少し寒いな、と思い目を覚ますと、
見慣れた電球が天井で揺れていた。
なぜか優人が布団にくるまってすーすーと寝息を立てていて、
俺は畳の上に大の字で眠っていた。
「いてて。体と頭がいてえ。完全な二日酔いだわ。おい、優人。お前、人ん家に来て、なんで布団を占領してるんだよ」
寝ころんだまま、優人を蹴る。
「うう。僕、低血圧で朝が弱いの。まだ寝かせてよ」
「ていうか、さむ」
優人が眠る布団の中に潜り込む。
「やめてよー。僕、そんな趣味ないんだから」
「俺だってないわ! おお、あったかい。ていうかお前、人んちで、なにやってんだよ。辞めろよ!」
優人の下半身を触る。
「やめてよー! 触らないでー! あ、正太郎ちゃん、携帯鳴ってるよ」
手を伸ばして携帯をつかみ、
その画面を見ると黒木からのLINEが入っていた。
「昨日はありがとう。とても楽しかったです。正太郎さんは思った通りの素敵な人で、お話もすごく面白かったです。
もしよかったら、またすぐに会いたいです」
二日酔いで思考停止中だった頭が冴えてくる。
「優人、見ろよ。またすぐに会いたいってさ。これさ、絶対に俺に惚れてるよな」
「もう、勝手にしてよ」
「さすがダンガンシュートの顔面担当だよな。あんなキレイなお姉さんのハートを掴んじゃうんだから」
「調子に乗って痛い目に合わないようにね」
「なんでお前はそんなに冷たいことばっかり言うんだよ。らしくないぞ」
「お金の問題は気を付けてって言ってるの。まずは10万円のことをLINEしたほうがいいよ」
「そうだな。その件については早く連絡するよ」
「第二の佳代ちゃんを作ったりしないでよ」
「佳代と同じにするなよ。人間の種類が全く違うっつーの。俺は、黒木とは誠実に真面目に付き合いたいと思っているんだよ。こんな気持ち初めてだよ。ああ、なんだろう。この胸の奥から溢れてくるような熱い気持ちは。これが恋じゃなかったら、俺は恋の意味を永遠に知らずに生きていくことになるだろう」
「……バカなの?」
「うるせえ」
「もう好きにして」
「なんか売れる気もしてきた」
「本物のバカでしょ」
「お前はー!」
「もう! だから触らないでってば!」
昼過ぎに優人は帰って行った。
布団にくるまりながら、黒木にLINEを送る。