この時季「蛍」つながりで
■昨日、
そっときて昼蛍のゐるといふ
という句を紹介しました。
作句者のお子さんか、そっと近づいて来て
「蛍がいるよ」って教えてくれる。
どこ、どこ? あ、見つけた!
…と、そのときです。
葉陰にかくれていたその蛍が
急に、
ゴマ粒のほどの口をひらいて
あなたに向かって
こう言ったらどうします?
じゃんけんで負けて蛍に生まれたの
「あ、じゃんけんで…、負けたのね…」
突然の展開に
そういうしかありません。
蛍のこのセリフ、
実は、池田澄子さんの俳句なのです。
池田澄子さんが52歳のときの初句集『空の庭』(1988年出版)に
おさめられている一句です。
なんとも鮮烈な一句!
■ウキペディアによると、
池田 澄子(いけだ すみこ、1936年3月25日 - )は、俳人。
生活の周辺をややアイロニカルに眺めた口語的な文体の俳句を得意としながら、
生の孤独、戦争など重厚なテーマを詠んだ句も多い。
代表句に
「じゃんけんで負けて蛍に生まれたの」
「ピーマン切って中を明るくしてあげた」
「前ヘススメ前ヘススミテ還ラザル」など。
■惹かれますね。ものすごく。
ネット上にもう少し池田澄子さんの句を
見つけましたので、紹介します。
夕月やしっかりするとくたびれる
*
永遠に泣いていたいの心太
*
山法師捻挫と恋は長引くぞ
*
性格のよからんいそぎんちゃくぴんく
(以上『たましいの話』から)
夏落葉どこに居ようと年をとる
*
山椒魚ついつい山椒魚を産み
*
軽い筈なき白鳥を見送りぬ
*
初恋のあとの永生き春満月
*
青嵐神社があったので拝む
(以上『ゆく船』から)
■池田澄子さん、その生年から
敗戦の玉音放送を実際に聞いた記憶をお持ちだといいます。
雁や父は海越えそれっきり
*
泉あり父の若死以前から
*
玉砕の島水筒の腐りがたき
*
茄子焼いて冷やしてたましいの話
* * * * *
■で、最初の
じゃんけんで負けて蛍に生まれたの
の句に戻るのですが、
たかがジャンケンですが、
ジャンケンにもルールがあって、
それに従うしかないという
非情さがどこか伺われます。
逃げられないのです。
ついつい連想してしまいます。
やさしい口語でありながら、
スッとアイロニカル。
深掘りしたくなる池田澄子さんです。
*
■どどっと俳句を掲載すると、
満腹気分になるかと思いますが、
どうか、ゆっくりと
御消化くださいますよう
お願い申し上げます。
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お付き合いいただき ありがとうございました💛