町田市の下水処理は革新的な新技術の導入に挑戦し、下水処理にかかる電気料金を市庁舎の3.5ヶ月分に相当する、年間1600万円も削減することに成功しています。

 

町田市では「AI制御などによる下水の高度処理技術」を導入し、このことは国土交通省の下水道革新的技術実証事業、(通称B-DASHプロジェクト)に採択され、「水質の向上」、「運転電力の削減」などの素晴らしい効果を上げています。

 

国土交通省は、新技術を国内外へ広く普及させることを目的に下水道革新的技術実証事業(通称B-DASHプロジェクト)に取り組んでおり、町田市の実績に対しても他の自治体から高い関心が示され、多くの関係者が町田市に視察に訪れています。

 

日本全国で電気料金の更なる高騰が決まった今、町田市の電気料金の削減効果は日増しに向上していると思われます。

 

議会で取り上げることによって、町田市で培った技術を広く内外に広めるとともに、技術的に定評がある町田市の下水処理技術を益々前に進めて、ロシアのウクライナ侵攻の影響で大幅に高騰している「窒素、リン酸、カリ」といった農業用肥料を下水汚泥から抽出することを提言しました。

 

 

 

(以下議会のやり取り)

 

2022.12一般質問(下水処理について)

 

【壇上質問 厳太郎】

通告に基づき、「選ばれる町田をつくる会」の一員として一般質問致します。

 

まずは、項目番号1「町田市の下水処理について」お伺いいたします。

 

町田市の下水道事業は1964年(昭和39年)から始まり、現在では98.9%の市民が下水道を利用し、衛生的で快適な生活を送れるようになりました。

 

町田市の下水道の特徴は、都内のほとんどの市町村が流域下水道で処理を行う中、自前の下水処理場で処理を行う「単独処理」であること、「処理場を2箇所持っている」こと、また雨水と汚水を分けた「分流式」であることの3点です。

 

一般的に下水処理はバクテリアなどの微生物に空気を送り込み、活性化させることで下水を浄化していますが、この処理の過程で多額の電気料金がかかるため、どこの自治体においてもその電力の削減が大きな課題となっています。

 

町田市では、国土交通省が実施している2019年度の下水道革新的技術実証事業、通称「B-DASH プロジェクト」に採択され、成瀬クリーンセンターにおいて、水質向上と電力削減の実証研究を行ってきました。

 

2021年3月の行政報告では、送風電力の10%を削減することを目標にしていたところ、電力量を試算した結果、17.4%の電力削減効果が確認されたとのことで、1年間運転した場合、成瀬クリーンセンター全体で、市庁舎3.5か月分に相当する90万kWhの電力削減効果になり、その電気料金は約1200万円に相当する見込みとのことでした。

 

ロシアのウクライナ侵攻の影響で電気料金が高騰している現在、その導入効果はもっとあったのではないかと思いますが、その結果を含め確認させてください。

 

そこで改めてお伺いいたします。

項目番号1「町田市の下水処理について」(1)の町田市の下水道革新的技術実証事業(B-DASH プロジェクト)の進捗について、(2)の「今後の方向性は」についてお聞かせください。

 

 

 

(答弁 荻原下水道部長)

項目1の「町田市の下水処理について」に、お答えいたします。

 

まず、(1)の「町田市の下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)の進捗について」でございますが、国土交通省では、下水道の様々な分野における革新的技術について、実証研究を行い、新技術を国内外へ広く普及させることを目的として下水道革新的技術実証事業、通称B-DASHプロジェクトを進めております。

 

町田市がメタウォーター株式会社や日本下水道事業団と3者共同で提案した「AI制御などによる下水の高度処理技術」がB-DASHプロジェクトに採択され、2019年12月から2021年3月まで、成瀬クリーンセンターの一部の施設において実証研究を行いました。

 

この技術は下水を浄化する際にバクテリアなどの微生物に送る空気の量と圧力を AIで制御することにより、効率的に高度処理を行う新しい下水処理システムです。

 

この実証研究の結果、下水中の「りん」や「窒素」を標準的な下水処理よりも多く除去することができ、良好な水質を確保できました。

また、新技術の導入により成瀬クリーンセンター全体の微生物による下水処理が効率化され、この処理にかかる電力量は、直近の2021年度と導入前の2018年度を比べると、約54万キロワットアワーの削減につながりました。これは2022年10月の電力量料金単価に換算すると年間約1,600万円の削減になります。

 

次に、(2)の「今後の方向性は」についてでございますが、

 

町田市において実証研究を行いました「AI制御などによる下水の高度処理技術」につきましては、2022年4月に国土交通省から「技術導入ガイドライン」が公表され、他の自治体においても導入することができるようになりました。

 

この技術について、他の自治体から高い関心が示され2022年1月から11月の間に、福岡市など6自治体の視察がございました。今後につきましても視察を積極的に受け入れ、町田市の先進的な取り組みを広く知っていただけるよう努めてまいります。

 

 

また、実証研究後の2021年度からの5年間につきましては、さらなる水質向上やコスト削減に向け、3者共同による自主研究を継続しており、技術の完成度をさらに高め、普及促進につなげてまいりたいと考えております。

 

 

(再質問① 厳太郎)

 

大変すばらしい取り組みだと思っています。

 

以前の行政報告では、電力削減効果が1年間で約1200万円の電気料金の削減に相当する見込みとのことでしたが、ロシアのウクライナ侵攻の影響で電気料金が高騰している現在の電気料金単価では約1600万円の削減効果があったということですね。

 

行政は慎重には慎重を期す性質上、熟慮に相当な時間を重ね、なかなか新しい革新的な取り組みを導入することが少ないように感じていました。

 

