やらせと演出の境界線 | 松丸元気のあ~ゆう事やそ~ゆう事

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仕事の事や映画の事、色々な日常に感じた事をウダウダと書いていきます~

仕事柄と言うのもあるし、好きだからと言うのあるけど、「ラジオ」「パーソナリティ」「DJ」なんて単語には人一倍反応してしまいます


たまに「DJ募集」みたいな告知を見て鼓動がピクっと早くなる瞬間、その後にDJと言ってもクラブDJの事を指していたとすると、ちょっとガッカリ


DJ = ディスクジョッキー お皿を回す人の意味はFMラジオの喋り手が昔は自分で選曲し、ミキサーもやっていた事からなので、厳密的にはどちらも意味的には間違って居ないのだけど、自分的にはDJと言うのはFMラジオでのパーソナリティの事を差していると思ってます



「ガレキとラジオ」と言う映画、知ってますか?




去年の春に公開されたドキュメンタリー映画で東日本大震災で被害にあった宮城県南三陸町のコミュニティFM「FMみなさん」の事を描いています


実はこの映画、東京でも上映されていたのと、タイトルの「ラジオ」と言う単語に惹かれて、観に行こうと思ってたんですが、上映期間が短かったのと時間が合わなかったので、結局観れず


ドキュメンタリー映画ってあんまり好きではないジャンルでもあるので、映画館で観る!と言う衝動に駆られないとあんまり食指も動かない


DVDで借りてみると言うのは、ちょっと腰が重いジャンルです



そんなドキュメンタリー映画「ガレキとラジオ」が違う意味で話題になってる


それは、劇中で「やらせ」が見つかり、朝日新聞が報じ、ナレーションを担当した役所広司さんも苦言を呈している



テレビなどのメディアで「演出」と言う技法の他に「やらせ」と言う言葉が業界用語があるけど、この言葉が一般的になったのは今から30年前ぐらいから


今はネットでも業界用語が普通に飛び交っているから、どこのジャンル問わずに広く知られてます


例えばプロレスの「シュート」「ガチンコ」「アングル」と言った言葉は本来は業界用語であり、隠語であるんだけど、プロレスファンは元より一般の方にも結構知られているし


よく業界ではやらせ = 演出的な意味で同一に考えている人が多いけど、本来は全く別物



「やらせ」
事実関係に作為・捏造をしておきながらそれを隠匿し、作為等を行っていない、事実そのままであると(またはあるかのように)見せる・称する事


「捏造」
実際になかったことを事実のように仕立て上げること。「捏」の読み方は古くは「デツ」であるため、でっち上げの語源ともなっている


「演出」
物事を表現するときに、それを効果的に見せること。またはその役割を担当する者のこと



どこまでが演出でどこまでかやらせかの線引きは難しい所がありますが、個人的には


フィクション 演出→全然OK
ノンフィクション  演出→使っても良いけど、やり過ぎはダメよ
ドキュメント  演出→やったらダメでしょ


と考えてます


あと、ドキュメントはいろんな事をカットしたりするのはまあまあアリだけど、盛るのはダメではないかと


なので、フィクション・ノンフィクションの演出はやらせではないけど、ドキュメントの演出はやらせになるんではないかと


そうなると「ガレキとラジオ」はドキュメント映画なので、やらせになるんですよね



でも全てのやらせが悪いとも思ってなくて、それ自体を逆手に取ってるのもあるし、楽しめる・笑えるなんて物にはやらせも良いんではないかいと思います


ただ、人の純粋な気持ちを踏みにじったり、善意を逆手に取ったりするやらせは良くないです



役所広司さんはボランティアでナレーターを引き受けたとの事なので、苦言を呈されても仕方ないだし、言いたくもなります



でも、映画は本来エンターテイメントなので、ドキュメントとしては成立しないとも考えてます


映画の父と言われたマキノ省三さん曰く、映画にはスジ(脚本)・ヌケ(映像美)・ドウサ(役者の演技)の三要素があって成立するとも言われています


そう考えたら、面白い・面白くない、綺麗・汚い、上手い・下手があっても仕方がない、ドキュメントはエンターテイメントとしては成立はやっぱり難しい


今回の騒動の考え方は人それぞれにあると思うけど、やっぱり後になって“あれは演出(やらせ)でした”はダメかな~


感動を返せ!なんて野暮な事は言わないし、何よりもその作品をお金を払って観てもいないんだから、それを言う資格もないですが、テーマがテーマなので、やらせはやっぱり良ろしくない



あれから3年近くが経ち、3月11日の記憶は薄れていってると言われてます


いろいろとツラい記憶がある方も多いと思うし、無理に思い出す必要もないけど、教訓としては忘れてはいけない事だと思います



最近、食品偽装なんかも一時期に比べたら、なりを潜めましたが、あれも適正価格以上を上乗せして、材料を偽っていたから問題になってたハナシ


もし、あれがちゃんと“材料はこうですよ~”とか“値段が材料の適正価格”だったら“美味かったら、別に材料がそれでもいいじゃん”と消費者は言ってたと思うし、納得できてたら、その値段で払ってたと思うしね


今回の問題はやらせと演出の認識の差だとは思いますが、偽りがあったのなら、やっぱり良くない



まもなくあの311が近づいていて、この作品は全国の団体での上映会がいくつも決まっていたけど、中止になったそうです


中止になった事が良いのか悪いのかは分からないけど、この映画に係わった人達にはやっぱり詫びるべきではないかなと思います


いろんな事があるとは思うけど、こういった事で作品にケチがつくのはよろしくないな~と考えます