『最後の講義・適応力』
出口治明(3)
では昨日の第3章から戻って、
第1章から始めます。
第1章「タテ・ヨコ・算数」の視点
人間はものごとを見るとき
自分が見たいものしか見ない動物です。
そのため世界をフラットに見るには
3つの視点が必要です。
その3つが「タテ・ヨコ・算数」。
その一つの「タテ」ですが、
タテとは時間軸のことで、歴史的な視点をもって
昔の人はどう考えていたのかを知ることです。
人間の脳はこの一万年まったく進化していないと
世界中の脳科学者は結論づけています。
だから時代は違っても昔の人の成功事例や
失敗事例、思考パターンを学ぶことは
とても大切です。
「ヨコ」は空間軸です。グローバルな視点をもって
世界を広く見渡すこと。
人類はホモ・サピエンスという単一種ですから
今を生きる世界の人たちがどう考えているかを
知ることは大切なポイントです。
*
この「タテ・ヨコ」で、例えば夫婦別姓問題を考えると
夫婦別姓はあたり前だということがわかります。
まず、タテ軸の歴史です。
鎌倉幕府を作ったのは源頼朝と北条政子ですが、
結婚した後も政子は源姓ではありませんでした。
夫婦が同姓となったのは、実は1898年明治時代の
旧民法からで、わずか120年ほど前からです。
それ以前は日本は夫婦別姓の国でした。
ヨコ軸で見ると、37の先進国が加盟する
OECD(経済協力開発機構)の中で、
法律婚の条件として夫婦同姓を強制している国は
日本だけです。
さらに今の法律で夫婦どちらの姓を選んでもいい
ということになっているのに、
実際には9割以上が男性の姓になっている現実に対し、
国連は「暗黙の女性差別」だと認定し、
3回も是正勧告を行っているのです。
このように物事をタテ・ヨコの視点で眺めれば、
バイアスやイメージに惑わされることなく
正解を導き出すことができます。
*
では次は「算数」。
この算数とは「数字(データ)」、
「ファクト(事実)」、「ロジック(論理)」と
いいかえてもいいのですが、
エビデンスがあるのかを理解したうえで
物事を考えることです。
少し前ですが、
「欧米の強欲資本主義はもう時代遅れだ。
これからは近江商人の理念である『三方よし』
を基本にした日本的経営が世界を救う」と
話している人がたくさんいました。
鵜呑みにしそうになりますが、ここで「算数」です。
平成の30年間の日本の正社員の平均労働時間は
年間2000時間を超えていました。
その際の平均成長率は1%あるかないかでした。
EUは年間1500時間以下の平均労働時間で
2.5%の平均成長率を達成しています。
この数字、つまり長時間働いてもあまり儲かっていない
ということは、マネジメントができていないということです。
「三方よし」を賛美する前に、生産性をあげる努力を
する必要がありそうです。
このように、どんな問題もエビデンスベースで考えることは
根拠なき精神論に左右されないためにも
欠かせない作業なのです。
※「アップル トゥ アップル」の話
ここでなぜアメリカではなくEUと比較したかと
いうことですが、「アップル トゥ アップル」は
ビジネス用語で、同一条件での比較になっているかということです。
似た者どうしを比べることが大切なのです。
アメリカのような超大国と比べるより、
ドイツやフランスなどのような日本と面積や人口の
値も近く、高齢化が進み、石油も産出しない国と
比べる方がデータとして正しいと思って比較したのです。
人間はそれぞれ顔が違うように、
異なった人生観や価値観を持って生きています。
同時にそれは、異なった価値観や人生観という
「色眼鏡」をかけて世界を見ていると考えることもできます。
ですから、世界をフラットに見るための枠組が必要になるのです。
それが「タテ・ヨコ・算数」なのです。
* * * * *
ここまでが第1章の前半です。
なんとなく予想はしておりましたが(笑)、
後半は明日にしたいと思います。
で、ビジネスにそもそも私は疎いのですが、
ビジネスには関係なさそうな「夫婦別姓」問題にも
この「タテ・ヨコ」は役立つのですね。
ということで、
日本は「エビデンスなき精神論」がまかり通る
島国なのだと改めて思い知らされました。
すでにお知らせしましたが、
出口治明さんの本を読もうと思ったきっかけは、
小島慶子さんの『さよなら!ハラスメント』からでした。
このことを今一度思い出したいと思います。
明日の後半部分ですが
■ユニコーン企業はわずか3社
■必要なのは「女性・ダイバーシティ・高学歴」
という内容で紹介します。
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お付き合いいただき
ありがとうございました💛