町田市のB-DASHプロジェクトでは、この技術を成瀬クリーンセンターの一部の施設で運転し、「水質の向上」、「運転電力の削減」などの素晴らしい効果があったとのことです。

 

電力の削減効果だけ見ても年間約1600万円の削減効果があったとのことですので、下水処理にかかる電力は町田市のランニングコストにあたることから、単年度だけで考えるのではなく、10年20年の長期で考えれば更に莫大な削減効果となりますので、その当時にB-DASH プロジェクトを町田市に取り入れようと英断したことにより、後の未来に大きな素晴らしい影響を与えたことだと思います。

 

市民からすれば、町田市の下水処理は「単槽型硝化脱窒プロセスのICT・AI 制御による高度処理技術」を国交省のB-DASH プロジェクトに採択の元、導入していると言っても難しすぎてピンとこないと思いますが、

 

簡単に言えば、「町田市は革新的な新技術の導入に挑戦し、下水処理にかかる電気料金を大幅に削減できた」「このことは国内外に広く伝わっていく」と表現でき、この取り組みに対し市民は心の中で拍手を送ることでしょうし、町田市を誇らしく感じることでしょう。

 

この技術は成瀬クリーンセンターの一部の施設で運転してきたとのことですが、町田市には下水処理施設が2カ所ありますので、成瀬クリーンセンターの一部の施設だけではなく、残りの施設に導入させていく考えはありますか?

 

 

 

 

 

 

(答弁① 荻原下水道部長)

 「B-DASH技術をさらに導入していく考えはあるか」についてお答えいたします。

町田市には、成瀬クリーンセンターと鶴見川クリーンセンターの2つの下水処理場がございますが、両クリーンセンターでは、「りん」と「窒素」を除去するための「高度処理化」の推進と、エネルギー消費量が多い事業所として「温室効果ガスの削減」が求められております。

実証研究を行いました、この町田市のB-DASH技術は、水質を向上させる「高度処理化」と「温室効果ガスの削減」を両立させる新しい下水処理技術でございますので、今後の両クリーンセンターへの導入につきましては、水処理設備の更新時期等を踏まえ、研究してまいります。

 

 

(再質問② 厳太郎)

実証研究では、下水中の「りん」や「窒素」を標準的な下水処理よりも多く除去することができ、良好な水質を確保したことがわかりました。

 

「リン酸」は、農作物の成長に大きく関わる栄養素ですが、「リン酸」の原料となるリン鉱石は日本では産出せず輸入に頼る状況となっています。

 

作物の栄養分となる肥料は、作物生産において必要不可欠なものであり、重要な農業生産資材の一つですが、肥料原料のほとんどを海外に依存していますので、肥料の価格は国際市場の影響を強く受けざるを得ません。

 

世界的な穀物需要の増加やエネルギー価格の上昇に加え、ロシアによるウクライナ侵攻等の影響により、化学肥料原料の国際価格が大幅に上昇し、肥料価格が急騰しています。

 

肥料の原料となる「りん」と「窒素」は、下水を浄化する際に発生する「下水汚泥」に多く含まれているものですが、現在、政府は下水汚泥の肥料化を加速させるよう働きかけており、国交省は「栄養豊富な下水道資源は、食料の安定供給に貢献できる。化学肥料がコンポストに置き換われば、脱炭素化も進む」とし、農水省などと連携し普及を進める方針です。

 

先進的な取り組みとして、福岡市では、博多湾の環境保全のために下水の高度処理を行っており、その過程で回収しているリンを「再生リン」として肥料原料に活用しています。

 

福岡市によれば再生リンは、年間80トンまで調達することが可能で、5%含有の肥料の場合、8万袋分を製造することができるといい、市場価格の80%の価格で販売するとのことです。

 

福岡市は、今回の取り組みについて、市民生活で出る下水から回収した再生リンによるエコ肥料で農家が野菜をつくり、市民に提供することで、循環型社会の構築を目指したいとしています。

 

 

肥料が高騰する中、海外依存から脱却し、国内の未利用資源を生かした循環型農業に転換する取り組みが注目されており、同じく国交省のB-DASH プロジェクトにおいても導入事例として紹介されています。

 

町田市ではB-DASH プロジェクトのAI等の革新的技術を導入し下水処理の電力削減を実現していますが、更にもう一つ下水から肥料分を抽出する事業にも取り組んでみてはいかがでしょうか?

 

 

(答弁② 荻原下水道部長)

 「下水汚泥の肥料化」についてお答えいたします。

現在、町田市では、下水汚泥を焼却処理しております。焼却後に発生する「焼却灰」につきましては、セメント原料などの建設資材に100%リサイクルしており、「下水汚泥」の有効活用に努めております。

 下水汚泥の活用方法には、「建設資材への利用」、「燃料化」、「肥料化」などがございますが、肥料化につきましては下水汚泥を直接的に「肥料」にする方法や、リンを抽出する方法などがございます。

現在、国土交通省と農林水産省が連携して開催しております「下水汚泥資源の肥料利用の拡大に向けた官民検討会」の動向を注視しながら、下水汚泥の活用方法について、全国の事例を参考に研究してまいります。

 

 

 

(まとめ 厳太郎)

答弁での「研究する」との言葉は「やらない」との意味だと以前先輩に教えていただきましたが、町田市下水道部の皆様は実際に研究してこられ、今日の実績をきちんと出されていますので、本日の答弁の「研究」も未来の下水処理のため、革新的な処理方法を更に研究し実施ていくことだと受け止めました。

 

引き続きのお取り組みをお願いいたします。

ありがとうございました。