国際環境疫学会は大きな学会なので、国際会議場を借り切って開催されています。私が現在研究しているPFAS(有機フッ素化合物)の人体汚染については数多くの発表があり、どれを聞こうか迷いました。複数の研究発表があり、多くの人が参加していたのが、スウェーデンのロネビーという小さな町の空港で、消火訓練が1980年代から行われていたために、飛行場の泡(あわ)消火材に使われた大量のPFASが周辺の地下水を汚染し、住民が高濃度にPFASに暴露された事例についてでした。

 

今は汚染された水道水は使わなくなっているそうですが、汚染されていた当時の水道水中のPFAS類12種類の合計濃度は10,380ng/mlもあったというのです。汚染されていない地域の濃度は5ng/ml未満なので、唖然とするほどの高濃度です。

住民の血清中の濃度は、PFOSとPFHxSという物質がどちらも最高で800ng/mlという高濃度で、人体影響が深刻に懸念される濃度でした。

 

PFASによる環境汚染は世界中の空港周辺や化学品工場周辺で問題になっており、それによる水質汚染、さらに人の汚染が報告されています。私も環境省のエコチル調査(子どもの健康と環境に関する全国調査)に参加する中で、お父さんたちの血中のPFAS濃度を分析したら、想像以上に汚染濃度が高かったので、とても気になります。

 

日本では、空港周辺やエアコン製造会社の工場周辺の地域の水質汚染以外はあまり注目されていませんが、カナダでは絨毯のクリーニングに撥水(はっすい)加工をしたために家族全員が高濃度に汚染されていた例もあります。その発見の経緯は、たまたまカナダの大学の研究グループがPFASの人体汚染についての研究をするためにボランティアを募集し、この家族の両親が採血に協力したのです。すると、非常に高濃度に汚染されていることがわかり、5人の子供たちも後に調べたら非常に高濃度だった、というわけです。原因を探る中で、絨毯のクリーニングを定期的にしていて、業者が防汚処理のためにPFASの入った薬剤を使用していたことがわかりました。この一家は比較的裕福な経済状態であるために高価な絨毯のクリーニングを定期的にできていた、というのが皮肉なことです。そのため、「こういう場所しか汚染されない」と考えるべきではないと思います。想像もしていなかった汚染源があるかもしれないからです。

学会はどんどん参加して情報収集しないといけない、と思いました。