9月議会で一般質問した原稿を投稿します。

当日のアドリブ等も書き加えたものです。

今回は「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律を受けた市の木造・木質化の取り組みについて」と通告し、町田市においても木造・木質化すべきとの立場で質問しました。

 

戦後全国に植林された木材の利活用は我が国喫緊の課題です。

また、近年の木造建築は技術革新により中高層化が可能となり、工期やコストの面でも優れてきました。

新たな財源である「森林環境譲与税」を活用すると共に、木材利用方針を策定し、市民の癒しや安らぎに貢献すべく、木のぬくもりや温かみを活用した、公共施設の木造・木質化に取り組むべきとの考えから質問しました。

 

2020.9一般質問 木材利用について

 

壇上質問 厳太郎

 

自民党会派の一員として通告に基づき一般質問をします。

今回は「公共建築物等の木造・木質化について」お尋ね致します。

 

今回の質問を通じて当然のことと思われてきた認識が劇的に変化している、いわゆるパラダイムシフトが起きていることをお伝えできればと思っています。

 

今まで、木造建築物は「高層建築物には向かない」あるいは「火災に弱い」などと言われており、ビルなどの高層建築物や庁舎、学校といった大きな公共建築物は当然のように鉄筋コンクリート造や、鉄骨鉄筋コンクリート造が主流で建てられてきました。

 

しかし昨今の目覚ましい木造建築技術の発展から、高層建物も木造で建設されるようになってきました。

 

一般的に「木造で高層ビルが建つのか?」「火災で燃えないのか?」「地震で崩れないのか?」「それは安全なのか?」と思われるかもしれませんが、木造技術はここ10年で圧倒的に進化しました。

 

木材の弱点を改良した、鋼鉄に匹敵する強度の複合材料などの開発によって、木造でも火災に強い高層の建物も建築できるようになりました。

 

実際、ノルウェーの「ブルムンダル」と言う小さな町に、高さ85.4メートル、18階建ての木造複合ビルが2019年3月に完成し、世界中から視察に訪れています。

 

町田市役所の高さが42.62メートルですので、役所のざっと2倍以上の高さの木造ビルです。

 

町田市内で一番高いビルが原町田4丁目のサウスフロントタワーの96.25メートルですので、それより少し低い木造ビルと考えるとイメージしやすいかもしれません。

 

また、カナダ バンクーバーにあるブリティッシュコロンビア大学の学生寮「ブロック・コモンズ」は、地上18階建て高さ58.5mの木造ビルで、着工からわずか66日で完成しましたし、日本でも新木場にある木材会館では地上7階建て高さ35.7mです。

 

これらは従来の木造建築をそのまま使うのではなく、「新しい木造」として進化してきました。

 

アメリカシカゴでは「リバー・ビーチ・タワー」と言う80階建ての木造高層ビルが計画されていますし、ロンドンでも80階建て木造高層ビル「オークウッドタワー」が提案されています。

 

ここ東京では2041年に住友林業が東京駅のすぐそばの丸の内に高さ350メートル・地上70階建ての世界で一番高い木造ビルを建てる構想が発表され既に動き出しています。

 

実現されれば日本で一番高い、高さ300メートルの「アベノハルカス」を大きく上回ります。

 

 

日本の建築における鉄筋コンクリート使用のきっかけは、戦前に発生した関東大震災の影響により、耐震に力を入れることを目的として始まりました。

 

戦後、高度成長期に入ると、より建築環境は発達しますが、日本国内に木材が足りなかったことが主な原因で、戦前のように木材を素材としてふんだんに使うものは少なくなっていき、コンクリートなどの科学的な素材が木材にとって代わるようになりました。

 

国内の木材需要に応じる目的で1950(昭和25)年の「造林臨時措置法」を契機に、国を挙げて造林事業に乗り出し、日本の森林の4割にも相当する面積に一気に杉やヒノキの植林が進められました。

 

終戦直後は木材不足が深刻でしたが、その後日本の国際協調路線による諸外国との関係強化や、高度成長に伴い輸出入が増加すると、インドネシアなどからの格安の輸入木材が普及し、国産材は採算割れとなり、杉の立木価格は過去最高であった1980年の約10分の1にまでになりました。

 

また日本の山林の4割の面積に植林された杉などにより、GDPの2.4%に相当する、年間13兆2500億円もの経済的損失とも言われる花粉症の要因にもなってしまいました。

 

