目覚めるとピンク色の部屋の中にいた。

ここは、何度も来たことのある場所。

だけど、もう思い出したくない場所だ。

なんでこんなところにいるわけ。

ああ、夢か。

佳代の奴、リアルで会えないからって、俺の夢に登場する気か。なんて図々しい奴なんだ。

 

「今、夕食の用意してるから待っててね」

 

キッチンから声が聞こえた。

ピンクのクッションに座りながら、声のほうを見る。

佳代が。丸くて大きな尻をこちらに向けながら料理をしている。

 

「お肉焼くのに少し時間がかかるから」

「肉?」

「好きでしょ、お肉」

「肉なんて食いたくねえよ」

「いいから待ってて」

 

佳代が台所から缶ビールを持って俺のほうに近づいてきた。

俺の頬に缶ビールをくっつける。

 

「やめろよ。つめてーな」

「ふふ、すぐ焼けるからね。飲みながら待っててね」

「あ、ああ」

 

ビールの蓋を開けて、喉の奥に流し込んだ。

 

「ところでさ。ちょっと相談があるんだけど」

「お金?」

「ああ」

「いいよ。今日は100万円あげる」

「100万? さすがにそんなに借りられないよ」

「いいのいいの。私のお金は正太郎ちゃんのものなんだから」

「そっか。そうだよな」

「気にしないでね。私、正太郎ちゃんの役に立ててうれしいの。正太郎ちゃんに出会って、初めて自分が生きてる意味を感じることができたの。私は、正太郎ちゃんのために生まれてきんだ。心の底から、そう思うの」

 

これは夢なんだと気付いている俺は、こんな部屋から今すぐ出ていきたい。

なのに、夢の中の俺は一向にその場から立ち去る様子はなく、佳代との会話は、意思に反して勝手に進んでいく。

 

ピンク色の部屋で俺は佳代の話を聞いていた