「平和の尊さを将来にわたって引き継ぐための町田市の役割」について議会で尋ねました。

 

町田市では明治以降の戦没者や戦争犠牲者のご冥福と、平和への祈りを込め、それまで市内の各所で祀られていた慰霊碑や忠魂碑、戦役記念碑を昭和46年に一か所に集め、合同慰霊塔が建立されていますが、

 

主要街道から一歩奥にあり、街道との高低差もあり、周辺の道路からは見づらく解りづらい位置にあります。

 

多くの市民に認知されづらい戦没者合同慰霊塔では、あまりにも忍びないことから街道への案内標識を求めて質問しました。

 

また、日本に原爆が落とされた日や東京大空襲の日、終戦記念日などに市内全域の屋外スピーカーから「平和祈念の黙祷」のお願いがなされていますが、多くの方々が素通りしてしまっている現状を改善するための方策を提案しました。

 

 

 

 

以下議場でのやり取りです。

 

2023.6一般質問(平和祈念の黙祷について)

 

【壇上質問 厳太郎】

項目3「平和の尊さを将来にわたって引き継ぐための町田市の役割は?」

 

について伺います。

 

日本は戦後一貫して平和国家の道を歩み、アジア太平洋地域や国際社会の平和と安定を実現すべく進んできました。

 

それぞれの自治体でもこれまで非核平和都市宣言や、平和資料展など様々な取り組みがなされてきました。

 

しかし我が国を取り巻く状況はロシアのウクライナ侵攻に端を発する領海侵犯、北朝鮮の過去最大発射数のミサイル、中国の領空領海侵犯など日増しに緊張感が増しています。

 

戦後日本は高度経済成長を経て著しい経済発展を遂げ、私たちは、平和な暮らしを手に入れましたが、この間にも世界では戦争が行われ、多くの方々が犠牲となっているという現実を直視することが必要だと感じます。

 

国連の新しい概念であるSDGsはすっかり商業化され、脱炭素や環境、ジェンダー、のことばかり取り上げられ、同じくSDGsの達成目標である「平和と公正を全ての人に」の項目について言及する人は見かけません。

 

現状は1948年の国連の世界人権宣言に込められた人権尊重や平和への思いは忘れ去られてしまったのかと危惧するほどの世界情勢です。

 

私は町田市でも平和の尊さを将来にわたって引き継ぐことが大切だと思います。

「(1)これまでの取り組みと今後の課題について」お伺いします。

 

 

次に「(2)町田市戦没者合同慰霊塔についてお伺いいたします。

町田市戦没者合同慰霊塔は、明治以降の戦没者や戦争犠牲者のご冥福と、平和への祈りを込め、それまで市内の各所で祀られていた慰霊碑や忠魂碑、戦役記念碑を昭和46年に一か所に集め、合同慰霊塔が建設されました。

 

驚くことに当初は5基のみ建てられ、他の9基の慰霊碑は地下に安置されていたそうです。

 

平成4年に遺族会からの請願により地下に安置されていた9基も地上に建立されたと伺いました。

 

これらの石碑は平和の尊さを現代に伝えており、当時の人々の大切な願いが込められていると思います。

 

町田市戦没者合同慰霊塔主要街道から一歩奥にあり、街道との高低差もあり、周辺の道路からは見づらく解りづらい位置にあることから、現代の市民にはあまり認知されておらず、忠生地区の一角にひっそりと佇んでいます。

 

以前、遺族会の方々から、「街道沿いに道案内の一つも無いのは忍びない」とのご相談をいただきました。

 

遺族会から町田市に案内看板の設置をお願いしたところ、都道への看板設置は難しいとのことだったようです。

 

そこで先日、都道を管轄する東京都南多摩東部建設事務所、通称、南東建にお尋ねしたところ、「これまで町田市からの要望は無かったが、正式な要請があれば当然前向きに検討する」とのことでした。

 

そこで伺います。

 

町田市戦没者合同慰霊塔への案内看板設置の必要性の認識はいかがでしょうか?

