30分でそっちに行けるよ」と言うと、私は速攻、五反田の事務所を飛び出した。夜10:00のことである。

モントレーのロビーに入ると、大柄な白人が立っていた。私を見つけると、周囲に気にせず、大きな声で私を呼んだ。

「テリー、お前は変わらないなー。あの時、オレがあげた帽子をまだかぶっているのか」と切り出せば、彼は「お前は変わったなー。スーツを着ているなんて。釣りの匂いは微塵も感じないな」と切り返す。

実は、数日前から仕事の都合で日本には来ていたらしい。
なぜ来日前に教えてくれなかったのか。

「言い出せなかったんだ」と目に涙を浮かべ語り出した。

彼はアメリカ・シアトル州で原子力関連の仕事をしている。
福島の原発も彼のクライアントだった。
あの地震、津波によって原発が危険な状態になって以来、彼は私に何度も連絡をくれようと受話器を取ったらしい。
しかし、自分が提供した技術によって「マイ・ベスト・ジャパニーズ・フレンド」に迷惑をかけたと思うと、心が苦しくなり、仕事を辞めようと思ったこともあるそうだ。

私もテリーに謝った。多忙を理由に連絡が途絶えてしまったことを。
だから、7歳の息子が誇らしげに魚を持つ釣りシーンの写真を見せて、「釣り業界は離れたが、釣りの楽しさは息子に伝えているよ」と明るい話にすり替えた。
そこからふたりの釣りバカは、朝まで呑み明かした。

朝5時の閉店と共にバーを出るとテリーは言った。
「いつ釣りの世界に戻ってくるんだ……いや、あの時の風景は、お互いの記憶に残しておいた方が酒の肴になる」と。
そう言い残しホテルへと戻る彼の背中を、私は見送ったのだった。

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バーでの写真を掲載しようと一応連絡したら、「酔った写真は恥ずかしいからダメだ」と言って、この写真を提供された……。テリーです。