小田玄紀です

 

 本日は令和元日です。

 

 思い返せば平成も様々な変化がありましたが、同じように令和も多くの変化が生じると考えています。当然に変化は良い側面と悪い側面がありますが、間違いなく言えることとして‟時代は変わり”ます。大事なことはこの変化をどう受け止め、どう対応していくのかということだと考えています。

 

 その意味で、令和初期(これから10か年程度)において想定される変化について考察してみました。

 

1.5G革命

 おそらく、令和が終わる時に『最も令和でインパクトがあったとされる変化は通信の5G化だった』と言われる可能性があるほどに5Gの影響は大きくなるのではないでしょうか。様々なインターネットサービスも通信速度の向上によりサービスや企業価値の向上は図られてきましたが5G革命もそれと同様またはそれ以上のインパクトがあると個人的には考えています。

 

 通信速度が現状の100倍以上に向上することで、通信量・通信スピード共に向上が期待されます。このことで今では実現困難だった様々なサービスが生まれる可能性が高まります。

 

 その1つがVR(仮想現実)であり、VRに関するサービスは5G革命を受けて今の数百~数千倍の市場規模になると思います。また、個体の通信量が高まることで車の自動運転や遠隔医療やドローンを活用した公共設備等の修繕や被災地・紛争地の支援なども5G革命により一気に進む可能性があります。

 

 日本では2020年から5Gが導入される予定ですが、これを受けて2022~25年頃には5Gの恩恵を受けた様々なサービスが実用化され始め、その時点で多くの人が5Gの価値に気付くと思います。もしかしたら令和時代にはさらに進んだ6Gや7Gも出てくるのかもしれませんが、いずれにせよこの通信革命が令和が与える変化の大きな1つになることは間違いありません。

 

2.エネルギー革命

 日本では電力自由化が段階的に行われていますが、エネルギーに関しては日本と世界で大きなギャップがあり、また、実はこれからも大きく変革余地があると考えています。

 

 日本国内の小売電力市場は16兆円程度あります。電力自由化が行われたとはいえ、大半が未だ従来の大手電力会社または大手電力会社が設立した新電力がシェアの90%近くを保有しています。

 

 世界全体のエネルギー消費量は2016年に石油換算で133億トンとなっています。1965年が37億トンであり3.5倍に増えており現在も年間2~3%で消費量は伸びています。また、これを支えるエネルギー源は石油・石炭・ガスなどが85%、原発が4.5%、再生エネルギーが10%程度と再生エネルギー比率が高まってきたとはいえ大半が石油・石炭・ガスに依存しています。

 

 他方で日本は2004年度以降エネルギー消費量は減っています。これは人口減(そして残念ながら景気減退)に加えて省エネ化の促進ということもあり、毎年1~2%程度でエネルギー消費量は減っています。政府としてもエネルギー総量の低下を表明しており、これはこのまま進んでいくと思われます。

 

 ところが、ここで1つ現状の電力市場における構造的な問題があります。それは電力料金の構成なのですが、電力料金は基本料金と従量料金に加えて「燃料費調整単価」というものがあります。これは燃料調達費は大きく変動する可能性があり、このことにより電力会社の経営が不安定にならないようにと導入された制度であり、簡単に言うと『石油・石炭・LNGガスの国際市場価格により変動する』ものです。電力会社毎によって毎月これは変わります。

 

 たとえば東京電力を例にして言うと

 

  平成28年5月 1.85円/kWh

  平成29年5月 -3.28円/kWh

  平成30年5月 -2.30円/kWh

  平成31年5月 -0.78円/kWh

 

 となっており、高圧でいうと平均的な電気料金単価は18~20円/kWhなので電気料金の10%以上がこの燃料費調整単価によって左右してしまっています。仮に電気料金を下げようという気運で動き、電力料金の基本料金や従量料金を下げたとしても、燃料費調整単価が上がってしまっては総額としての電気料金は上がってしまいます(5%基本料金が下がっても10%燃料費調整単価があがったら実質5%の上昇です)。

 

 しかも、燃料費調整単価は『石油・石炭・LNGガスの国際市場価格』によって決まりますが、今後日本の電力消費量は減ったとしても海外の電力消費量は増えた場合、『石油・石炭・LNGガスの国際市場価格』は上がる可能性が高く、その場合にこれに依拠した料金プランなど一見すると電気基本料金は下がったと思っても実質的な支払電気料金は上がってしまう可能性があります。

