先日、TBSの報道番組が「放送倫理に違反」したとBPO放送倫理機構が指摘した。JA共済のスキャンダル報道の中で、内部告発者が誰であるかを簡単に特定できる映像を流して、放送後に当該告発者が辞任に追い込まれた。


放送倫理機構が指摘する問題の多くは放送内容に間違いがあったり、取材手法が不適切だったり、人権侵害になったり、などの場合だ。


しかしこれ以外にも「マスコミ報道の権利と使命」が局の視点で都合よく拡大解釈されて、不適切な報道になる事がよくある。


例えば、元旦に発生した能登半島地震の報道が連日行われているが、報道の目的のために被災者に直接しつこくインタビューしたり、倒壊した家屋が留守状態で空き巣の狙い目である事を間接的に知らせたりと、報道が起点になって不都合な二次災害に至ることには無頓着な場合がある。


フジテレビ批評という番組では、震災が発生する数十秒前から局としてどう番組編成を変更し、どんな内容で、いつまで特番を放送するかの「舞台裏」が紹介されていた。


今回の能登半島地震の報道では、地震発生直後のNHKニュースで、現地の女性アナウンサーが「避難するように」と強く連呼していたのを私はナマで聞いて、納得したのだが、その後同じ放送を視聴した全国の人たちからネットに賛辞があったらしい。迫真の伝え方は素晴らしかった。


フジテレビでも同様の伝え方をしたと言っていたが、少し振り返って災害報道のあり方を語る番組としては、物足らなかった。それは、全国放送や地域放送など、異なる視聴者層への報道や放送を担っていると言う「どの視聴者ターゲット」を意識したのか、と言う視点が番組内では一言も語られて無かったのはとても残念だ。


マスコミは「視聴者に寄り添って」とか「視聴者の求めるものを」などと言っているが、視聴者は一種類では無いのに、ターゲットの狙いがずれれば的を外した内容になるだろう。


ビジネスの分野では「プロダクトアウト」と「マーケットイン」と言う言葉で対比するのだが、良い製品を作れば売れると考えるのは万人が同じニーズを持っている場合に限られる。現実は、様々なタイプのニーズが混雑していて、どこのターゲット狙いかを定めずに思い入れだけで作るのは間違いだ。


災害報道の場合、被災地の人たちをターゲットにするなら、避難を呼びかけたり、災害状況や救援情報を伝えるのが重要だ。

災害地域以外の視聴者ターゲットの場合、災害地域とビジネスや訪問や親戚知人などつながりのある人たちをターゲットする場合、日本国内の重大ニュースとして一般国民ターゲットに伝える場合、災害の事は分かったから別な番組を見たい視聴者ターゲットとは、明らかに番組内容が異なる。ネットと違ってマスメディアには多様なニーズを同時並行はできない。


例えば、元旦の地震発生でNHKや多くの民放は一斉に災害報道特番に切り替えたのにテレビ東京は、孤独のグルメを愚直に続けていた。何時間も地震の話聞きたく無い大多数の視聴者のニーズに最も毅然と対応したのはテレ東だったと私は思う。NHKは教育テレビまで特番に切り替わったし、多数の民放も「忖度」して右へ倣え。不謹慎とクレーム来るのを回避するだけの不甲斐ない時代錯誤な報道姿勢に呆れる。


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