そのかたのことを簡単にご紹介しますと、
私よりちょっと年上の、聡明なかた。
その上、美しい…。
(ええ、美しい上に物言いも穏やかですから最強ですよ。
そのかたと(パワハラ疑惑の)ある男性が話をしているのを
私目撃したことがあるのですが、
その男性メロメロというかトロトロというか、
半分溶けていましたね)
その彼女に人生で一番好きな本は?と訊いたことがあったのです。
そうしたら彼女即座に『青い鳥』って答えたんです。
あまりに意外で(まぁ、人生意外なことばかりですが)、
「え、メーテルリンクの? はぁ~…」って
私、後が続かなかったです。
彼女の夫君は旧帝大の教授でした。
傍目からは順風満帆の人生のようにうかがわれ、
実際そうだったのだと思いますが、
それでもぽつりぽつりと彼女が言うことには、
若いころ、多分ご主人に帯同して?
ウクライナにいたことがあったそうです。
最初のお子さんをそこで亡くされ、
「それで、その子のお墓はウクライナにあるの…」と言われ、
私はやっぱり「はぁ~…」というしかありませんでした。
もう二十年も前の話です。
そして今頃になって、
なぜ『青い鳥』だったのだろうって考えるのです。
あのお話はいろいろな解釈があって、
それはそれでいいのですが、
あの話のなかに光の精って出てきますよね。
チルチル、ミチルの旅につきそって、折々に彼らを励ます光の精。
旅の終わりに、その光の精は消えてしまうのですが、
チルチル、ミチルが「行かないで!」と言うと
光の精は「月の光の中にも、ランプの光の中にも私はいて
これからもあなたたちにささやき続けますよ」とこたえます。
それでふっと思ったのです。
彼女は、光の精のように生きたいと思っていたのではないか。
(実際彼女はいつもそのようでありましたから)
そう思うと、彼女の好きな本『青い鳥』が腑に落ちるのです。