 

 日本国内単体で考えた場合、これから再生エネルギーは増え(現在未稼働な再生エネルギーが多くあり、これらが今後稼働してきます)、また原発も再稼働していくことで国内電力供給量は上がっていきます。これに対して省エネ化や人口減などで国内電力需要は減っていきます。供給が増えて需要が減るので、間違いなく電力料金は下がるべきなのですが、従来の電力会社が依拠する燃料費調整単価だと電力料金が上がってしまう可能性があります。

 

 日本には電力会社や新電力が参加する卸電力市場があり、ここで電気の売買が可能となります。実はリミックスポイントでは一昨年から独自の燃料費調整制度を導入し、この卸電力市場の価格をベースとして燃料費調整単価を決定するという方法を導入しました。これは日本の電力料金は日本の電源費用をベースとして算出するべきだという思いからこの制度を導入しました。導入当初は顧客や代理店から分かりにくい・・・というクレームを頂いたのですが、結果的には年間を通じた場合この制度の方が顧客が支払う電気料金も安くなり、また、当社としても実質原価に応じた電気料金を請求しているため収益の安定化に繋がっています。また、先に記載したような事由により、今後は日本の電気料金は下がっても海外の電気料金は上がる可能性があるため、独自燃料費調整制度を導入していただいた顧客が結果的に大きな削減を享受できることに繋がると考えています。

 

 こうした料金プランとしての革命だけでなく、今後は小売だけでなく託送自由化、つまり送電網についても既存の電力会社が権益を得るだけでなく、送電線を使わない電力授受の方法が確立することで大きくエネルギー革命は進む可能性がありますし、蓄電や創電の設備が進化することで、これまでとは違ったエネルギーの使い方が可能になってくる可能性があります。

 

3.観光革命

 去年は仮想通貨関連の仕事もあり、海外出張が多く、多い時には月の半分は海外という生活を過ごしてきました。海外に行き、改めて感じたこと。それは「日本はやっぱりいいな」という感想です。観光対象として捉えた場合、多種多様な文化があり、食事もおいしく、しかも安い。以前は言語の問題が指摘されていましたが、これは日本人が勝手に思っている誤解であり、フランスに行っても英語は通じない時は通じないですし、中国・香港などではタクシーの運転手が英語を理解する意思すらありません。

 

 訪日ビザの緩和や空港拡充や道路拡充などを適切に行うこと、また、カジノを含めたIR展開により間違いなく訪日観光客は増えます。2017年度は訪日観光客の消費量は3.5兆円でしたが、政府としてはこれを2020年までに8兆円、2030年までに15兆円にしようという計画を立てています。ちなみに2018年は概算で5.6兆円の訪日観光客の国内消費がありました。これらの傾向からしても2030年までの15兆円という数値目標達成は十分に可能性があります。

 

 ちなみにこの15兆円という数値は自動車関連事業(二輪や関連部品を含む)の海外輸出額が15兆円弱なので、これに匹敵するだけの外貨獲得手法になります。日本全体を考えた場合に、非常に大きな景気起爆の材料であり、むしろ日本人が培ってきた文化や価値観や伝統が評価されることを誇りに思い、この観光革命に関しては多くの人が享受を受けるべく取組をはじめるべきだと思います。

 

 何よりもこれから10か年の間に10兆円もの市場が伸びる産業はそう多くありません。市場伸び率の1%だけでも1000億円となるので、観光に特化したユニコーン企業がこれから数社出てきてもおかしくないレベルです。

 

 当然、ホテル需要も増えますが、それだけでは完結できない民泊や食事やガイドや文化体験サービス、移動手段としての自動運転サービスの展開、仮想通貨等を活用した決済サービスの導入など様々なサービスレベルで大きな変化が観光産業には期待されます。

 

4.ブロックチェーン革命

 ブロックチェーンも令和時代になり、ようやくサービスレベルとして日の目を浴び、そして、もしかしたらこれまでのサービスの在り方やシステムの在り方を根底から変えうる革命に繋がる可能性があります。そして、これは日本が中心となり革命を起こせる可能性がある数少ない産業の1つだと考えています。

 

