「...すっぱい」
ふと、彼の呟いた言葉に、
長髪の彼はゆるりと振り向いた
~ 甘酸っぱい ~
「美味しいですか?」
長髪の男に、すっとんきょうな声音で問われた一方の男は、
一瞬驚いたように目を見開くといきなり吹き出した
「おま・・・、
だからすっぱいっつってんじゃんよ」
彼は呆れたように言葉を吐き出すと、
白い皿へと手を伸ばした
「食べる?」
彼は、皿の上に、無数に乗っているうちの一つを指先でつまむと、
長髪の男へと差し出した
「結構ですよ
今さっき、貴方が言ったんじゃないですか
すっぱい、って」
その男は、くすりと小さく笑うと、白い手で彼の持つさくらんぼを押しやった
「いいって、
遠慮すんなよ」
彼は、その綺麗な笑いに便乗するかのように笑みをもらすと、
彼の口にさくらんぼを押し当てた
「ちょ、っと、哉李くん、っ」
言うと同時に、彼の唇にトンと付いたさくらんぼは、
次の瞬間軽い音を立てて彼の唇から離れた
「あ、東キスした?」
「おふざけはお止しなさい、お馬鹿さん」
東は小さく鼻をならすと、ついと反対側を向いた
「じゃー俺これ食べよ」
「あ、ちょっと!
・・・随分な変態ぶりですねえ、恐れ入ります」
わざとらしく肩をすくめた東は、溜息を吐くと、哉李のもつさくらんぼに手を伸ばした
「これは、僕の」
「、あ」
東は、哉李の手からするりと赤いさくらんぼを取ると、
小さく開いた口の中に入れる
「あーあ、喰われた」
哉李は残念そうに言うと、東の顔をみた
「どう?
美味しい?」
ほんの少しの沈黙の後、
小さく顔をしかめた東の口から、小さく呟かれた言葉、
「すっぱい」
< E N D >
哉李と東のお話
すっぱいさくらんぼと、
甘い、二人の出来事
、みたいな