今現在、造林された人工林が資源として利用可能な時期を迎える一方、木材価格の下落などの影響により、森林の手入れが十分に行われず、台風などの大雨の際に全国各地で土砂崩れが発生し、国土保全などの森林の多面的機能低下が大いに懸念される事態となっています。

 

このような厳しい状況を克服するためには、木を使う事により、森を育て、林業の再生を図ることが急務となっています。

 

そのような背景ののなか、木造率が低く、今後潜在的な需要が期待できる公共建築物等をターゲットとして、国が率先して木材利用に取り組む基本方針について定めるとともに、建築に用いる木材を円滑に供給するための体制を整備することで、木材全体の需要を拡大することを目的に、平成22年「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行されました。

 

この「公共建築物等木材利用法」は、公共建築物における木材利用を促進し、木材需要を増やすことを目的に制定されており、国や地方自治体は自ら整備する低層の公共建築物を原則として全て木造にすることを目指しており、内装や消耗品などの調達にあたっても、出来るだけ木材製品を利用することが求められています。

 

平成30年度には国が整備を行った対象となる低層の建築物の木造化率は90.6%となり、木材利用促進法の施行以降、最高の木造化率となりました。

 

ここ町田市でも薬師池公園四季彩の杜「ウェルカムゲート」や三輪子供クラブ「MIWA~GO」で木造が採用されたことは承知していますが、改めて町田市の木造・木質化の取り組みについて伺います。

 

項目番号1 公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律を受けた市の木造・木質化の取り組みについて

 

(1)市有建築物で木造の建物は、どのようなものがあるか

(2)市として公共建築物に木材を使用していく考えはあるか

 

 以上、壇上からの質問といたします。

 

 

 

✿営繕担当部長(答弁)

 

項目1の「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律をうけた市の木造・木質化の取り組みについて」についてお答えします。

 

(1)の「市有建築物で木造の建物はどのようなものがあるか」についてでございますが、2019年度に竣工した建物では鶴間公園のクラブハウスや町田薬師池公園四季彩の杜「ウエルカムゲート」、三輪子どもクラブ「MIWA~GO」で木造を採用しております。

 

次に、(2)の「市として公共建築物に木材を使用していく考えはあるか」についてでございますが、木材のメリットといたしましては、木のぬくもりや木のもつ柔らかさに加え、湿度を安定的に保つ調湿性などが挙げられます。

これらの利点を活かしながら、今後も子どもの利用者が多い施設や、緑豊かな環境の中にある施設などにおいて木材の採用を進めてまいります。

 

 

◆厳太郎(再質問1)

 

ご答弁ありがとうございます。それでは、再質問させていただきます。

 

昨年度の実績として3件、木造建築物を整備しているとのことで、町田市が「木造」を積極的に採用していることがわかりました。

 

私も薬師池公園「四季彩の杜」を訪れてみましたが、広大な敷地の中、木材がふんだんに使われており、薬師池公園との一体感もありつつ、新たな公園の魅力を発信していく、とても雰囲気の良い施設だなと感じましたし、SNSなどの投稿を見ますと、訪れた多くの方々が非常に好意的に捉えているように思います。

 

市民の皆様からも良い評判の声があるのでないかと思います。

 

昨年度整備した木造建築物について、施設を利用する方からどのような声が市に届いているのか教えてください。

 

 

✿営繕担当部長(再質問答弁1)

 

木造建築物に対する利用者からの声についてでございますが、MIWA~GOを利用している子ども達の保護者から、「木がふんだんに使われ、木の温もりが感じられて良い施設ですね」との声をいただいています。

また、薬師池公園四季彩の杜「ウエルカムゲート」の利用者からは、「とても素敵な雰囲気の建物ですね」との声や「木のにおいがとても気持ち良いです」などの声をいただいております。

木材を多く使用した木造建築物については、これらの声にあるように、おおむね良い評価をいただいております。

 

 

◆厳太郎(再質問2)

 

 市民の皆様からも概ね好評を得ている事が解りました。

 

木造建築物はコンクリートと比べ、見た目、風合い、温かみや自然との馴染みといった点や増改築のしやすさ、設計の自由度、建築コストといった点でメリットがあり、増改築のしやすさの点では、これからも変化していく市民ニーズにも柔軟に対応できると思っています。

 

今後益々このような施設を町田市の各地に整備していって欲しいと思います。

 

さて、2018年には建築基準法が改正され、耐火構造等とすべき木造建築物の対象を見直すなど木造建築物等に係る制限の合理化が図られました。

 

