位置 青森県下北郡佐井村大字長後(41.311,140.804)
<ここで見られる地学素材>
◆凝灰岩,角礫凝灰岩,タフォニー,ポットホール,浸食構造
〇何がすごいの?
◆これまでは,2000万年くらい前の火山噴火に由来すると考えられていた凝灰岩が,約400万年前のものとわかったのがすごい.
〇どうして仏ヶ浦というのですか?
◆下北ジオパークのホームページには次のように説明されています.もともと、「仏」(ホトケ)と、アイヌ語で海辺・砂浜をあらわす「ウタ」から、仏宇陀(ホトケウタ)と呼ばれていたのが,仏ヶ浦と呼ばれるようになったと考えられています。、仏ヶ浦の奇岩・巨岩には、仏教に関連する名前がつけられ、流れ着いたお地蔵様をまつられて、地域の人々から海の守り神として大切にされています。
〇ここで見られるのはどんな地層ですか.
◆地層名としては,檜川(ひのきがわ)層といいます.中新世前期のものとされてきました.岩石の分類としては角礫凝灰岩,凝灰角礫岩,凝灰岩,軽石凝灰岩などになります.火山活動でできた軽石,火山灰や火山礫などが堆積したものです.堆積環境を考えると,水中カルデラ噴火による水中火砕流堆積物になると思われます.
〇どうして,年代が変わったのですか?
◆地層の年代は,化石によってきめられてきました.仏ヶ浦の凝灰岩の地層は,見た目やまわりの地層との関係から2000~1500万年くらい前の地層だと考えられていました,しかし,近年では放射年代で化石が出ない地層の年代を決めることができるようになりました.仏ヶ浦の凝灰岩の地層も放射年代を測定したところ,約400万年前の地層だとわかりました.
〇年代が変わると,何が違うのですか?
◆仏ヶ浦でみられる地層は,緑色を帯びた凝灰岩でグリーンタフとよばれています.グリーンタフは日本列島の日本海側にたくさんあります.それらは日本列島がアジア大陸から離れはじめた中新世前期の火山活動による火山灰だと考えられています.このことから,仏ヶ浦の地層もその時代のグリーンタフとと思われていました.しかも青森県内でも典型的なグリーンタフとして紹介されてきました.グリーンタフの成因を少し考え直さないといけないのかもしれません.
写真1.これまでは中新世前期のグリーンタフだと考えられていた.中央の岩に斜めに見える割れ目は,断層?,一時的な堆積の中断?.
写真2.浸食されやすい凝灰岩の地層にできた奇岩.
写真3.岩に見える縦の溝は,降雨による浸食でできたと思われれる.
写真4.岩石の表面にできた黒いコーティング層は浸食されずに,その下の凝灰岩が浸食された結果できたユニークな微地形.
写真5.岩石の表面に見える黒いコーティングは,海水由来の有機物によるのではないだろうか.コーティングされていない部分は浸食されてタフォニーができている.
写真6.上下2つの堆積相からなる凝灰岩,この境界が断層なのか堆積間隙によるのか,そのほかの要因によるものか不明.下の凝灰岩にタフォニーが見える.
写真7.ポットホールが3つ見える.初めはそのまわりのに見えるくらいの小さなタフォニーだったが,成長して大きくなったのだろう.
写真8.地層の表面が大きくうねっている.ハンモック状構造にも見える.
写真9.大きくうねったハンモック状構造.海底でできた構造だと思われるが,断面を見るとハンモック状斜交成層ではないようだ.何だろう?.