 

 

「(3)平和祈念の黙祷について」お伺いします。

 

以前、町田市では関東大震災が発災した9月1日は市内全域でサイレンを吹鳴し、災害の記憶を風化させないよう呼びかけ、町田市総合防災訓練の日になっていました。

 

現在では毎年、日本に原爆が落とされた8月6日と9日、終戦の日の8月15日、東京大空襲の3月10日、及び東日本大震災が発災した3月11日には市内全域の防災行政無線屋外拡声スピーカーから、犠牲者の冥福を祈ると共に、世界の恒久平和の願いを込めて町田市から1分間の「黙祷」が呼びかけられています。

 

「黙祷」は書いて字のごとく、声を立てずに祈る行為のことであり、犠牲者や被害にあわれた方々に心静かに哀悼の誠を捧げ、自分や現代社会を見つめ直し、心を整理する時間でもあります。

 

戦後世代の私も幼少期から黙祷が呼びかけられると、戦争や災害の当時に思いを馳せ、現在の平和のありがたみと尊さを心に刻みながら今日まで生きてきています。

 

今この世に生きている我々の命は、当然のことながら過去から連続して繋がっていることから、苛烈を極めた祖先の時代に思いを巡らせ、炎天下の真夏の青空に吸われていく蝉の音の中、静かに祈りを捧げることは、豊かな現在を生き、平和な未来を形成していく一員として大切なことだと思っています。

 

世界の恒久平和を祈念し、戦争や災害の記憶を風化させないよう伝え続けることは行政としての責務でもあることから町田市は毎年、発生時刻になると1分間の「黙祷」を呼び掛けてきました。

 

しかし、戦争の記憶の風化や、戦後世代の平和に対する意識の希薄化が懸念される昨今、黙祷の呼び掛けを受け、屋外で黙祷する人々を見なくなりました。

 

駅前を歩行中の多くの市民は足を止めることなく過ぎ去ります。

中には稀ですが一部の高齢者が足を止められ、防災行政無線屋外スピーカーの放送を聞き、5秒ほど祈っている様子もあります。

 

町田市と同じ多摩地区のベットタウンである東村山市では、広島、長崎の原爆投下の日に、以前町田市が9月1日に行っていた方法と同じく、市内全域の防災行政無線屋外スピーカーと消防団のポンプ車と共にサイレンを一分間吹鳴し、核兵器の廃絶と平和を願い黙祷しています。

 

地方から町田市に引っ越してきた方々は、町田市では、ほとんど黙祷する人を見かけないことや、サイレンが吹鳴されないことに驚いていました。

 

防災行政無線屋外拡声スピーカーからの「黙祷」の呼びかけから「ご協力ありがとうございました」までの1分間、無音であることから市民に認知されにくいのかもしれませんが、急速に都市化が進んだここ町田市の全域でサイレンを1分間吹鳴することは、多くの苦情が寄せられることが予想でき、難しいのかな、とは思います。

 

しかし、現在の多くの市民が素通りしてしまう「黙祷」の呼び掛けは、平和の尊さを将来にわたって引き継ぐ観点からも工夫の必要があると思います。

 

そこで伺います。

 

これまでの「黙祷」の呼びかけに関し、戦争や災害の記憶を風化させないため、効果を検証し、アナウンスの仕方の改善など何らかの工夫を考えてきたことはありますか?