この改正により中高層建築物で木造を採用しやすくなりました。

 

同年に先程壇上でも触れました、住友林業が、2041年に総業350年を迎えることから、高さ350m、地上70階の木造超高層建築物を開発する構想を発表するなど、今後、木造建築の高層化が一層進み、幅広い建築物に木材が採用されていくものと考えています。

 

昨年、2019年の全国の大規模な木造建築物の事例を挙げますと、山口県長門市では本庁舎建替えにおいて木造を採用し、木造庁舎としては最大規模となる延べ面積約7,000平方メートルの建物が完成しました。

町田市役所庁舎が7600平方メートルですので、同規模です。

 

また、宮城県仙台市においては日本初の高層木造マンションとなる10階建てのマンションが建設され、お隣の横浜市では日本初となり世界にも類を見ない、柱、梁、床、壁の構造部材すべてを木材とした、高層純木造耐火建築物となる11階建てのビルの建設が始まり、2022年に完成予定となっています。

 

このように、建築基準法が改正され、全国各地での先進的な木造の事例も増えてきております。

 

町田市においてもぜひ、公共建築物にも、幅広く木造を採用していただきたいと思いますがいかがでしょうか。

 

 

✿営繕担当部長(再質問答弁2)

 

議員がおっしゃるように、建築基準法の改正もあり、様々な公共建築物に木材を採用する土台が整ってきていると考えております。

 

先ほどご紹介いたしました鶴間公園のクラブハウスにおいては、通常の住宅に使用する材料よりも大きな大断面集成材という部材を使用しております。通常、大断面集成材はオーダーメードで特注品であることが一般的でございます。しかしながらこの建物では、部材の規格化を行うことで費用の抑制を図りつつ、鉄筋コンクリート造に比べ木造建築では実現が難しいとされる広い空間の確保を実現いたしました。

 

近年では木材の製造技術や建築技術の進歩により木造の建築費用の低減が図れるようになってまいりました。耐火性能についても建築基準法の改正により耐火構造等としなくてよい木造建築物の範囲が拡大されたことから中高層建築物で木造を採用しやすくなっております。

 

これまで、コストが高いことや耐火性能などの問題により木造を採用していなかった建築物についても、子どもの利用者の多い施設や緑豊かな環境にある施設を中心に、木造の採用ができないか、基本設計の段階で調査するなど、木造の採用に向けて検討を進めてまいります。

 

 

◆厳太郎(再質問3)

 

今後、木造の採用に向けて検討をしていただけるとのご答弁をいただきました。

 

是非、様々な建物で、木造の採用を進めていただければと思います。

 

さて、公共施設の木造化を議論する上で、公立学校の改修・改築は避けて通れません。

 

「町田市公共施設再編計画」に基づき、全ての学校施設の劣化具合や利用状況、社会状況の変化を踏まえ、機能維持を目的とした中規模改修や機能向上を目的とした長寿命化改修並びに改築を計画的に行うために策定された、「(仮称)町田市立学校個別施設計画」の中間報告によりますと、

 

「市内小中学校は建設時期が1970年代に集中し、2019年4月1日現在、築30年以上の学校施設が56校となっており、そのうち築40年以上が42校、築50年以上が11校」となっています。

 

「築50年以上の学校施設については鉄筋コンクリートの一般的な耐用年数の60年が差し迫っており、その他の学校施設についても、老朽化が進んでいるため、計画的な学校施設の改修・改築が課題となっている」と書いてあります。

 

ちなみに、鉄筋コンクリート造の税制上の耐用年数は47年です

 

計画を策定するにあたり、調査された対象は市内の小学校42校149棟、中学校が20校50棟、合計62校207棟にもおよび、その結果、本年2020年が建設ラッシュ開始年の1970年に建てられた棟がちょうど築50年となり、老朽化対策が喫緊の課題となっています。

 

調査の中で、1971年より前に建てられ、それ以降の建物より耐震性が低い学校17校、コンクリートの圧縮強度が低い学校1校、合計18校が改築を含めた整備が望ましいとされています。

 

また劣化が認められるが、改修が未実施な学校が13校、改修済みが23校ありますし、体育館では記載されている全39校のうち34校において劣化が認められています

 

町田市は建物の耐用年数についていかがお考えでしょうか?

