(続き)

すると、病気で家にいるはずの秘書Mからメールが届きました。クアラルンプールの秘書Jに、「速やかにこの人の手続きを進めて下さい」と書いてあります。体調が良くないのに、自宅でメールをチェックして、私のために秘書Jに督促のメールを送ってくれたのです。「わー。すいませーん」と申し訳ない気持ちでした。



すると、しばらく後に、秘書Mから私と本部の秘書さんたちあてに「急がなくちゃいけないのは私じゃないのよ。私にはなにもできないんだから」という弁解のメールがきました。しかし、もし、本部の人事担当の秘書が急いでも何もできないとすると、クアラルンプールの人事部が急がなければならないはずですが、その担当者は何もしません。そうすると、いったい誰が担当なのでしょうか。私には、この国連組織の大きな問題の一つがここにあるように思えました。みんなが無責任でいられるわけです。「それは本部の秘書の仕事でしょ」「いやいや、それはクアラルンプールの仕事でしょ」と言う具合に、皆が無責任でいても誰の腹も痛まないわけです。犠牲者は(私のような)しょっちゅう出るのでしょうが、皆さん「ジュネーブはそういうところ」と言われて受け入れているのでしょう。

コスト削減は国連全体の至上命題のようなので、人を大幅に減らすほかに、人事コストの安い発展途上国に人事機能だけを動かして節約しよう、ということだったのだと思います。




しかし、ことはそう単純ではありません。いろんなところにひずみが出てきて、これからも多くの人が本当に困った事態に追い込まれるはずです。

私などはまだN大学のN先生がいろいろと細かく手伝ってくれたり、たまたま秘書Eさんが優しい方だったので助かってますが、そういう人ばかりではありません。いったいこれから、どうなるのでしょうか。私はここにずっといるわけではありませんが、他人事ながら心配です。

でも一ついいニュースが!ようやく、電話が届きました。これも、秘書EさんがGMSに何度か電話し、GMSは「え、まだ届いていない?そんなはずはないんだけど。じゃあ、この日までに届かなったらまた言ってください」と言って、ようやく今日来たのです。

この電話がまた単純な電話じゃないんですよね。コンピューター化されていて、電話を届けに来たお兄さんが、電話を電話線につないだら、「じゃっ」と言って帰ろうとするので、「ちょっと待った!」と引き留め、「どうやって使うの」と聞かねばなりませんでした。

お兄さんは、まず電話のメインスイッチを入れました。ゴロゴロゴロゴロ…と音がして(するような気がして)立ち上がるまで待ちました。お兄さんが「まず、待つ!」というので、「ずいぶん待つのね」と言うと、「こういう機械はたいてい最初は待つんですよ」というので、「ジュネーブでは待つのは最初だけじゃないでしょ?ずーっと待つんでしょ」というと、「あー、そうそう!いつも待つよねー」と笑っていました。



電話は、コンピューターのように暗証番号を入れなければなりませんでした。お兄さんはいろいろとボタンを押して、「12345」と暗証番号を入れて、さあ、あなたの番号に入れなおしてください、と言ったので、私が自分の番号を考えて入れました。こんなこと、お兄さんがいなかったら絶対にできませんでした。「じゃっ」って帰られても困ります。



とにかく、電話がきました!電話!電話!電話がかけられる!すごい!電話くらいでこんなに幸せになれるなんて、もしかしたらジュネーブって幸せの国?

いやいやいやいや、騙されちゃいけない!本来なら赴任初日に用意されていなくてはならない電話じゃないの!電話がちゃんと使えるようになるまで3週間なんて、おかしいじゃないの!と誰かに力強く言いたいのですが、聞いてくれる人はいません。しかし、電話が使えるようになって、ようやく文明国に来たという安心感があります。仕事場のデスクの上の電話が3週間も使えないなんて、仕事にならんだろう、と思うのですが、もしかして、そもそも仕事をすぐにやってもらおう、なんて思っていないのかもしれません。

N大学のN先生や、前からここで働いている日本人のNさんは「3週間でここまで来るなんてすばらしい」と言ってくれるのですが、自分としては、3週間もかかってようやくこれか、と言う気持ちが強いので、とても疲れた一日でした。

いやはやな日はまだまだ続きそうです。

さて、今日のビールは昨日と同じモンブランのビールにしました。今日は金曜日で、少し解放感があるのでカルフールでお寿司を買ってしまいました。と言っても、とびっこの巻きずしです。こんな巻きずしでも約1000円しますが、外で食べるよりはずっと安いのです。また、日本酒の大関375ミリリットルが4.95ユーロ(約700円)で売っていましたので、買いました。ほかに、純米吟醸31ユーロ(4300円)なんていうのもありましたが、いいんです、いいんです。私なんて、しょせんそんなもんですから。700円の安酒で十分幸せになれます。


夕方から雲が分厚くなり、寒くなってきました。明日は雨だそうです。せっかくの朝市なのに、残念です。でも、もう買うものもだいたい決めてあるのです。



今日は疲れた一日でした。きっと明日にはいいこともあるでしょう。

おやすみなさい

ウサギ