 

 

【答弁 神蔵政策経営部長】

(1)「これまでの取り組みと今後の課題は」(3)「平和祈念の黙祷について」ついてお答えします。

 

市では、1983年2月1日に非核平和都市宣言を行い、戦争の悲惨さ、原爆の悲劇、平和の尊さを市民の方と一緒に考え、「非核平和のこころ」を広める様々な取り組みを実施しております。

 

取り組みといたしましては、毎年、防災行政無線での黙祷の呼びかけ、市庁舎での平和の標語を書いた懸垂幕の掲示、戦没者追悼式、平和についての資料の展示・上映等を行っております。

 

このような取り組みを継続することで、市民の皆様や若い世代に関心をもってもらい、戦争の悲惨さ、原爆の悲劇、平和の尊さを風化させないように次の世代に伝えていくことがこれからも必要であると考えます。

 

市では、長崎・広島への原爆が投下された8月6日、8月9日、終戦の日の8月15日などに戦争などでお亡くなりになった故人を敬うために、防災行政無線等で黙祷を呼びかけているところでございます。

 

黙祷に対する市民の方からの最近の意見としては、2021年に「黙祷を強要するのをやめてほしい」との意見が1件ございましたが、黙祷の時間がわかりづらいといった意見はございませんでした。

 

今後、必要に応じてアナウンスの仕方を振りかえり、黙祷をささげたい方がより認知できるやり方があるか研究してまいります。

 

 

【答弁 水越地域福祉部長】

「町田市戦没者合同慰霊塔について」お答えします。

 

町田市戦没者合同慰霊塔は、明治以降各戦役における戦没者及び戦争犠牲者のご冥福と、平和への祈りを込め、市民総意のもと、1971年9月30日に町田市が建立いたしました。

 

この慰霊塔について、町田市戦没者遺族会の方々から、案内看板を設置して欲しいとの要望を、お受けしております。

 

町田市といたしましても、慰霊塔の場所は、周辺道路から見えず分かりにくいため、案内看板の設置は必要だと考えております。

 

現在、町田市戦没者遺族会の方々とともに、具体的な看板設置に向けた話し合いをしているところでございます。

 

 

 

【再質問① 厳太郎】町田市戦没者合同慰霊塔について

それぞれ答弁ありがとうございました。

自席より再質問します。

 

町田市は「風化させないように次の世代に伝えていくことが今後とも必要」と認識し、町田市戦没者合同慰霊塔については案内看板の設置の必要性を感じており、設置に向けて話し合いをしているとの答弁でした。

 

具体的な設置場所や予算措置、また南東建との調整が必要となることから、今年の8月15日までには難しいかと思いますが、長いこと遺族会の皆様をお待ちさせている現状と思いますので、なるべく早く案内看板を設置していただきたく思いますがいかがですか?

 

【答弁 水越地域福祉部長】

なるべく早く案内看板を設置します。

 

 

【再質問② 厳太郎】

出来る限り早く案内看板を設置していただくとのことですので、先人のお陰で今の平和で豊かな社会があることを多くの市民に認識していただくためにも、よろしくお願いいたします。

 

では次の(3)「平和祈念の黙祷について」再質問したいと思います。

 

答弁では「今後、必要に応じてアナウンスの仕方を振りかえり、黙祷をささげたい方がより認知できるやり方があるか研究していく」とのことでした。

 

「黙祷」の呼び掛けに対し、現在の多くの市民が素通りしてしまっていることも現実であり、平和の尊さを将来にわたって引き継ぐ観点からも工夫の必要があると思います。

 

多くの市民に認知していただくよう東村山市などと同じように黙祷の呼び掛けと同時にサイレンを吹鳴することは、急速に都市化してきた町田市では難しいのではないかとも思います。

 

そこで、例えば、「カラン♪カラン♪」と鳴る鐘の音を黙祷の1分間に合わせて放送してみてはいかがでしょうか?

 

「黙祷を開始します。黙祷!」の合図の後、鐘の音が1分間流れていれば、人々に「今は黙祷の時間だ」と認識していただけると思います。

 

例えば10秒1回ですと「黙祷」の合図から5回の鐘の音で1分間となり、より認知されやすい平和への祈りの時間となります。

 

また、通常の人間の「感性」では7秒ごとに意識が変化すると言われています。

人々の潜在意識を巧みに活用し視聴率を上げることを至上命題にしているテレビでも、必ず7秒に一回はカメラ位置やテロップを変え、視聴者に訴えかけています。

 

人間の潜在意識に訴えかけ、日々慌ただしく生活をしている、それぞれの市民の心に残る「祈りの1分」にするなら、「黙祷!」の合図から7秒1回の鐘の音と「ありがとうございました」までは音の余韻を含めれば7回以下となりますし、音の余韻を長めにすれば10秒に1回の計5回の鐘の音でも十分により良い黙祷の時間を創出できることになるのではないか、と思います。

 

人々の潜在意識にも訴えかける黙祷の時間にすべく工夫することについていかがお考えですか?