 

近代の日本の学校建築は1950年に政府が「鉄筋コンクリート造校舎の標準設計図」を示し、更に1958年(昭和33)には、「義務教育諸学校施設費国庫負担法」が施行され校舎建設費用の2分の1を国が負担する制度が始まり、その後順次補助が引き上げられて行き、それら法の後押しもあり、「片廊下一文字型(ハーモニカ型)鉄筋コンクリート造校舎が急速に整備され、全国的に普及してきました。

 

更には、人口の急激な増加を受けて、昭和30年代後半の文科省方針により、当時は「永久にもつ」とまで考えられていたRC(鉄筋コンクレート)化が益々促進されてきたそうです。

 

当時、永久的にもつとまで考えられていた、鉄筋コンクリート造の校舎も、変わりゆく時代の中で求められるニーズも変化していき、間もなく60年をむかえることになります。

 

よく木造の耐用年数は22年と考えられていますが、それは昭和40年に出された大蔵省令「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」によって示されたものからくるもので、税制における耐用年数では、鉄筋コンクリート造47年、重量鉄骨造34年、木造22年と示されています。

 

この税制上の耐用年数のみによって木造の寿命は短いと考えられてきました。

 

56年も前の指針ですし、ここ最近の木造の技術革新を考えると見直されるべきタイミングかとも思いますし、

 

実際、平成11年18年に固定資産台帳によって建物の寿命が調査された結果、建物材料の違いは建物寿命に影響しない事が解りました。

 

木造は「実際の建物の寿命」において他の構造との違いが無く、税制上「減価償却のための耐用年数」だけが短い事から、年間の減価償却額は多くなり、建設主にとって税制上圧倒的に有利に働いている事も民間の中では認知されています。

 

 

ちなみに岡山県の指定文化財になっている、岡山県高梁市(タカハシシ)の吹屋小学校の校舎は明治42年(1900年)に完成した築120年の木造校舎です。

残念ながら、児童数減少により平成23年(2012年)に廃校となりましたが、それまでは日本国内で最古の「現役で使用されている校舎」として知られていました。

 

現在は資料館となっているそうですが、築120年の木造校舎は、木造の潜在能力を示しているように感じます。

 

 

よく、他の自治体で学校の建て替えの際、ホームページ上で「木造も検討しましたが、木造の耐用年数は22年と短いですので、長く市民に愛される鉄筋コンクリートを採用しました!」と書いてあるのを目にしますが、実態とは乖離している税制上だけの耐用年数をもって、建物の寿命を予測することは間違いだと思います。

 

建設時には、税制上の耐用年数をもって「コンクリートは長い、木造は短い」「コンクリートは47年」としておいて、実際47年を過ぎると「コンクリートの一般的な耐用年数は60年だし、調査したところまだまだ使えそう!」としているわけです。木造も同じではないですか?

 

税制上の耐用年数だけで各種構造の建物寿命は測れないと思いますがいかがでしょう?

 

 

✿営繕担当部長(再質問答弁3)

木造の建物の耐用年数についてご質問いただきましたので、お答えいたします。

 

一般の木造住宅を見ても、税制上の22年ごとに建替えが行われるとは限りません。

古民家の事例では、薬師池公園内にある旧永井家住宅は、他の場所から移築されたものではありますが、江戸中期に建設されたもので、現在も中に入ることができます。

 

木材の特徴としまして、水に弱い点があるため、雨が当たる状態や、湿気が多い状態で放置するなど、メンテナンスを適切に行わない場合、劣化が進んでしまいます。

しかしながら、日本の高温多湿の気候を考慮した、適切な設計を行うことや、経年の劣化に対して適切にメンテナンスを行うことで、木造建築物の耐用年数は延びると考えております

 

 

 

◆厳太郎(再質問4)

 

建物の耐用年数は、各種構造や税制上の耐用年数に縛られること無く、使い方やメンテナンス次第であるとの答弁と理解しました。

 

薬師池の旧永井家住宅は江戸中期との事ですので、築300年を超えている木造建築物ですね!

 

 

それでは、今後、市内小中学校を改修・改築・整備するにあたり、木造化・木質化を第一義的に考えて行くべきと思いますが、いかがでしょう?

 

木造建築物は重量が軽いことから、地震に強く、基礎工事が比較的簡易に出来、コストメリットが高いことや、工場で柱や梁を制作して現地で組み立てるために、鉄筋コンクリート造に比べて短い工期で建てることが出来ます。

 

近年では、建築基準法が改正され木造の高層建築物の施工が可能となりましたし、あるいは「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が制定され、公共建築物は木造である事が求められています。

 

学校施設を改修・改築・整備するにあたり、木造・木質化することを第一義的に考えることについてのお考えはいかがですか?

