このところ、フォローしているブロガーさん複数が

平野啓一郎著の『ある男』を映画も含め立て続けに取り上げておられた。

伝染するのかしら? 興味深い現象。

 

この『ある男』という本は私も読んだことがあるのです。

他人と戸籍を交換して、その人物に成りすまして生きた一人の男と、その出自をさぐる男(弁護士)の二人を主軸に展開していくのですが、

自分のアイデンティティに不安のある人がほかにも登場して、

言ってみればみんな”ある男”に該当しそうな内容でした。

 

感想としては、これほど見事に他人になりすますことができるのか、

本当の自分とは、どの戸籍を生きている自分なんだろうとか、

読んでいるほうも穏やかでなくなる心地がしてくるのです。

そう、”テセウスの舟”にもどこか少し似ていますね。

一方で、「男は身軽だ…」、という身も蓋もない感想も持ったり(笑)

 

 

*

 

で、以下に書いていることは実話なんですが、ヨーロッパでの話です。

ある夫婦がいて、夫はパワハラ・モラハラのイヤな奴だった。

その夫がふいと家を出て行ってしまい行方知れず…。

残された妻はひとりで暮らしていたが、

そこに夫そっくりの男がやってきた。

瓜二つの男だったから村の人は夫が帰ってきたのだと思った。

その男はやさしくて、妻は大喜びで幸せに暮らし始めたが、

ただ夫の親戚のおじだけは疑っていて騒動になってしまった。

でも一番よく本人を知っているはずの妻が「正真正銘の夫だ」というので、

それ以上はどうにもならなかった。

ところが本当の夫がひょっこり帰ってきたのです。

兵隊になってどこかの国の戦争にいっていたんだと。

で、帰ってみたら自分とそっくりの男が家にいる…!

びっくりしただろうね。

まぁ、それで結局、成りすました男は姦通罪で死刑になり、

妻のほうは”あまりに似ていたので区別はつかなかっただろう”とおとがめなしで、

妻は元のパワハラ・モラハラの夫と暮らした、

ということなんですけど…。

 

事実は小説より奇なり、ですね。