 仮想通貨(暗号資産)1つを例にとっても、大きくこれから市場は変化していき、また、その変化はいい意味での変化として展開していきます。2017年4月に日本では世界で初めての仮想通貨に関する法律が施行されました。このことで日本を中心に仮想通貨取引は急増し、ビットコインの価格は200万円を超えて日本における1日当たりの仮想通貨現物取引量は2000~3000億円を超えました。現物とレバレッジの取引は大体1:9ですので、レバレッジを含めると1日2~3兆円近い取引が日本だけでされていました(当時は世界の40~50%程度でした)。

 

 その後、仮想通貨の大量流出などにより市場環境は冷え込み、また、当局の規制も強化されて仮想通貨に関する熱は下がってしまった・・・ということを多くの人は考えているようですが、実態は大きく違います。

 

 確かにこの1年間で日本の仮想通貨市場は大きく冷え込みました。ビットポイントを含む国内主要取引所の多くが業務改善命令を受け、経営管理態勢の強化を経営の最優先事項と捉えるようになりました。ただ、これは「規制強化」という文脈ではなくても、顧客から資産を預かる金融機関としては取り組まなくてはいけない課題であり、この点を当局と密に連携を取りながら経営管理態勢の強化に取り込むことが出来たというのが実態であり、この1年間で多くの仮想通貨交換業者が実態として強固な経営体質になりました。

 

 確かに一時的に収益面においては毀損してしまうことにはなりましたが、経営には流れとタイミングがあり、また、短期的な収益を追い求めることは結果的に後で大きな歪が生じます。むしろ、市場が停滞している中だからこそ、経営体制を抜本的に変えることが出来ましたし、システムやサービスを含めてゼロベースで再設計するという判断が出来た1年でもありました。

 

 また、仮想通貨市場については国内は一時的に冷え込んでいますが、世界の動向をみると全く異なります。ビットコインのウォレット数も2017年4月は1300万口座しかありませんでしたが、2019年3月には3600万口座を超えています。日本だけでなく海外主要各国でも仮想通貨に関する法律が整備されつつあり、年内にいくつかの主要国で仮想通貨に関する法律が整備されます。今後、FATFにおいても仮想通貨のルールが制定され、これを受けて6月のG20で国をまたいだ仮想通貨取引のルールも決まり、また、6月には日本において資金決済法と金商法の改正が行われます。

 

 こうして法律が整備されることで機関投資家の参入が期待されます。株式市場でもそうですが、個人投資家は全体の17%に過ぎず80%近くが機関投資家です。去年とったアンケートだと個人でも仮想通貨投資をしている人は5%程度しかいません。市場規模だけ考えても個人で20倍、機関投資家が加わるとさらに5倍の市場規模になる可能性があります。

 

 こうした市場環境に加えて、6月の法律改正に伴い日本でも新規通貨の取扱いの再開やICOの実施などが広まることで、再び仮想通貨に対する熱が高まる可能性は十分にあります。

 

 さらに、ブロックチェーンを活用したサービスがこれからどんどん展開していく機運が高まっています。DappsゲームやWalletサービス、医療カルテを個人が管理するサービス、不動産の証券化、登記や保険に関するサービス、投票、自動車の修復履歴や売買履歴に関するサービス。

 

 仮想通貨やブロックチェーンという言葉はこの2~3か年で一般的になりましたが、まだ具体的なサービスレベルにまで落とし込まれた商品は少なく、まさに令和の時代になりこれらが具現化していくと思われます。これは業界に携わるものとして非常に楽しみであり、また刺激的なことです。

 

5.食の革命

 日本の食料自給率は38%と低く、また、農業生産性も低いことが問題視されています。これは土地の形状に由来する要因などもあるので、一概に日本の農家や農業政策がダメだということにはならないと思うのですが、他方で事実として日本の食文化は評価されている側面があることも事実です。

 

 たとえば和牛ですが今後中国に向けた輸出が解禁されることで(今は制限付きで通常は輸出が出来ません)、黒毛和牛の価値は大きく向上する可能性があります。ここ数年で黒毛和牛の卸価格は大きく上昇しています。たとえば東京芝浦市場のA3黒毛和牛去勢の卸価格は1759円/kgでしたが、直近では2250円/kgに上昇しています。平均的な黒毛和牛は600kg(骨や皮を除く)のため一頭あたり105万円から135万円に上昇しました。

 

 一般的な畜産農家は繁殖農家と肥育農家に分かれ、多くが繁殖農家から8~10月齢の子牛を購入し、20か月程度育成をして28~32月齢で市場に販売します。子牛の取得代金が平均80万円であり、1頭あたりの平均月間飼育コストが1.5万円かかるので、20か月とすると取得価格を含む総費用が110万円程度となり、現状だと1頭あたり20万円程度の収益が出ることになります。

