結局、平和ってなんなんだろうね
夢が叶わなかったからこそ
手に入れられるものもある。
ー
八千機の戦闘機が、宇宙へ出撃した。
地球の空なら、空を覆い尽くすほどの数だろう。
だが宇宙では、ただの散らばった光にすぎない。
編隊を組んだ二十機ずつが、各所に配備されている。
それがスクリーンで、小さな点となっていくつも点滅している。
司令室にいる者には、それが八千人の命だという実感はない。
ただ、光だけが動いている。
それだけだった。
私はかつて、戦闘機乗りになることを夢見ていた。
それだけのために生きてきた。
夢は、あと少しのところで消えた。
事故で、片目を失ったからだ。
それでも諦めきれず、
私は戦闘機の近くにいる道を探し続けた。
気がつけば、戦艦の司令室にいた。
操縦桿ではなく、
作戦図を動かす立場で、
戦闘機を操るようになっていた。
右側の視界は、今も暗い。
だが、ときどきそこに何かが浮かぶ。
暗闇のはずの場所に、
ぼやけた光景が映るのだ。
まだ起きていない出来事が、
歪んだ映像のように。
未来、と呼ぶしかないものだった。
たいていは、ほんの数秒先。
長くても、数十秒。
それでも、それで十分だった。
私は戦果を上げ続けた。
いつのまにか、奇妙な異名までついた。
「隻眼の魔術師」。
悪くない名前だと思った。
そして今、私は最高司令官になっている。
初めての大規模作戦。
それが、今日だった。
そのとき、また眼が疼く。
そして、未来が見えた。
八千機の戦闘機が、一瞬で消える。
光の点が、すべて消える。
理由は分からない。
だが私は、
慌てて命令を出した。
「全軍、撤退」
ー
私は科学者になりたかった。
それだけのために生きてきた。
だが私の家は、軍人の家系だった。
しかも王族に連なる古い家柄だ。
軍人になることは、決まっていた。
疑問を挟む余地はなかった。
それでも私は、科学を手放さなかった。
戦場からできるだけ遠い場所へ。
血の匂いのしない場所へ。
気がつけば、司令部にいた。
そこには似たような人間が多かった。
恵まれた家庭に生まれ、
教育を受け、
そして戦争を好まない人々。
戦いは、機械に任せる。
それが私たちのやり方だった。
そして弱腰逃げ腰にも関わらず、結果として勝ち続ける。
いつのまにか、「活人の殺陣師」などという異名まで頂いていた。
そんな中、ついに、念願の兵器が完成した。
簡単にいえば、電磁パルス爆弾。
すべての電子機器を無力化する。
戦闘機も、艦船も、兵器も。
すべてが沈黙する。
理論上は、戦わずに勝てる。
私は、それを望んでいた。
できることなら、使わずに終わってほしいとも。
だが残念なことに、
敵は大軍を出撃させてしまった。
八千機の戦闘機。
それは皮肉なほど、
完璧な実験対象だった。
そのとき、急報が届いた。
「司令官、敵、全軍撤退しました」
ー
それ以来。
隻眼の魔術師
活人の殺陣師
この二人が、
それぞれの陣営の最高司令官になってから久しい。
宇宙は今日も平和だった。
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