短大を卒業後、私は俳優養成学校に通った。
佑月はそのときのクラスメイトで、初めて彼女を見たときの衝撃は今でも覚えている。
学校の入学式の日。稽古場の扉を開くと、そこにはすでに三十人ほどの生徒が集まっていた。これから一年間、ともに学ぶ仲間であり、ライバルたちだ。私は、順番に並べられたパイプ椅子の真ん中あたりの端っこに座り、周りの人の様子をチェックした。
へえ、けっこうカッコいい男の子がいるんだ。まあまあ美人な女の子も。明らかに三枚目もいるな。体型もさまざま。かなり太っている人もいる。最初からバイプレイヤー狙いか。この子達と切磋琢磨しながら、夢を切り開いていく。もしかしたら親友ができるかもしれない。恋愛をするのかもしれない。楽しいことしか想像できなくて、胸が弾んだ。
後ろのほうの席に目をやると、すでにそこにスポットライトが当たっているかのような感覚に陥った。真っすぐに姿勢を伸ばしたその女性は、一人だけ明らかに違う存在感を放っていた。その瞬間、私は楽しい妄想から一気に現実に引き戻された。
その美しさはずば抜けていた。この子と同じ板の上で戦うの? きっと、その場にいた女子たち全員同じ気持ちになったはずだ。気づけば、男子の視線はほとんど彼女に向かっていて「マジ女神」「天使かよ」という声がひそひそと聞こえてきた。