 

 

✿営繕担当部長(再質問答弁4)

建築物の構造については、鉄筋コンクリート造、鉄骨造、そして、木造、それぞれに特徴があります。

鉄筋コンクリート造は耐火性、遮音性、耐振動性に優れております。また、コンクリートを型枠に流し込んで施工するため自由な造形を実現することが可能です。

鉄骨造は柱、梁等の主要な構造部材を予め工場で製作するため、天候に左右されることなく施工することが可能です。そのため安定した施工精度が得られます。

木造は、軽いわりに強度があり、柔らかいため加工がし易いという特徴があります。

それぞれの長所を適切に捉えて、鉄筋コンクリート造にこだわることなく、構造について検討してまいります。

 

 

◆厳太郎(再質問5)

 

実際、近年、木造が見直されて全国各地の公共施設や学校施設が木造化されていますし、好事例は枚挙に暇がありません。

 

https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/koukyou/attach/pdf/index-58.pdf(公共建築物の木材利用例)

  

以前、町田市議団で視察に訪れた、長野県川上村の学校施設や保育園でも老朽化等により地元産の唐松によって木造化されており、どちらも温かみがあり解放感溢れる校舎で、素晴らしい学習環境だなと思いました。

 

静岡県浜松市天竜区では、区役所と消防署が木造で建設され、「ふじの国建設施設県知事表彰」の最優秀賞を受賞しました。

 

富山県魚津市では3校の小学校が統合され、2019年4月に「星の杜小学校」として開校し、その後たった10カ月で全ての校舎が完成しました。

 

「星の杜小学校」は文部科学省の「木の学校づくり先導事業」の採択を受け、オール木造3階建てで建築され、木の持つ香り、温かみや感触、高い吸湿性、などの優れた性能を活かし、潤いのある学習環境を実現し、高い注目を集めています。

 

校舎の延べ床面積は4419平方メートル、総事業費は20億7000万円で、そのうち国から7億円の補助を受けています。

 

因みに、現在建替え中の「町田第一中学校」の旧校舎部分の延べ床面積は、3つに分かれていた3校舎合わせて7249平方メートル、総事業費が約55億円予定されており、工事期間は3年弱です。

 

単純な比較は難しいのですし、乱暴な考え方ですが、建設期間3年弱で約56億円の鉄筋コンクリート造校舎と、建設期間10か月で20億円の木造校舎となりますので、木造も検討する範囲に入ってくると思います。

 

また、近年では木造と鉄筋コンクリート造などを合わせたハイブリット型も注目されています。

 

東京都江東区では、臨海部のマンション建設急増に伴う人口増により、増加する児童生徒に対応するために、小中一貫校の江東区立有明西学園を建設しました。

 

有明西学園は鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造、木構造の混合構造でありますが、新しい作りの学校施設として大変注目されていて、「木材利用優良施設コンクール」で2018年度 「内閣総理大臣賞」も受賞しました。

 

是非、このような素晴らしい事例を職員の皆様も見て頂きたいと思うのですが、いかがでしょうか?

 

 

✿営繕担当部長(再質問答弁5)

 

長野県川上村につきましては、町田市の交流都市であり、また、町田市自然休暇村があるという御縁で、川上村小学校が竣工した際に視察をさせていただきました。ギャラリーなど大空間における木材の使い方や、食堂のあたたか味のある木の使い方に、大変感銘を受けました。

 

あれから随分と年数が経ち、新しい木造の工法もどんどん出て来ておりますので、最新の工法を知見するためにも、他市の事例につきましては積極的に視察を行ってまいりたいと思います。

 

 

◆厳太郎(再質問6)

 

ここからは少し話を広げまして、木造に限らず、広く木材の利用や活用について、話をしていきたいと思います。

 

2010年に公共建築物に木材の利用を積極的に進めていくとの理念のもと、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行されました。

 

この法律の中では、地方公共団体等が率先して公共建築物の木材利用に取り組むことが重要との考えから、国が公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針を定めており、その基本方針に即して都道府県知事及び市町村は、「木材の利用の促進に関する方針」を定めることができるとしております。

 

現在の町田市の「木材の利用の促進に関する方針」の策定状況について教えていただけますでしょうか。

 

 

✿営繕担当部長(再質問答弁6)

