「佑月のことなんだけど」

 

 カラフルな野菜が散らばったサラダにフォークを刺しながら、里沙が話し始めた。

 

 あれからメディアでは、佑月の自殺についてさまざまな情報が飛び交っている。先輩女優から酷い虐めを受けていたとか、プロデューサーの愛人だったとか、親の会社が倒産して多大なる借金を佑月が一人で背負っていたとか。覚せい剤の疑惑まで書かれている記事もあった。

 どこから出てきたのかわからない、あまりに多くの情報。どれもが嘘のような気もするし、本当のようにも思えた。

 

「佑月ね、お気に入りのホストがいて、相当入れ込んでたらしいよ。毎週のように通って、シャンパンタワーを注文したりもしてたんだって。シャンパンタワーって安くても百万円位するんだって。すごくない? お気に入りって感じじゃなくて、ガチでそのホストを好きだった、みたいな。ホストってさー。客からいくら引き出せるかが仕事だからさ。女の子に愛情なんてないわけよ。佑月、そのホストが振り向いてくれないから、金銭的にも精神的にも相当イッちゃってたみたい」

 

 サラダをつつきながら、里沙は軽い世間話のようにぺらぺらと話した。

 

 本当に佑月の話をしているのだろうか。あの美しい佑月がホストに夢中になっておかしくなるなんて。男子たちが女神だとささやいた佑月。もっと素敵な人が周りにはいなかったのか。佑月だったら、人気の俳優や監督、プロデューサー、世界的なアスリート、ハリウッド俳優とだって恋愛できそうだ。それとも芸能界は、お金をつぎ込んでホストに救いを求めたくなるほど辛いところだったのだろうか。