 

また、無音が良いのか、鐘の音が良いのか、賛否は色々あることと思います。

なるべく多くの市民に平和を願う祈りの時間を提供する立場である皆さんでも考えていただきたいと思います。

 

また、「感性」の話ですから、市内の音楽の専門家にもご意見を伺い、1分間の黙祷に最適な背景の「音」について検証していただきたく思いますが、いかがでしょうか?

 

 

【答弁 神蔵政策経営部長】

現在の無音で行う黙祷のやり方は、宗教を問わないものであると認識しております。よって現時点では黙祷の時間に音を加えることは考えておりません。

 

 

【再質問③ 厳太郎】

「現時点では黙祷の時間に音を加えることは考えてない」との答弁でしたが、世界では屋外で広域に黙祷を呼びかける場合はサイレン吹鳴が一般的です。

 

全国的にも「大切なことを市民への呼びかけすること」と「苦情」の関係は相対する課題になっておりますし、

 

「認識されにくい呼びかけ」と、「悲惨な記憶を風化させない恒久平和を願う崇高な取り組み」も相対する課題ではないかと思います。

 

だからこそ黙祷を呼び掛ける町田市として工夫が必要になってくるのではないかと思います。

 

私は、市民の皆様に認識いただくためには1分間の黙祷の間、ボリュームを絞って鐘の音を数回入れるだけでも、効果的だと思いますし、1分間の黙祷の間に「音」を入れることが難しければ、前後のアナウンスの部分の背景に心が吸われるような厳粛な「音」があれば、より市民に認識していただける平和への呼びかけになると思います。

 

他の自治体では黙祷の合図の前に時報の音を入れていますが、鐘の音も多くの市民に受け入れられるのではないか、と思います。

 

仮に町田市が「黙祷」の呼び掛けを工夫し、これまでより圧倒的に多くの市民の心に残る平和を願う黙祷の1分間を創出すれば、

 

同じ課題を抱える全国の自治体に、町田市の取り組みが波及していくことになり、風化が危惧される平和の尊さに対する意識を全国に広め、将来にわたって引き継ぐ大きな一歩になる可能性があると思います。

 

まだどこの自治体もあまり挑戦していないことだと思いますので、まだ正解は無いと思います

より良いと思われることを創出し、試しに1年間やってみる姿勢も大切だと思う。

そこで初めて市民の反応が伺えるのではないでしょうか?

 

先ほどご提案した黙祷前後の工夫について、皆様でも考えていただきたく思いますがいかがでしょうか?

 

 

【答弁 神蔵政策経営部長】

今後、必要に応じて黙祷の呼び掛けのやり方を振りかえり、議員のおっしゃるやり方も含め、黙祷をささげたい方がより認知できるやり方があるか、研究してまいります。

 

 

【まとめ 厳太郎】

是非前向きに考えてください。

より認知できるやり方はあります。

ボリューム、吹鳴場所、吹鳴範囲の選択などの工夫だと思います。

 

そこで肝となるのは平和の尊さという大切なことを伝える事と苦情リスクのバランスだと思います。

 

社会にはゼロリスクは存在しません。

 

「特定の小さなリスクを完全に無くすことに対して高い意識を持っているが、それよりも重要な全体のリスクには注意を払わないこと」をゼロリスクバイアスと呼びます。

 

平和の尊さを将来にわたって引き継ぎ、風化させない事は町田市にとって重要な役割であることから、素通りされる黙祷の改善に努めていただくことをお願いしまして、質問を終了します。