本日は麹町にあります、日本都市センター会館に『第14回地域医療政策セミナー』来ております。

 

 

地域医療政策セミナーは全国自治体病院経営都市議会協議会が主催の全国から地方議員が集まる勉強会です。

 

今回のセミナーでは、
『「崖っぷち」の自治体病院 ~北の大地で経営改革を目指して~ →北の1億円男と呼んでください!』

 

とのタイトルで、北海道 士別市の病院事業管理者兼院長の長島仁 先生の講義がありました。

 

 

 

北海道 士別市病院事業管理者兼院長の長島先生は千葉県出身の心臓専門のドクターから士別市の病院長となった方です。

 

長島先生は院長兼病院事業管理者をしながら、入院患者70、外来患者1000人、訪問診療30件、訪問診療1日移動行程108km、当直もこなし、「院長としてはやり過ぎ」と揶揄されながらも、地域医療・病院経営を守る大変パワフルな先生です。

 

 

『病院経営は少しずつ無駄を省いてお金を節約することを繰り返さなくてはならない。ミレーの「落穂拾い」のような仕事』とおっしゃっていました。

 

 

東京都内の救急救命センターは26ヶ所ありますが、一方、圧倒的な広大な大地である北海道は12ヶ所しかない、と面積比較をされながら地方の自治体病院の医師不足の現状を語られてました。

 

「各都道府県の面積当たりの医師数と急性心筋梗塞死亡率」に着目され、

人口当たり医師数は都市部でも地方でもわずかに増加しているが、急性心筋梗塞死亡率は地方の方が都市部より高いとの結論に達し、ドクターヘリ導入にも積極的に関わってこられました。

 

 

そして更に、士別市立病院の経営方針をこれまで当たり前であった急性期中心から、慢性期中心+医療連携に切り替えました。

 

先生は「医療と介護」は切って語ることはできない!特に高齢者医療ではその連携が重要だと熱くうったえてました。

 

そして公的病院として地域医療を守るため、不採算部門や救急外来を維持する重大な責務がある一方、

 

いくらなんでもお金を使いすぎて毎年赤字で税金を大幅に繰入れしなくては成り立たない経営状況を改善すべく、職員に意識覚醒を求め、病院が破綻しないよう改革してきました。

 

それが士別市立病院を急性期医療中心から慢性期医療中心+連携と大きく舵を切ることでした。

 

急性期診療中心の医療からダウンサイジングすると同時に、隣の名寄市立病院と医療連携を再構築することにより、市民の医療・介護要請に応えてきました。

 

結果、士別市立病院の入院患者は2年連続で増加し、病院への税金(一般会計)からの繰入額を減少させ、
ついには64年ぶりに病院の黒字化を達成し、平成29年度は1億5000万円の黒字を生み出しました。

 

先生は回りから「先生は病院を老人ホーム化するのか!」等と言われたり、次々と看護士が辞めていったりなどして、大変嫌な思いもされたそうですが、市立病院を潰して地域医療が無くなってしまわないよう耐えて経営改革を続行してきました。

 

これは士別市の地域特性を熟考し人口動態を考慮した病院運営をされてきた結果だと思います。

 

町田市民病院も経営改革に取り組み近年赤字幅を縮小するために尽力していますので、今回の例も大変参考になりました。

休憩を挟んで
『看取り率76% 新たな看取りの場として機能する サービス付き高齢者向け住宅「銀木犀」の挑戦』とのタイトルで、株式会社シルバーウッド代表取締役 下河原 忠道先生の講義を受けました。

 

 

下河原先生は先般テレビ番組の「カンブリア宮殿」にも出演され、今大変注目を集めている先生です。

 

 

下河原先生は福祉先進国であるデンマークの高齢者福祉の進化の歴史に着目し、これからの高齢者住宅のありかたを研究され、高齢者福祉のあるべき姿である、高齢者自らが選択出来て、人間らしく生きていける多様な生活様式を実現されています。

 

 

要介護度3以上の方々が集まる特別養護老人ホーム、
比較的要介護度が軽い方々が集まる、サービス付き高齢者住宅、について
幸せな高齢者の生き方は要介護度によっての偏在化ではない!との見解を示されました。

 

その考え方から要介護度にこだわらず、高齢者の方々が自由に人生を楽しみつつ、過度な医療に頼らず、入居費用を抑えた、豊かな高齢者住宅(銀木犀)を設立しました。

 

 

『高齢者が地域の住民としての暮らしが実感できる場所』

 

それは「管理が依存を生む」「サービスと管理は紙一重」との考え方を元に、高齢者の自律性を大切にしています。

 

「役割」がその人らしさを取り戻す。との考え方を大切にし、認知症高齢者でも地域の一員として役割が与えられています。

 

銀木犀では、地域の方々にも無料で施設を解放し、地域の皆様が自由に、駄菓子屋や子供食堂、ダンス教室、ドラム教室、スーパー流しソーメン大会など、各種サークル活動することにより、施設と地域の交流の場としても活躍しています。

 

福祉施設祭りとしても、よくある周りの方々が慰問に訪れるのではなく、入居者の高齢者が地域の方々をもてなすために開催し、その事が認知症であろうがなんだろうが、高齢者の方々が自然と元気に生きてく方法なのだ、との事でした。

 

高齢者の「生き甲斐」「役割」「社会参加」の次には「就労」を目指して今後更に展開していくとのことで、大変驚かされました。

 

そして高齢者福祉施設の究極として「看取り」がありますが、銀木犀としては「馴染みの場所で生活者のまま自然の老衰死」を基本方針としています。

 

なかなか難しいテーマである「死」というものを当たり前に人生の一部として捉えている姿勢に感銘を受けました。

 

「看取りを特別なことにしない」ことを大切にし、全国の高齢者福祉施設に厚生労働省の補助事業として普及させてきています。

 

認知症の進行はお互いに笑いあうことによって抑制されるそうです。

 

また、VR(バーチャルリアリティ)を活用し認知症を体験できる特別な眼鏡を開発し、2025年には5人に1人がなると言われている認知症を身近なものとして共感できるようにし、偏見のない社会の創出に貢献しています。

 

現在では厚生労働省の勉強会でVR体験会をしたり、内閣府の依頼で中国やベトナムにてVR体験会をし好評を得たりしています。

 

今後むかえる更なる高齢化・人口減少社会について二つの角度から様々学べて有意義な勉強会でした。