武術において力を抜くことのもう一つの大きな理由は、術をかけるためだ。

術をかける為には、全身の力を繋ぐ体を作る必要がある。
これは前述した通りです。
しかし、それだけでは駄目で、やはり、相手がいるわけですから、相手の力を無力化させないと、結局は剛力には対抗できないのです。

合気の術というのは、僕は古流剣術における
相気を外すという術理を使ってます。
剣術における相気というのは、所謂拮抗状態の事を指します。剣術は、弱いものには勝ち、強いものには負ける同じものには相気となる。
こういうのを畜生剣法といって、戒めています。

これを突破するために相気を外すという術理があるんです。

ところが最近は外すという言葉ばかりが先立って、ベクトルを外すというふうに解釈してる人が多い。
これは大きな間違いです。
ベクトル外しはただの力学的トリックであって、術ではない。熟練者には全く通じないし、実戦にも使えないどころかかえって自爆する危険があります。

力の方向に拮抗するように力をぶつけた状態から、ふいに方向を変えると相手がつんのめって無力化する。
なんて発想は、なにも知らない素人にしか通用しないのです。
では相気を外すというのはどういうものか?
それは、膠着状態を維持したまま、相手とのぶつかりつまり膠着を消してしまうことです。

つまり別の力の操作によって、ぶつかってるはずなのに、ぶつかってない状態を一瞬で作る。
これが相気を外すという
合気の術なんです。