(続き)


すると、ヘルプデスクに電話した秘書Eが私の部屋にやってきて、「Mも、Jも、Uも、皆電話に出ないと言われた」と言うのです。そんなばかな。神様、これは何の罰ですか?うるうる…。取り急ぎ、クアラルンプールの秘書JUに、「先週金曜日に以下のメールを送ったけど、どうなってますか。アパートの契約金を3月27日にどうしても払わないといけないのです」とメールをしたのです。そうしたら、なんと…。秘書Uから「3月20日から28日までお休みしまーす!緊急の用件は以下の二人に言ってね!」という能天気な自動返信が戻ってきました。おいおいおいおいっ!働けよ!少なくとも、働いてから休め!と、神様に成り代わって成敗してやりたくなりました。


なんで、なにもしないまま休みを取るのでしょうか。なぜ、そんなことが許されているのでしょうか。一方、3月17日に休みを終えて仕事に戻っているはずの秘書Jからは一切、何の返信もありません。秘書Uの「緊急の用件は以下の人に連絡してね」などという言葉を信用することはできません。何しろ、秘書Uは、秘書Jが不在の時に代わりに仕事するはずの秘書だったんですから。

本部の秘書Eさんは心配してくれて、とにかく誰かを動かしましょう、といって、本部のGMS(Global Management Service=国際管理サービス)にメールしてくれました。とりあえず、「至急なんとかお給料の支払い手続きをしてください。クアラルンプールに何度も連絡しましたが、無しのつぶてなので心配です」というメールを打ちました。


さらに、もともと私の人事手続きの担当をするはずだった、人事担当、秘書Mが3月19日に病欠から戻っているはずだから、この人に電話して予約を取って面談してきたら、と言われたので電話しましたが、留守電が答えるのみです。しかたなくメールで「病欠からもどったばかりのあなたにお願いするのは申し訳ないが、アパートの契約金を早く払わないといけないので、早急に手続きを進めてもらえないか」とメールしたのです。送るとほぼ同時に、秘書Mから自動返信が戻ってきました。「3月24日までお休みします」と。

おいおいおいおいっ!どうなってんだよ!と叫びたくなりましたが、秘書Mは病欠していたので、復帰したもののまだ体が本調子ではないのかもしれない、と思い直しました。そうだとすると、気の毒な話しです。


しかし、気の毒ではありますが、私のお給料はいったいどうなっているのでしょうか。

すると、秘書Eさんは同じ部の別の秘書に相談して、もう一人、連絡したらなんとかしてくれそうな別の秘書さんの連絡先を聞いてきてくれました。秘書Lさんです。また同じように「アパートの契約金を払わないといけないからお給料の手続きを進めてくれろ」というメールを打ちました。

秘書Eさんは「これだけたくさんの人にお願いしたんだから、誰か一人は助けてくれるはずよ」と、神頼みみたいなことを言うのです。私も「そうよね。一人くらいは動いてくれるわよね」と応じて、二人でため息をつきました。

なんでこんなに人がよく休むのでしょうか。そして、不思議なことに、休んでも誰かがその人の代わりに何かする、ということはありません。一応、自動返信メールは来て、「急ぎの時は誰それにね」と書いてはありますが、その人に依頼してもやってくれません。人が休んだら、その人が担当するはずの仕事は滞ります。誰かが犠牲になることになりますが、それ以外の人は誰も困らないので、このやり方が変わることはありません。

いやはや、いやはや。疲れます。

秘書Eいわく、昔はこんなことはなかった、とのことです。昔は重要な機能は本部に集中していたので、少なくとも何が起こっているのかはわかった。今は、コスト削減のため、といって人事機能を人の雇用が安いクアラルンプールに移してしまった。そうすると、そこの人たちとジュネーブの本部の人間とはまったく個人的なかかわりもないし、お互いに何が起こっているのか全く見えないし、時差もある。自分たち本部の秘書が途中までやっても、私たちの手を離れたらいったい誰が何をどうするのか、まったくわからない。待つしかない。しかし、この方法を採用してしまったので、もうどうしようもない、と言うのです。本当にそのとおり、クアラルンプールでもすでに人事部が機能し始めてしまったので、今さら本部に戻すこともできません。混乱と不安と嘆きが渦巻いています。

「とにかく、待ちましょう」と秘書Eさんが言って、自分の部屋に戻っていきました。

ウサギ


(文字数オーバーという表示がでるのでここでまた一度切ります)つづく