 

 以前は多くの畜産農家が収支がトントンまたは赤字での経営だったので、これでもすごいことなのですが、今後中国に向けた輸出解禁がされると黒毛和牛の相場が一気に上昇する可能性もあります。牛は1年に1産しかできずに供給が限られますが、需要は増えます。このことにより黒毛和牛の相場は大きく増える可能性があります。今では黒毛和牛の子牛のことを業界では「ブラックダイヤモンド」とまで呼ばれるようになっているようです。

 

 黒毛和牛に限らず、日本の農業生産物は高く評価されているものがたくさんあります。これらの知財権を正しく管理し、適切に輸出をすることで大きな食の革命が期待されます。

 

 また、一次産物だけでなく加工や調理という観点でも日本は秀でた取組ができる可能性があります。その可能性の1つが「宇宙食」です。日本の食品メーカーと某研究機関がタッグを組んで現在宇宙食の開発を進めています。これは来るべき宇宙時代に・・・というところだけでなく、被災地や紛争地における食の問題解決に貢献できる可能性があります。

 

 たとえば仮に火星に移住する計画が具体的になった際に、最も重要な問題が水と食料です。火星でも育つ食料が開発できれば、それは当然に地球でも育つ可能性は高くあります。F1レースと同じで最も過酷な環境を想定してつくることで、一般的な環境で問題なく走れるマシンが出来てきます。

 

 日本が持つ高い技術と食に関する知見を総合することで、食による紛争解決・食による平和が実現できる可能性があります。こうした取組にも今後注目をしていきたいと考えています。

 

6.被災対策

 「平成は多くの災害があった」と総括されますが、令和の時代においても同様のことが起こる可能性は高く、むしろ大規模な震災は起こると思った上で取組を進めていく必要があります。

 

 2030年までに首都圏直下型地震が起こる可能性はありますし、また2025年までに南海トラフ地震が起こる可能性は多々あります。今後、ビジネスや政治を展開していく上では、こうした震災も想定して進めていく必要があると考えています(たとえばカジノについても大阪は最有力候補地ですが、南海トラフ地震を強く意識した上で開業時期や対策を考えるべきです)。

 

 5G革命による通信速度の向上やドローン技術の普及、そして、何よりもこれまで起きた災害から学んだ知識や経験を総動員することで、より被害を減らす取組は出来るようになってくると思いますが、令和の時代の変わり目だからこそ、前向きなことばかりではなく、「災害は必ず起こる」という前提で取組みをしておく必要があると考えています。

 

7.アートや価値観

 「平成ってどんな時代だったか?」という問いに対して、1つの答えは「価値観が多様化した時代」だと考えています。

 

 たとえばLGBTについても以前では中々オープンにならなかったことですし、今では世界人口において3~5%程度がLGBTの方と言われています。LGBT以外においても30年前に比べて様々な文化や様々な価値が生まれており、時に融合して、時にぶつかりあい。いずれにせよ、日本人も全く画一的でなくなってきているということは事実です。

 

 今後はこれまで当たり前と思っていた価値観も大きくひっくり返ることが起きるかもしれません。たとえば、「名前を変える」ことが今後は当たり前になるかもしれないですし、「全く知らない人と同居する」ようなことも当たり前になってくるかもしれません。愛や家族観についてもこれまでの常識が通用しなくなることも考えられます。

 

 また、他方で価値観が多様化していく中でも人間の根底には『アートに感動する』という本能は備わっています。様々な価値観が多様化していく中で、これらを集合させる、落ち着けるという意味合いでアートの価値は高くなっていくかもしれないですし、アートに触れることが人にとって癒しや平穏をもたらすことになるかもしれません。

 

 

 

 以上、長くなりましたが令和がはじまり、これから10年の間に起こるだろうと思うこと、そして、その中でも大事だなと感じたことをまとめてみました。冒頭にも書きましたが、変化は必ず起きます。それに対してどう向き合うか、全てはここが大事です。「いい変化」や「悪い変化」は存在せず、その変化を如何にして自分にとっていいものに変えていくか。これが重要です。

 

 その意味で令和の時代も変化を楽しみながら、仕事そして人生を仲間と共に過ごしていきたいと思います。

 

 2019年5月1日(令和元日) 

         小田玄紀