先日、ウクライナ出身のCさんとランチをご一緒しました。

ウクライナでの戦争が早く終わればいいのに、という話しから、この戦争でのロシアの目的は何なのか、という話しになり、ロシアの歴史の話しになりました。

 

うさぎ:どうしてロシアの人はプーチンみたいな人の言うままになっているの?

 

C:昔は、ロシアの人はほとんどがツァーリ(皇帝)の農奴、つまり奴隷だったのよ。奴隷だったから一切反抗できなかった。共産主義の時代になっても、支配者がツァーリから共産党に変わっただけで、反抗しようなんて考えないのよ。共産主義が終わったら次は独裁者が次々に現れて、彼らの言うままになるしかない、と思っているの。とにかく、自分たちが殺されないように、家族が平穏に暮らせるようにするには、上の言うことを聞いているしかないでしょ?共産主義の時代には「宗教は麻薬のようなものだ。信じるな」と言われてキリスト教は迫害されたの。今、プーチンはロシア正教を市民を支配するための道具に使っているわ。だから、今は「ロシア正教を信じろ」と言われて、人々は言われるままになっている。学校で「ダーウィンの進化論」を教えるのは禁止され、すべての生き物は神が創造した、と教えられているの。人口が減っているので、中絶も禁止になったわ。これからはたぶん、「闇中絶」が増えるでしょうね。

 

うさぎ:ロシアの市民が変わらなかったら、ロシアは変わらないわね。でも、恐怖政治を敷かれていたらだれも声をあげられない、っていうことね。ヨーロッパのあちこちの街のレストランやカフェに、ロシア語のメニューが置いてあるでしょ?だから、もっと多くのロシアの人がヨーロッパの街に来るようになって、自由のすばらしさを知ったら、ロシアも変わるんじゃないかしら。

 

C:うさぎ、ヨーロッパのあちこちの街に贅沢に旅行に出られるのは、ロシア人のごく一部の富裕層だけよ。彼らはプーチンの支援者と言ってもいいわ。石油などの天然資源で潤っている人たちね。でもいずれは枯渇してしまう天然資源に頼っているだけでは、貧しい人はいつまでも貧しいままよ。何の産業も育っていない。「Made in Russia(メイド・イン・ロシア)」のものなんて見たことある?一つもないわ。ロシアは「Failed state(失敗国家)」なのよ。独裁者が法律を好きなように変えてしまう。憲法だって変えてしまえるの。ロシアではレズビアンやゲイの人たち(LGBTQ)が迫害されているのを知っているでしょ?その象徴の虹のマークは今のロシアではタブーなの。ある女の子が虹の模様のイヤリングをしているのをファーストフードの店員が見て、画像を撮って警察に送ったのよ。そうしたら、すぐに警察が彼女を探し当てて5日間刑務所に入れられたの。それで、子供用の馬のぬいぐるみを作っているおもちゃの工場で、馬のぬいぐるみに虹のマークがついていたので、お店の人たち総動員で、一晩で虹のマークを黒いマジックで塗りつぶしたの。社会全体が恐怖に支配されているのね。ロシアでは当局が市民に無実の罪を作り上げて刑務所に入れるから、とにかく当局から目をつけられないようにしないといけない、とみんな考えているの。たとえば、ある日突然警察が来て「お前の持ち物から違法薬物が見つかった」と言われたりするの。「それは私のじゃありません」と言っても無駄。どうやって、それが自分のものじゃない、と証明できる?ロシアは「法治国家」じゃないの。一応、法律はあるけど当局が好きなように解釈できるの。あの国に希望は無いわ。

 

うさぎ:反体制指導者のナワリヌイさんって、いるでしょう?なぜロシア政府は彼を生かしておくの?

 

C:さあ、どうしてかしらね。今、彼はロシアの中で最も過酷な北極圏の牢屋にいるのよ。本当に生かしておくつもりなのか、少しずつ弱らせて「見せしめ」にしているのか、わからないわね。

 

などと話した翌日、なんと、ナワリヌイ氏は唐突に刑務所の中で亡くなってしまいました。死因はわかりませんが、あんなところに入れられなかったら今も元気に活動していたでしょうから、ロシア政府に殺されたと言ってよいでしょう。日本もいろいろ問題はありますが、少なくとも日本は民主主義の国で、政治家は市民から見られ、評価されています。法律が当局に恣意的に運用されるようなこともありません。経済も、波はありますが国民は一生懸命働けば良い未来を描けます。日本に生まれてよかった、とつくづく思います。ナワリヌイさんのご家族の悲しみは癒えないでしょうが、安全なところで暮らすことができますように。

 

ナワリヌイさんのために祈るうさぎ