町田市の現在の状況でございますが、多摩産材の活用などを盛り込んだ、方針の策定方法について、東京都から様々な情報をいただいているところではございますが、方針の策定までは至っておりません。

 

 

◆厳太郎(再質問7)

 

今のところ方針の策定はしていないとのことです。

 

現在、全ての都道府県において、「木材の利用の促進に関する方針」が策定されております。

また、全国の市区町村の内、92%の自治体において、「木材の利用の促進に関する方針」を策定しています。

 

町田市の近隣市の状況を調べてみますと、八王子市、相模原市、横浜市及び川崎市などが「木材の利用の促進に関する方針」を策定しております。

 

このように全国の自治体で「木材の利用の促進に関する方針」の策定率が高い状況がある中で、町田市が策定に至っていない理由というか原因はどんなところにあるのでしょうか。

 

 

✿営繕担当部長(再質問答弁7)

 

公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律には、公共建築物以外の工作物等についても木材の利用の促進を促すよう記載があります。また、市町村が定める方針の中では、木材の適切な供給の確保についても定めることができることとなっております。

 

東京都においては、青梅市やあきる野市など、比較的林業が盛んな地域では、地元自治体で採れる多摩産材の活用などを定めた、方針の策定が進んでおります。

一方、比較的林業が盛んでない、23区やその周辺の市ではあまり策定が進んでおりません。その結果、東京都全体の策定率は3割を切っている状況でございます。

 

町田市においても、林業が盛んであるとは言えず、町田市で採れる木材の活用についてはなかなか難しい状況がございます。そのような実態もあることから、現在、指針の作成にはいたっておりません。

 

 

◆厳太郎(再質問8)

③(地図 町田を中心として)

山間部に比べ都市部で木材利用の方針策定が出遅れている事は承知していますが、全く林業が盛んでない港区でも8年前の平成24(2012)年に木材利用推進方針は出されていますし、足立区、江東区、豊島区、中野区、世田谷区、渋谷区、品川区、でも同様に方針が策定されています。

 

この「木材利用の方針」の策定は「これからの地域づくりは自ら考え取り組む」という地方創生の観点でも重要視されています。

 

それぞれの都市が様々異なる地域特性を持っていることから、それぞれの地域が自ら考え、自分たちの地域特性に合った方針を策定し、地域課題を解決していくことが求められています。

 

大都市部の港区では地球温暖化防止や環境・水源の保全の観点から、伐採後の再植林を約束する協定を締結した自治体からの木材利用を積極的に促進する方針を立てていますし、

 

横浜市では木材利用の意義を踏まえ、「公共建築物における木材利用方針」を作成し、更には木材利用方針の実効性を高めるためのガイドラインまで作成して取り組んでいます。

そして自らを、「木材の大消費地」として捉え、民間建築物の木材利用促進をも取り組んでいます。

 

八王子市では「多摩産材」を中心に積極的な木材利用促進の方針を立てていますし、相模原市では市域の6割を占める森林資源を、保全・再生・循環・継続利用するため、公共建築物の木造・木質化の基本方針を出しています。

 

今ご紹介した例は一例にすぎませんが、どの自治体でもそれぞれの状況に合わせ、創意工夫をし、木材利用の方針を立てています。

 

町田市は都市部もあり、北部丘陵などの森林もあり、課題もあり、多くの改修・改築予定の公共施設もあることから、なおさら独自で考え、「林業が盛んな地域で策定する方針である」という誤った固定観念を捨てて、町田市にあった木材利用促進の方針を示すべきと考えますが、いかがですか?

 

 

✿営繕担当部長(再質問答弁8)

木材利用促進の方針の策定についてお答えいたします。

 

地球温暖化防止や環境・水源の保全の観点から、木材の利用を促進することは重要であると考えております。そのためには、まずは、市民の皆様に木材について、供給から需要に至るまでの経過に関心を持って頂くことが重要です。

公共建物での木材使用を増やして、その良さを十分に理解してもらうこと、木に親しんで頂くこと、このような取り組みから始めてまいりたいと思います。

 

 

 

◆厳太郎(再質問9)

 

林野庁、国交省、環境省、文科省、厚生労働省、などに公共建築物の整備に活用可能な各種補助金や制度があり、木造・木質化が多く取り上げられています。

 

環境省の補助金では上限5億円ではあるものの、設計費、工事費、設備費などの3分の2を補助するものや、国交省の木造化に係る経費の2分の1までの補助などがあります。

 

