飯島晴子

多種多様なモノローグ俳句

 

 

え、それはね、わかっていますよ。

一流の俳人がポツリとつぶやいた言葉だからこそ

俳句として成り立つというものです。

 

でも、この普段着っぽいモノローグ、

これが俳句なら

だれも詠めるんじゃないかと勘違いしそうです。

 

それほど飯島晴子さんの俳句は

親しみやすい。

 

そしてまた、

 

ああ、やはり深く、カッコイイのであります。

 

では、どうぞご鑑賞くださいませ。

(※今回もひらのこぼ氏の著作から引用させていただきました)

 

 

■しみじみと自分に言い聞かす。

たんぽぽの絮吹くにもう息足りぬ  (絮=わた)

             *

雪兎断り下手といふことか

 

 

 

■「まあそれはそうと」と気分を切り換える

伊勢に来たからは薄暑の伊勢うどん

             *

貧相な山茱萸これはこれで好き  (山茱萸=さんしゅゆ)

 

 

 

■なにかに毒づく

きつねのかみそり一人前と思ふなよ

            *

金柑のどことなく気に障りけり

            *

葛の花来るなと言つたではないか

 

 

 

■「あらなんとまあ」という驚き

初夢のなかをどんなに走つたやら

            *

金屏風何とすばやくたたむこと

            *

蓑虫の蓑あまりにもありあわせ

 

 

 

■鷹揚に構えて&ふてくされ

夏鶯さうかさうかと聞いて遣る

            *

さしあたり坐ってゐるか衛見て  (衛=ちどり)

            *

飯どきや亀の鳴かうと鳴くまいと

 

     *   *   *   *   *

 

飯島晴子さん(1921-2000)は、

19歳で父を、49歳で母を、65歳で夫を失います。

 

商社員だった父の亡き後も、

あたかも生きているように父の句を作りました。

1970年、49歳のとき、以下の一句を詠みます。

やっと父死ぬ晩夏の梅林

 

父の死から30年経って

「やっと」その死を受け入れられたのかもしれません。

 

            *

 

飯島晴子さんの句。

私は蓑虫の句が好きです。

 

ほんとにね、蓑虫って

そこらへんにあるもので

蓑を作るのですよ。

 

洗濯ものを干していたら、その糸くずも

ちゃんと蓑に取り込んでいたりして…(笑)

 

そして風にゆれているんですよ。

 

 

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お付き合いいただき ありがとうございました💛