里沙は、女性ファッション誌から飛び出てきたみたいなオシャレな服装に身を包んでいた。

 

 ギャルっぽい姿を想像していたけど、実年齢よりもずっと大人っぽい雰囲気。背中が少し開いたストライプのシャツに、形のいいヒップがわかる黒のタイトスカート。私の数か月分のバイト代が飛びそうなブランドのバックに、底が赤いピンヒール。ゆるく巻いたセミロング。まつエク、ジェルネイル。気合いが入っているのか、いつものスタイルなのかはわからない。

 

「藍! 久しぶり! 元気だった? 会えてめっちゃ嬉しいんだけど」

 

 佑月が亡くなっていることをきっかけに会うのだから、最初は神妙な雰囲気でいたほうがいいと考えていたから、甲高い声で喜ぶ里沙に面食らった。でも、ざわついた心を悟られたくなかった。温度感を合わせるように、無理やり笑顔を作った。

 

「里沙、綺麗になったね。見違えちゃったよ」

 

 本心だった。それに比べて私は、夢のせいでみすぼらしくなったみたい。

 

「そんなことないよ。久しぶりに会うからちょっと気合入れちゃったよ。藍は全然変わらない。可愛いままだね」

「そんなことないけど……。あ、この店来てみたかったんだ。里沙はよく来るの?」

「うん、たまにね。値段通り、ちゃんと美味しいよ。まず注文しようよ! 募る話はそれからね。せっかくだからコースにしよっかな」

 

 ランチコース、五千円。二十四歳の売れない役者にはかなり痛い値段だ。里沙は普段からこんなものをガンガン頼むのだろうか。

 

「夜は高いんだけど、ランチだとリーズナブルだからいいんだよね」

 

 五千円がリーズナブルって。メニューを慣れた手つきでぺらぺらとめくる里沙。ここで「別のもの」とは言い難く、勧められるままのコースを頼んだ。

 

 スタイルや顔の作りは、そんなに差はないと思う。でも明らかに里沙のほうがあか抜けている。養成所時代は私の方が上だったと思うんだけどな。私も夜のバイトをしたら、洗練されて華やかになるのだろうか。