林野庁の木造化の補助金は子供園、幼稚園、老人福祉施設、社会福祉施設、病院、公民館、社会教育施設などの木造化に活用できますが、先程質問しました「町田市の木材利用方針」が無ければ、補助対象外です。

 

これらの補助金は木材を活用した先進的な取り組みに対して交付されるものが多いです。

 

町田市内の「ある学校」は、これら先進的な取り組みに対する補助金を活用し、木造9階建ての学生寮を建設する予定でしたが、コロナの影響で今は止まっているとお聞きしました。

 

学校でも独自に考え、国の補助金を活用した先進的な取り組みにチャレンジしているのですから、

 

是非、町田市でも他市の木材利用の先進事例をよくよく研究し、国の補助金を活用しながら、今後のモデルとなるような町田市ならではの取り組みをしていただきたいと思いますがいかがでしょうか?

 

 

✿営繕担当部長(再質問答弁9)

 

今後のモデルとなるような木材利用の取り組みを行ったらどうかとのご質問にお答えいたします。

現在実施設計を行っております2つの施設、具体的には、小山田中学校区に子どもクラブを新築する計画や、香山緑地の既存古民家に厨房などを増築する計画において、木造を採用することとしております。

いずれの施設でも、木材の温かみが感じられる施設になるよう設計事務所と調整を進めております。

 

その他の施設で、現在、構造方式を検討するような施設の新築や増築はありませんが、今後、新築や増築の設計を行う際には、コスト面や施設用途、周辺環境などを考慮し、木材を多く使用した建物の計画とできるか、また、先進的な事例とできるかなどの検討を行ってまいります。

 

 

 

 

◆厳太郎(再質問10)

 

では次に、開発時に伐採された木材の利用についてうかがいます。

モノレール導入路線や北部丘陵などの森林地が開発される時には大量の木材が伐採されることになります。

 

仮にそのような大規模な開発が行われる場合、伐採された木材を活用し、公共施設の木質化に取り組むことや、何らかの付加価値を付けて広く市民のためになるような試みは考えられないでしょうか?

 

そのような伐採された多量の木材が出た場合、国の補助金を活用できるような先駆的な取り組みに有効活用していただきたいと考えますがいかがでしょうか?

 

 

✿営繕担当部長(再質問答弁10)

 

地域で伐採された木材を有効活用する取り組みは、伐採から製材、また、建物を作る大工等を通じて、地元経済への効果があることや、市民の皆様に地元の木材をPRする機会を得られることなどから、市としても、良い取り組みであると考えております。

 一方で、木材の品質が建築材料として適しているか、また、供給される木材の量が十分かなど、様々な課題もございます。

 

地域で伐採された木材の有効活用については、このような課題を整理しながら、今後、研究を進めてまいります。

 

 

 

◆厳太郎(再質問11)

 

では、次に森林環境税と森林環境譲与税についてお聞きします。

これらは日本の森林環境を守っていくものです。

 

2019年3月に「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」が成立し、同年4月から一部が施行されています。

 

この法律は、2015年12月の地球温暖化防止の新たな国際的枠組みである「パリ協定」の採択や、昨今の山地災害の激甚化等による森林に対する期待の高まりを受け創設されたものです。

 

この法律に基づき、個人住民税納税者1人あたり年間1000円徴収され、国からは森林環境譲与税として、市町村に対して財源が配分されております

 

この財源については、使用する用途が定められており、森林の間伐や林業の人材の育成、担い手の確保、木材利用の促進や普及啓発などに充てられるとのこととなっております。

 

将来の地球環境負荷の低減や、山地災害の影響を抑えるために考えられた森林の有する公益的機能を守る法律です。

 

町田市にも森林環境譲与税が財源として入っているようですが、どのようなことに使用しているのでしょうか教えて下さい。

 

 

✿財務部長(再質問答弁11)

 

 ご質問いただきました、森林環境譲与税の使用用途につきまして、昨年度の実績をお答えいたします。

 

森林環境譲与税につきましては、里山環境の調査委託費や南町田駅周辺拠点整備事業費の一部に使用しております。

 具体的に申し上げますと、里山環境の調査委託費につきましては、町田市の里山環境を、維持し、保全していくための基礎資料としまして、里山環境の山林地形や、植生等の現況調査を行っております。

 

また、南町田駅周辺拠点整備事業への具体的な使用用途については、鶴間公園の伐採した樹木を用いて、公園内にある「まちライブラリー」の机や椅子、本棚、カウンターなどの什器を整備しております。

