先日、町田市議会 建設常任委員会の行政視察で宮崎市のごみ資源化施設「エコクリーンプラザ宮崎」を訪れ環境施策について学ばせていただきました。
 
 
「エコクリーンプラザ宮崎」は、宮崎県中央部10市町村の一般廃棄物の処理を行うため、焼却施設、リサイクル施設、最終処分場等を一体的に整備したごみ処理施設です。
 
平成17年11月1日に開業し、その敷地面積は町田市の処理施設の約7倍の面積の47.3ヘクタールもあり、大変広大な敷地面積です。
 
 
町田市のゴミ資源化施設は、1982年に稼働開始した「町田リサイクル文化センター」の老朽化が進んだことから、2006年から検討が重ねられ、2013年「町田市資源循環型施設整備基本計画」が策定され、本計画に則り、新たなゴミ資源化施設である「町田市バイオエネルギーセンター」が本年2022年1月から稼働しています。
 
町田市の新たなゴミ処理施設は、市民から出された生ゴミ等からバイオガスを抽出し、発電をする「バイオガス化施設」と、
 
焼却したゴミからエネルギーを回収する「熱回収施設」を併せ持つ東日本唯一の施設で、稼働以来、広く内外から注目されています。
 
しかし、町田市のゴミの資源化施設が新しくなったからといって、全ての課題が解決した訳ではなく、新たな問題や解決すべき課題も明らかになってきました。
 
町田市では市民から出されたゴミの中にリチウムイオン電池が混入していたことでの度々の出火や、
出されるゴミの総量が予定していたより削減されず、
焼却施設の焼却容量を超える量のゴミが収集されてしまっているため、近隣自治体にお願いし、有償で処分を依頼しなくてはならなくなるなど、新たな課題も顕在化しています。
 
また、隣地に焼却熱を利用した温浴施設も新たに開業していますが、コロナの影響もあり、その利用者は1日あたり平均58人と、施設整備費に比べ市民に大いに利用されているような状況ではありません。
 
この度、人口規模が町田市と似通っており、平成17年から先行して一体的にゴミ処理行政を行っている宮崎市の「エコクリーンプラザ宮崎」を視察させていただきました。
 
「エコクリーンプラザ宮崎」は元々、県が整備を進めていた、公共関与による産業廃棄物処理事業から県が撤退したことを受けて、宮崎市が中心となり近隣の町と協定を締結しながら運営してきました。
 
当初、ゴミ処理の分野は化学的にも専門性が高いことから戸惑いや苦悩もあったようですが、市民の理解のもと近隣自治体と共に事業を進めてこられ、現在では600トンものゴミ処理能力を発揮しています。
 
 
 
 
「エコクリーンプラザ宮崎」では、ゴミを焼却するのに、ストーカ式焼却炉を3炉と、焼却灰をプラズマの力で縮小させる「灰溶融炉」が設置されていますが、爆発事故が発生したため現在、「灰溶融炉」は運転中止しているとのことでした。
 
「灰溶融炉」は焼却炉で発生した灰を溶融する炉で、ごみを燃焼した後の灰を溶融してスラグ化することで容積を半分以下に圧縮する技術により、灰をそのまま埋めるより埋め立て処分場を延命でき、
 
道路舗装材などへのリサイクルが期待され、国は廃棄物を有効活用する手だてとして灰溶融炉の設置を自治体に推奨し、誘導策として焼却場建設に補助金を交付する条件に灰溶融炉の併設を求め、全国で急増してきましたが、
全国の灰溶融炉は維持コストや安全性、有効性の観点から稼働停止している状況です。
 
回収されたスラグは、コンクリート用骨材やアスファルト道路用材料として再利用が可能のため、最終処分量の大幅な低減がされることや、
 
当時は、ダイオキシン類対策、埋め立て処分場の延命にとって、画期的な技術ともてはやされて環境行政に組み込まれてきたのですが、時代が進みダイオキシン類はそこまで人体に有害では無いと判明したことにより、報道が沈静化していくと、あまり注目されなくなり、コストや安全面の観点からもごみ処理の一線から退いていきました。
 
ごみ処理政策は検討から稼働まで多くの時間を要しますし、多額な資金が投入されることから、時代の変化を受けて方針変更していくことが難しく考えられていますが、
未来を予知することは人類には不可能であるため、技術革新のスピードや社会情勢の変化に対応できるように取り組んでいくことが重要ですし、
変化を受けたのなら勇気を持って見直していけるような制度設計のあり方も検討していく必要があると感じました。
 
ロシアのウクライナ侵攻の影響による電気料金の高騰といったエネルギー価格の上昇などの社会的な時代の変化を受け、
世界各国もエネルギー政策の見直しや、方針変更が迫られており、これまでごみ処理政策は環境政策を中心に語られてきましたが、
今後は益々エネルギー政策としての視点でも重要視されてくることだと感じます。
 
 
 
町田市のごみ処理政策も町田市バイオエネルギーセンターが稼働したからと言って、全てが順風満帆に進捗しているわけではなく、
新たな課題も顕在化していることから、時代や社会情勢の変化を正面から受け止め、柔軟に進化していけるよう取り組んでいく必要性を強く感じました。