小田玄紀です

 

 今年の7月頃からよく「これからビットコインの価格はどうなると思いますか?」といった仮想通貨の価格予想について聞かれるようになりました。

 

 仮想通貨の価格は買いたい人と売りたい人の需給によって決まるので、明確なことは分からないと前置きをした上で相場傾向などから想定される範囲での回答をしていますが、この1週間で仮想通貨の価格が大きく変化しており、場合によってはこの状況をもって『仮想通貨の終わり』と囃し立てる記事も出る可能性があるために現在の動向についてコメントをしておこうと思います。

 

 まず、9月4日に中国当局がICO(イニシャル・コイン・オファリング)規制をかけるということを発表しました。このことにより仮想通貨の価格は一時51万円台から44万円台と大きく下げました。その後に50万円台まですぐに回復したのですが、今度は中国本土で仮想通貨交換業を禁止するという話が浮上し、再び9月9日から10日にかけて43万円台まで下落しました。

 

 その後、47万円台まで再度上昇しましたが、JPモルガンのCEOが「ビットコインは詐欺的である」という発言をしたことが大々的に報道されて売り圧力が強まり9月12日以降42万円台にまで下げ、9月14日時点で中国本土における仮想通貨交換が全面的に禁止されることが濃厚になったために38万円台にまで下げています。

 

 中国における仮想通貨取引が全面禁止となる場合は一時的にパニック売りからさらに仮想通貨価格は下がる可能性はあります。しかし、「仮想通貨の価格」が下がることと「仮想通貨の価値」が下がることは全く別の話です。

 

 今日はこの点について説明をしていきます(内容については先日SNSで投稿した内容と重複します)。

 

 そもそも論ですが、「仮想通貨の価値」は「価格」ではなく、その「存在意義」にあると考えています。

 

 海外送金や決済など従来の法定通貨では時間やコストがかかるなど様々な課題がありました。これらを解決しスマートにすることが「仮想通貨の価値」であり、その結果として「仮想通貨の価格」が形成されていきます。

 

 そのため、“仮想通貨の価格が上がること・下がること”と“仮想通貨の価格が上がること・下がること”は全く別の問題です。

 

 “仮想通貨の価値が上がること”というのは仮想通貨を利用する人が増え、利用できる機会が増えることです。現在、世界中で多くの仮想通貨を取り巻くサービスが増えており、確実に仮想通貨の価値は高まりつつあります。

 

 今後、一時的に「仮想通貨の価格」は下がる可能性はありますが、これは「仮想通貨の価値」の下落を意味しません。我々、仮想通貨事業者としては、価格の増減に一喜一憂するのではなく、仮想通貨を使える場所を増やし、より使いやすいサービスを開発することで「仮想通貨の価値」を高めることに意識と時間を費やしていきたいと考えています。

 

 なお、今年の1月頃まではビットコインの取引量の90%近くが中国によるものでしたが、現在では日本が40%で中国は10~15%程度となっています。

 

 このため中国における仮想通貨取引が制限されたとしてもビットコインなどに与える影響は限定的であり、また、中国本土における仮想通貨交換所が営業停止になった場合でも個人間のウォレット送金などには制限をかけることは出来ないので、中国にある仮想通貨が消滅する訳ではありません(仮に消滅した場合は供給量が減るので価格が上がることになります)。

 

 その分、日本は改正資金決済法等をはじめとして仮想通貨取引が法律によって認められているため、世界における日本の仮想通貨市場の存在価値は高まっていくと考えています。

 

 いいニュースでも悪いニュースでも仮想通貨に関する報道がされることで、仮想通貨に興味を持つ人は増えます。そのことにより仮想通貨の市場は大きくなり、市場の活性化に繋がるため、今回の一連の「仮想通貨の価格の下落」に関する報道は結果的に「仮想通貨の価値の増加」に繋がったのではないかと思います。

 

 2017年9月14日 小田玄紀