私は行きも帰りも長州さんとご一緒させていただきました。いつも大阪への試合では同じ新幹線に乗って行っていた私…いつもの場所で待ち合わせ、いつものようにコーヒーを飲む…
この当たり前に過ごさせていただいていた時間…あと少しでそれも叶わなくなります。試合前にはいつものように治療をしたりストレッチをしたり…大阪では藤波さんとの一騎打ちやジャンボ鶴田さんや天龍源一郎さんとのシングルマッチもありました。試合前…どんな気持ちでいたのだろうか…
そこにこの日組む坂口征夫選手が通りがかり、熱心にアドバイスを送っていました。
そこにこの日組む坂口征夫選手が通りがかり、熱心にアドバイスを送っていました。
入念にリングチェックをして、リキラリアットのタイミングを計ります。
このいつも当たり前に見ていた光景もあと僅か…そしておそらく私が長州さんのレフェリーをするのはこの日が最後だと思います。そんなことを考えながらも、名勝負数え歌・藤波辰爾vs長州力を一番近くで見れる楽しみも噛みしめながら…
1人のプロレスファンに戻った私は試合前にこの大会の記念Tシャツを売店で買ってしまいました試合前はまだ余裕があると言いますか、そんなに感情的になったりノスタルジックな気持ちにはなっていませんでした。私は休憩前の試合、セミファイナルの試合をレフェリングをして、迎えたメインイベント・藤波辰爾&ヒロ斉藤&関本大介 vs 長州力&越中詩郎&坂口征夫戦。一人ひとりの入場…パワーホールが鳴り長州さんが入場をしてくる。その瞬間から急に「最後なんだなぁ…」「寂しい」「このまま時間が止まってくれないかなぁ…」などと考えてしまい、涙が出そうになりました。
コールを受ける。藤波さんと対峙をする。ロックアップをする。子供の頃にテレビの向こう側で観ていた光景が私の目の前で繰り広げられている…関本選手にチョップを喰らう。お返しとばかりにリキラリアットを放つとサソリ固めまで…今ここにいて、同じリング上で一番近くで見ている…何だか夢を見ているような、フワフワしているような…そして走馬灯のように色々な思い出や出来事、怒られたことや殴られたこと、あんなことこんなこと様々なことが頭の中を駆け巡る…いつも私はレフェリーは仕事なのだから私情は挟まない、その試合その瞬間に集中することを心がけているのですが、この日の私はレフェリー失格と思えるくらいに集中出来ず、感情的になって試合を裁いていました。こんな気持ちは初めて…「プロレスは仕事」と割り切っている私が初めて感じる感情だったかもしれません。
最後はリキラリアットで斉藤さんにフォール勝ちをした長州さん!試合後にはマイクでドラディション、藤波さんへのエールと大阪のファンへの感謝を述べました。長州さんを誘導して花道から帰るときには涙を流して「長州ありがとう!」と叫んでいたファンの方々が多数おられました私も泣きたかった…でも6月26日の引退試合までは我慢です。
試合後のコメントでも生涯のライバル・藤波辰爾さんへの感謝と激励の言葉を口にしておりました。
試合後にリング上で固い握手をして記念撮影をしていた藤波さんと長州さんを見ていた私…藤波さんと長州さんがいたからこそ私はプロレスに興味を持ちました。私がプロレス界に入り、お二人に出会わなければ今頃もうプロレスに携わっていないのではないかなぁ…このお二方がいたからこそ、私はプロレスを続け、幸せな人生を歩んでこられたのだと改めて思いました。この日の私はリングの上に 私情を持ち込み、集中出来ず、レフェリーとしては失格だったかもしれません。でも私の人生を変えた「名勝負数え歌・藤波辰爾vs長州力」を最後にレフェリーをさせていただき、長州さんの付き人として過ごしたこの日を生涯忘れることはないでしょう!この文章を書いているだけでも涙が出そうになるけれど、涙は6月26日まで我慢です
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