「これで、足りるかな」
残っていた一万円を封筒から取り出して正太郎ちゃんに渡した。
「ありがとう! ホント、感謝! ちゃんと返すからね。マジでありがとう!」
正太郎ちゃんが私の手から一万円を引き抜いたとき、私は変な高揚感に包まれていた。
もう私以外の人にはこんなことしないでね。私だけが、正太郎ちゃんを応援するんだから。
「気にしないで。返してくれるのもいつだっていいよ。だって、私、正太郎ちゃんのことを応援するって決めたんだもん」
正太郎ちゃんが堂々とカッコよくしていてくれれば、私のお金なんて全部あげてもいいよ。その瞬間、本気で思った。
「ありがと。助かるわ」
正太郎ちゃんは、1万円をそのままポケットにつっこみ、今度は丁寧に「佳代ちゃん、ありがとう」と言って、私の手を握った。
「朝ご飯、本当にありがとう! マジで生き返ったわあ。佳代ちゃん、料理上手だね」
正太郎ちゃんは何回もお礼を言って、私の部屋を後にした。
駅まで送るよって言ったけど「いいよいいよ、悪いから」って、断られた。
また正太郎ちゃんを待ってるよ。