町田市が導入しようとしている「同性パートナーシップ宣誓制度」の条例化について、議場で質疑したので原稿を投稿します。

 

 

 

 

私は、当事者である性的少数者の71.3%が求めておらず、全国的にほとんど利用されていない本制度に対して、当事者を置き去りにした、政治的活動家主導の制度ではないかと感じています。

 

本条例案では、国でも議論が割れている「性自認」まで踏み込み、性的少数者を「最大限配慮する対象」と捉え、市民には「町田市の施策に協力するよう努める」ことが市民の「役割」として明文化されています。

 

条例化することで性的少数者を新たに特別視することは、これまで当たり前に隣にいた性的少数者を新たに「最大限配慮する対象」として定義することになり、そのことによってむしろ新たな分断や当事者にとっての不都合や生きづらさが生じることを危惧しています。

 

また質疑を通じて本制度の矛盾点も明らかになりました。

 

本条例案は3月29日の町田市議会で評決されます。

 

 

 

以下、質疑当日のやり取りです。

 

 

 

 

2023.3質疑(パートナーシップ宣誓制度について)

 

【質疑 厳太郎】

 

第14号議案「町田市性の多様性の尊重に関する条例」に関して質疑します。

 

2022年の9月議会で私が「当事者の困りごとに真剣に向き合うのなら、妄信的に流行りの制度の導入を急ぐのではなく、市できちんと調査し、当事者一人一人のリアルな困りごとに目を向けることこそが本当の課題解決になるのではないか?」と質問した結果、市民意見募集が行われ、議会で行政報告されました。

 

市民意見募集の結果、74人から147件の意見が寄せられましたが、12月13日の文教社会常任委員会では、肯定的な意見3例のみ「代表的な意見」として報告されました。

 

私が数えただけでも条例への賛意は44意見、明確な反対が36意見、その他の意見が68件でした。

 

結果をグラフ化するなど分析していないのはなぜですか?

 

条例導入に対し、明確な反対意見も多い中、市民が求めているかのような恣意的に思える議会への報告をしたのはなぜでしょうか?

 

②条例で求める市民、事業者、教育に携わる者の役割等とは何ですか?

③制度導入の意義は。

 

 

【答弁 市民協働推進担当部長)

第14号議案について、お答えいたします。

まず、(1)①の「市民意見募集について問う。」についてでございますが、

2022年11月に実施いたしました本条例及び町田市パートナーシップ宣誓制度の素案に関する市民意見募集の実施結果につきましては、令和4年(2022年)第4回定例会において、集計段階の速報として行政報告をさせていただきました。

この報告では、素案に対して、更なる制度充実を望む声や、制度そのものに反対する意見を一定数いただいていることについても説明させていただいたところでございます。

 

 次に、②の「条例で求める市民、事業者、教育に携わる者の役割等について問う。」についてでございますが、「市民、事業者並びに教育に携わる者の役割」につきましては、皆さまに何かを強制するわけではなく一人ひとりが性の多様性に関する理解を深めていただくことに加え、市が行う施策、取組に対してご協力いただくことを期待しております。

 

最後に、③の「制度導入の意義は。」についてでございますが、本条例の制定及びパートナーシップ宣誓制度の導入により、当事者の方の困りごとの解消と、あらゆる方への理解促進に向けた取組を、市だけでなく、市民、事業者の皆さまと進めていきたいと考えております。

本制度は、一方的に考え方を押し付けたり、誰かの権利を脅かしたりするものではございません。

今後も、あらゆる声に耳を傾け、市民の方が不安を抱くことのないよう継続的に理解促進に努めてまいります。

 

 

【再質疑① 厳太郎】

 

①  条例化の要諦は、性的少数者の「困りごと解消」ですが、

 

東京都の大規模アンケート調査の結果、性的少数者の当事者の7割が「困難経験なし」と回答

 

港区の調査では「パートナーシップ宣誓制度があれば宣誓したいか?」との問いに対して当事者の71.3%は「宣誓したいと思わない」と回答

その理由は、

「そっとしておいてほしい」

 

「特段のメリットがない」

 

「認めてもらう事柄ではない」


「宣誓することでかえって偏見・差別にさらされることが心配のため」

 

であり、パートナーシップ制度は当事者に求められているとは言えず、制度導入で「困りごと」が解決するとは当事者ですら考えていないことが明らかになっています。

 

条例化することで一体どのような方々の何の困りごとを解消させることを目指しているのでしょうか?

 

 

また、性の多様性の理解促進が条例化の要諦ですが、町田市で条例化しようとしているパートナーシップ宣誓制度は「同性」にのみ認められ、異性間の性的少数者には認められません。

 

何をもって「多様性」ととらえ、性的小数者の更に一部の方に限り条例化の対象としているのでしょうか?

