このところ、フォローしているブロガーさん複数が
平野啓一郎著の『ある男』を映画も含め立て続けに取り上げておられた。
伝染するのかしら? 興味深い現象。
この『ある男』という本は私も読んだことがあるのです。
他人と戸籍を交換して、その人物に成りすまして生きた一人の男と、その出自をさぐる男(弁護士)の二人を主軸に展開していくのですが、
自分のアイデンティティに不安のある人がほかにも登場して、
言ってみればみんな”ある男”に該当しそうな内容でした。
感想としては、これほど見事に他人になりすますことができるのか、
本当の自分とは、どの戸籍を生きている自分なんだろうとか、
読んでいるほうも穏やかでなくなる心地がしてくるのです。
そう、”テセウスの舟”にもどこか少し似ていますね。
一方で、「男は身軽だ…」、という身も蓋もない感想も持ったり(笑)
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で、以下に書いていることは実話なんですが、ヨーロッパでの話です。
ある夫婦がいて、夫はパワハラ・モラハラのイヤな奴だった。
その夫がふいと家を出て行ってしまい行方知れず…。
残された妻はひとりで暮らしていたが、
そこに夫そっくりの男がやってきた。
瓜二つの男だったから村の人は夫が帰ってきたのだと思った。
その男はやさしくて、妻は大喜びで幸せに暮らし始めたが、
ただ夫の親戚のおじだけは疑っていて騒動になってしまった。
でも一番よく本人を知っているはずの妻が「正真正銘の夫だ」というので、
それ以上はどうにもならなかった。
ところが本当の夫がひょっこり帰ってきたのです。
兵隊になってどこかの国の戦争にいっていたんだと。
で、帰ってみたら自分とそっくりの男が家にいる…!
びっくりしただろうね。
まぁ、それで結局、成りすました男は姦通罪で死刑になり、
妻のほうは”あまりに似ていたので区別はつかなかっただろう”とおとがめなしで、
妻は元のパワハラ・モラハラの夫と暮らした、
ということなんですけど…。
事実は小説より奇なり、ですね。