 

2つの事業を合計した総事業費、約2千5百万円のうち、約1千7百万円について森林環境譲与税による財源を充当しております。

 

 

◆厳太郎(再質問12)

 

「まちライブラリー」の使い方などは、いわゆる地産地消の概念に沿ったとても良い使い方をしているなと感じます。町田市のように林業が盛んでない自治体でも、工夫をすれば、木材の供給と活用を同じ市の中で完結することができるのでないかと思いました。

 

町田市も北部を中心に森林があり、また、市の中央部においても樹林地などが点在しています。このような環境を活かして、大規模な伐採や製材は難しくても、これらの森林資源を活用していく方法があるのでないでしょうか。

 

そのような意味では、森林環境譲与税の制度はまさに、森林の保全と共に、木材の利用促進にも注目した法律です。森林環境譲与税の財源を活用しながら、森林の保全と共に、木材の利用を進めていただけたらと思います。

 

最後にお聞きします。今後、木材を利活用していく中で、国から交付される森林環境譲与税の財源は、どのように使っていくのかでしょうか?

 

また、先ほどのご答弁でありましたが、まだ策定していない「公共建築物等の木材の利用の法律に関する方針」についてどのように考えていくのでしょうか?

 

私は、コロナウィルスの影響で今までの過ごし方や様々な価値観が変わってしまうと言われている、アフターコロナやウィズコロナの世界で、木造が新たな価値を持って、市民の癒しや安らぎに貢献するのではないかと思っています。

 

先程来からのやり取りで、

木造は技術革新により中高層化も可能となった事、

部材が軽い事から基礎が薄くてすむので安い事、

工期が短くすむ事、

公共建築物は法律で基本的に木造化されることが求められている事、

市民からも好評である事、

耐用年数においても新たな考え方や技術により引けを取らない事、

木造の先進事例を視察研究する事、

木造先駆的な取り組みの補助金の活用に挑戦する事、

森林環境譲与税による木材利用を検討する事、

 

で、意見の一致を持てたと思います。

 

木材を利活用していく中で、森林環境譲与税の財源は、どのように使うのか?

「公共建築物における木材利用方針」を策定していかないのか?

 

この2点についてお答えください。

 

大枠でも良いので、方針を策定する事により、全庁的に木材利用の意識付けが出来ると思いますがいかがでしょう。

 

 

 

 

 

✿営繕担当部長(再質問答弁12)

 

今回の渡辺議員とのご質問の中で、議員からは木造に関する最新の事例、最新の知見、また木材利用に関する最新の取り組みなどをご紹介いただくと共に、大変貴重なご意見を頂戴したと考えております。

 

木材の利活用につきましては、庁内の様々な部署に関係する課題でございます。そのため、森林環境譲与税の使用方法については、現在、庁内の各部署を含めて、どのように使用すれば有効的な使い方ができるのか、横断的な議論を始めているところでございます。

「木材の利用の促進に関する方針」の策定についての研究を含め、庁内各部署と共に、木材の利活用を進めるための検討を行ってまいります。

 

 

◆厳太郎(まとめ)

 

是非前向きに検討を進めていっていただきたいと思います。

 

公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律ができて約10年が経過しました。昔は、公共建築物といえば、鉄筋コンクリートや鉄骨造がほとんどでしたが、建築基準法の改正もあり、多くの建物で、「木造」の選択ができるようになってきております。

 

また、昨年の3月に成立した、「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」によって、森林の保全と共に、木材の利用促進に脚光が当たっております。

 

昨今の異常気象のことを考えると、地球温暖化防止の取り組みがますます重要になってきております。このようなことからも、町田市において、森林の保全はもとより、木造の採用や木材の利活用を積極的に進めていただきたいと思っております。

 

今回提出してある資料の、「木材利用優良事例集」に、バスターミナル、ホールの事例も紹介されています。 

 

工芸美術館やバスターミナル、ホールの木造木質化についても検討していっていただきたく思います。 

 

 今後、公共施設の木造木質化が先導的に進むと同時に、民間事業者にも促進され、都会的なイメージである多摩都市モノレールの原町田導入空間に、明るく先進的な多くの中高層木造建築物が出現し、地域の景観にも新たな町田の魅力を創出するなど、より一層、木材の利用が町田市で進んでいくことを願いまして、私の今議会の一般質問を終了したいと思います。ありがとうございました。