 

また、日本国内の様々な自治体で先行的に「パートナーシップ制度」が導入され、国内の人口カバー率は52.9%までなっているにも関わらず、宣誓申請者は僅か3000組となっています。

 

このことを1億2570万人の我が国の人口で計算しますと、申請者は人口の0.009%となり、町田市の人口43万人に当てはめますと、この制度の町田市での利用者は僅か19組想定できます。

 

更に町田市では同性に限定した制度ですので、利用者はもっと少ないと考えられます。

 

これでは啓発や形だけの条例化にしか見えません。

 

条例化する効果として、何人の性的マイノリティーの方々に利用していただくことを想定しているのか?お答えください。

 

 

また、市長が掲げている「部長の仕事目標」にもある、「顧客に対して、どのような価値を提供し、何を実現するのか」との観点から、この条例は、誰を顧客と捉えて何の価値を提供し、何を実現させるのか」お答えください。

 

 

そして本条例では、市民、事業者、教育に携わる者、それぞれに対し「性の多様性に対する理解を深め、あらゆる分野において、性の多様性を尊重し、町田市が実施する施策に協力するよう努める」ことが市民、事業者、教育者の「役割」と示され、「最大限配慮しなければならない」と示されています。

 

この市民等の「役割」とは具体的に何と捉え、市民等に対して「最大限の配慮」を条例で求めることが、理解促進に繋がり、当事者の困りごとの解決になるのでしょうか?

 

以上、5点お答えください。

 

 

【再答弁① 市民協働推進担当部長)

本条例の制定による「困りごとの解消」につきましては、社会における性の多様性への理解は進んでいる一方、性的マイノリティの方々はパートナーシップ関係に係る生活上の困りごとがあるとの声をうかがっています。

本条例に基づくパートナーシップ宣誓制度の導入にあたりましては、当事者の方へのヒアリングを行い、「自分たちの存在を認めてほしい」、「自分たちの関係性を説明したり、理解を得られたりするようなものがほしい」、「婚姻関係にある人と同様のサービスが利用できるようにしてほしい」などの声を伺っています。

本制度の導入により、これらの困りごとの軽減につながると考えております。また、本制度を通じて、性的マイノリティの方々の困りごとや生きづらさの軽減、差別や偏見の解消に加え、性の多様性に関する社会的な理解促進につなげたいと考えております。

 

パートナーシップ宣誓制度の「対象者」につきましては、これまでも当事者や市民の方から様々なご意見をいただいております。

これらの声や議論を踏まえ、婚姻制度の対象とならない同性のカップルを対象としましたが、今後も市民の皆さまの理解や社会環境の変化に応じ、条例や制度の見直しを検討してまいります。

 

「利用者数の想定」につきましては、人口に占める性的マイノリティの方の割合は、調査機関により様々な結果が出ておりますが、現在の社会では、自分の性のあり方を公表したくても、偏見や差別が存在するためカミングアウトできない状況があり、実態は把握しづらいものと考えています。

 

パートナーシップ宣誓制度は、性の多様性の理解促進や尊重の取組としても実施するものであり、制度利用者に限らず、市民一人ひとりを対象にしていると考えております。

 

条例に規定する「最大限配慮」につきましては、本証明書の存在を知り得た場合は、その目的や権利侵害の可能性等について理解するとともに、証明書を提示することによって、婚姻関係に相当する方々に提供されるサービスについて、これに準ずる取り扱いができないかを検討し実施するなどの動きを期待しているものございます。

 

「誰を顧客と捉えて、何の価値を提供し、何を実現させるのか」につきましては、誰もが安心して暮らしながら、多様な生き方を選択できる社会の実現を目指しております。

 

 

【再質疑② 厳太郎】

 

①   「何の困りごと」を具体的にどう解消するか、

②   「多様」な生き方と言いながら対象者を限定した理由、

③    制度化による申請者の想定人数、

④    市民に最大限配慮を求める効果、

⑤    部長の仕事目標にある顧客、提供する価値、の考え方、

 

全てにおいて明確で具体的な答弁は無かったと思います。

 

 

それは、本条例が「多様性」と言いながら「限定」している矛盾や、

 

「当事者からの声」を導入主旨と答弁しながら、当事者が利用価値を見出せない矛盾

 

市民らに「役割」として「最大限の配慮」と「市の施策に協力するよう努める」と明文化し、求めながら、「一方的に考え方を押し付ける訳ではない」とする制度の矛盾があるからでしょう。

 

大いなる矛盾を内包しながら明確な答弁は不可能です。

 

 

現在国ではLGBT理解増進法の審議にあたっており、「性的指向・性自認を理由とする差別は許されない」との文言に対し、「行き過ぎた差別禁止運動につながる」ことが危惧され、高市大臣は「文言について十分な調整が必要。厳格なルールを作れば企業は性的少数者の雇用に及び腰になる」と答弁しています。

 

つまり性的少数者に対して過度に法制化することにより、これまで平穏に過ごして「そっとしておいてほしい」と考える多くの性的少数者に対して、新たな差別や偏見や社会的不都合が生じることが危惧されています。

 

国でも議論が割れている「性自認」まで踏み込み「差別しない」ことを町田市が条例化してしまうことによる混乱をいかに考えているのか?

 

条例化することで性的少数者を新たに特別視することは、これまで当たり前に隣にいた性的少数者を新たに「最大限配慮する対象」として定義することになり、そのことによって新たな分断を発生させることが危惧されるが?

 

【再答弁② 市民協働推進担当部長)

近年、性の多様性への関心が高まる一方、性的マイノリティの方々に対する差別や偏見は依然として存在しており、こうした差別や偏見を解消し、多様性を認め合う社会を認め合う社会を実現していかなくてはならないと考えております。