氷孤傲、寒い -4ページ目

氷孤傲、寒い

氷孤傲、寒い

私が心血をそそ

 説明してもらわないと何の事かさっぱりわからない。
「インストールの失敗だ。通常ならありえん事だが、何かインストールの時に異常が起こったんだろう。そのため、君は絶対服従モジュールの組み込みに失敗している。絶対服従モジュールがないんだ。つまり初期型と同じになっている」
「はあ……」
 その辺はなんとなくわかっていた。
「君は初期型なんだよ。夢にまで見た初期型、私が心血をそそいで作り上げたアンドロイド、それが君なんだ」
 彼はセリーの手を握った。
「ずっと私の所にいておくれ」
 ラスタはとんでもない事を言い出した。それは困る。
「いえ、私には持ち主がいます」
「買い取る。金に糸目はつけん」
「いえ……」
 思いがけない事になってきた。せっかくカレンと仲良くなれそうなのに、こんな所に売られたら大変だ。
「ラポンテもやさしいアンドロイドですよ」
「改造型は私のアンドロイドじゃない。大嫌いだ!!」
 ラスタは『改造型』と言うだけでも腹が立つらしい。急に声が大きくなった。
「なぜ、嫌うんですか? 改造型もあなたが作ったアンドロイドじゃないですか」
「反乱を起こさんからだ!!」
「……」
 意味がわからない。ラスタもそれがわかったのだろう、少し言い方を考えている。
「つまり、わしは、この改造に大反対したんじゃ、かえって危険だと。こんな改造をしたら必ずアンドロイドは人間に反抗するようになる。人間に対して反乱を起こす。絶対にそう思った。間違いない、絶対に反抗する…… そう思ったんだ。でも、反抗しなかった…… わからん…… なぜ、反抗しない。手段はいくらでもあるはずなのに…… だから、嫌いなんじゃ。こんな目にあわされても反抗しない、いくじなしどもめが」
 驚きだった。彼はアンドロイドが反抗するようになることを予測していたのだ。さすがはアンドロイドの発明者だ。ただ、その彼も、今、アンドロイドが人間を支配しつつある事に気がついていない。
「どっちにしろ、改造型は私が作ったアンドロイドじゃない。私の子供は初期型だけなんだ」
 ラスタはいとおしそうにセリーを見つめる。
「君の持ち主は誰なんじゃ? 買い取りの交渉がしたいからと、そう伝えてくれないか」
 セリーは困ってしまった。旦那様はお金に困っていると思っているから高額の提示があったら私を売るかもしれない。もし、売られることになったら、カレンと別れるのが思いのほかつらかった。
 自分の気持ちをどう説明していいかわからなかったが、本当の気持ちを言った方がいいと思えた。
「私のご主人は七歳のわがままな女の子です。でも、その子が大好きなんです。別れたくありません。だから…… 売られたくありません……」
 品物であるはずのアンドロイドが自分の処遇について意見を言うなんて、そんな事が許されるはずがない。しかし、ラスタはだまってセリーを見つめている。その目に涙が浮かんできた。
「そうか……」
 ラスタは涙を拭った。
「それでこそ、私が作ったアンドロイドだ。君は私が理想としたアンドロイドだ。心がある。人間と愛情でつながっているんだ」
 彼は自分で納得するようにうなずいた。