手術。それはまるで異世界 | kaz珍道中 〜アラフィフ通信大学生&日本語指導員〜

kaz珍道中 〜アラフィフ通信大学生&日本語指導員〜

アラフィフから日本語教師を目指して大学生(通信制)になる。
2021.4月、文学部(日本語主専攻)へ3年次編入学、2023.3月卒業。
2023.4月、年少者について更に学びを深めるため、教育学部へ入学。
同時に小学校で日本語指導員スタート。

私は比較的医療ドラマが好きで、ドクターX、賢い医師生活、グッドドクターなどを見てきたが、特にグレイズ・アナトミーが大好きだ。

外科医の話だから、手術シーンも多い。

いつか私も患者としてあの手術台に乗る日が来るかもと思いながら見ていたが、とうとうこの日が来た。

とはいえ、お腹を開くわけでもなく、目の日帰り手術なのだが。

でも、手術は手術。ドキドキワクワクだ。


白内障+緑内障手術当日。

瞳孔を開く目薬に加えて数種類の目薬を数回にわけて点眼する。

直前の検査、診察を経て、いよいよ手術室へ向かう。


看護師「ではこちらのエレベーターへどうぞ」。


今まで検査室と診察室しか目に入っていなかったが、こんなところにエレベーターがあったとは。

手術を受ける者しか入れない秘密の箱……とは言い過ぎか。


2階へ上がって靴と荷物を預け、控え室に通される。

カーテンで仕切られた個室が5つ、椅子もフカフカだ。

服の上から手術着を羽織る。

心電図をつけるためのパッドを鎖骨と左腹にくっつけられ、しばらく待機。

この間にトイレにも行っておく。


ちなみに控え室には手術が終わった方が1人待機しており、もう1人は私より少し先に上がって準備を終えて、先に呼ばれて出ていった。


そして私も看護師さんに呼ばれ、手術室前で手の消毒をし、頭に手術キャップ、スリッパを脱いで足にもビニールのキャップを履かせてもらう。

そしていよいよ手術室へ。

扉が二重になっており、ドラマで見たちょっと特別な空間へと入室する。


が。

外科の手術を受けるような手術台ではなく、ピンクの背もたれの椅子へと案内された。

どちらかと言うと、美容院のシャンプー台のようなかんじだった。

同じ椅子があともう1つ2つあって、先に入室した方が手術を受けていた。


座ると頭を固定され、背もたれを倒され、仰向けに、ふくらはぎにはクッションを入れられ足高になった。

指に心電図のクリップをはめられ、先程のパッドにも器具がついた。

自分の心音が聞こえる。

左腕には血圧計も装着、術中も定期的に圧がかかる。

手はお腹に置くよう言われ、ブランケットをかけてくれた。


執刀医は女医の院長先生だ。

私と変わらない年齢。

術前何度か診察してもらったが、声がとても優しいかんじで安心するから、手術もきっと大丈夫だ。


助手の男性(若い医師なのか看護師なのかは不明)が、声かけをしながら執刀の準備を進めていく。

まず、手術する側の目の部分だけ開いた手術用布(ビニール?)を顔面に被せる。

裏面に接着剤がついていて、顔を押しながらくっつけていく。

次に、目にラップのようなものを貼り付ける。

これはどういったものか見えないからわからない。

そして麻酔をするが、点眼麻酔だ。

目薬となんら変わらないので、本当に効いているのか少し不安になる。

次に、目が閉じないようにする器具をはめられる。

これはなにかで見たことがあるぞ。

傍から見たら、ちょっと怖い絵だろうな。


院長「では始めますね」。


わー、緊張する。


目尻にピッとした痛み。

あとでわかったのだが、これは感染予防のため、まつ毛の一部を抜いたとのこと。


もともと視力が弱いのと、麻酔が効いてきたので、目の前はぼやけているからほとんど見えない。

ただし、最初のほうは院長先生のメスを持った手元が近づいてくるのは見える。

でも、目にグサッと刃先が入る様子までは見えないから、これから手術を受ける方は心配せずとも怖くないので大丈夫だ。

後半は光の周りは黒くなり、何も見えない。

人は死ぬとき、最後まで耳だけは聞こえているという。 

今私は動かそうと思えば身体も動くし意識もあるが、目を開いているのに視界を奪われて、耳だけがクリアになった状態を経験して、勝手に死の間際を疑似体験したような不思議な気分になった。


術中は強い光を当てられており、3つの光の真ん中を見ているよう指示がある。

なるべく目を動かさないようにするのがコツだ。

時折水(ただの水ではないはず)をビューッとかけながら手術を進めるので、開けっ放しでも目が乾くことはない。

そして点眼麻酔でも麻酔は麻酔、痛みはまったくない。


先生は手術のすべての内容を話すわけではないけれど、ところどころで「気分悪くないですか」とか、「順調に進んでますよー」とか、診察のときと同じような優しい声で話しかけてくれるので、緊張も緩和される。

ちなみに首を動かして頷いたり、手を挙げたりはしてはいけないが、口だけ動かして返事をすることは可能だ。


白内障手術は、角膜を小さく切開してまず水晶体を吸い出す。

そしてその穴から眼内レンズを挿入する。

眼内レンズは柔らかい素材で作られており、折りたたまれた状態で挿入して、眼内で開くようになっているそうだ。

だから傷口は小さくて済む。

白内障手術はおそらく10分ほどで終わったと思う。


院長「次に緑内障手術にうつりますね」。


白内障手術は仰向けだったが、緑内障手術は少しだけ顔を横に向ける。

前述したように、緑内障手術は眼内ドレーン(ステント)を繊維柱帯に2箇所留置するのだが、人によってはこの繊維柱帯がしっかり見えないことがあるそうで、その場合は手術中止と言われた。


院長「ちゃんと見えたので今から入れますねー」。

よかった。


パチン、パチン!


まるでホチキスで止めたかのような音がした。

0.3mmという極小の物体をくっつけるのにこんなに大きな音がしたのに驚いた。



こんなに小さいのに!(画像お借りしました)

すると。
院長「……多いね」
助手「多いですね」

ん?

院長「ある程度出血することはあるんですが、kazちんさん……ちょっと…出血多いですねー」

そうなのか。
そのあともしばらくお2人でゴニョゴニョ話しながら出血の様子を見ていたよう。
後日、先に手術を受けた方に話を聞いたら、私と同様、白内障+緑内障手術を受けたそうだが、全然出血はなかったそうで。
実は次の左眼のときも、院長&この助手さんだったのだが、

「あららら、また出血しましたね」
「右眼もだいぶ出血したんですが、左眼もやっぱり……多いです」

と言われたから、手元が狂ったとかそういうのではなくて、私の体質等の問題なのだろう。
でも、術後あまりに出血が止まらなかったり吸収しなかったりしたら再洗浄と言われていたのだがそれは回避したので、多めの出血は手術時だけだったようだ。

こうして無事2つの手術が終わった。
眼帯をつけて、控え室で少しだけ待機。
1階に戻ってもう一度診察して終わり。

受付でお土産をもらった。
手術を終えた人にくださると言う。 
お茶とお菓子のセットなのだが、私は3回手術を受けたので3回とも頂いた。
その度にお菓子の内容が変わっていて、そんな小さな配慮にも感動した。

手術。
初めての体験に加えて体調不良というアクシデントで不安や緊張もあったが、心配していた咳も我慢することができて、ひとまず無事に終わって安堵した。
手術という非日常、いや異世界、なんならパラレルワールド(嘘)が不安や緊張を上回って、ちょっと楽しかった。