この記事のポイント:

―一般的な職業観だけで適当に「将来」「職業選択」に関する、人の人生を左右する発言をする人の意見に惑わされないこと。対外の人は間違った意見しか言わない、貴方のことを知らないし、知ろうともしていないから。

ーなるべく「本質」で物事を俯瞰できる、世間の仕組みもよくわかっている様なアドバイスをくれる人を探すこと。

―世間的に評価される仕事や、就職などの決められたレールに違和感を感じたら、その違和感ときちんと向き合う事で、合わない仕事や職場に迷い込んでしまうリスクを減らす。

 

これまでのキャリアを振り返ってみると、いくつかの重要なターニングポイントがありました。あの時、あの場所で(♪小田和正)、判断を間違っていたら、きっとすごく不幸になっていただろうな、と思う転換点。私は、自分の好きなもの、気持ちの良い人、気持ちの良い環境で仕事ができないと、心身に異常を来しやすいタイプの人間です。そういう人が「自分にあった仕事」を見つけるには、やはり自分の「好きなこと」や自分の性格・性質にとことんこだわってキャリアを考えることが大事です。

 

一番よくないのは、「世間一般」―親や、学校の先生、メディアなどーで一般化された「仕事」に対する固定観念と先入観に流されること。特に、大学教授という人種には、旧態依然としたシステムにのさばっている上にビジネスの世界を全く知らない昭和モンスターズがたくさんいるので、注意が必要です。

 

進路に迷った時こそ、あなたの「本質」を俯瞰して見てくれる人のアドバイスにのみ耳を傾けてください。では「本質」を見れる人とそうでない人のコメントはどうやって見分ければいいのでしょう?

 

判断の基準は、その人の言葉が、

 

迷いから生じる心の重しをふわっと取り去ってくれるかどうか

です。

自分の将来やキャリアへの悩みは、大抵の場合、自分が本当にやりたいことがよくわからないことから生じます。よくわからないのは、それを定義するどんぴしゃりの言葉や職業が見当たらないか、世間的に「良い職業」とされる固定観念に自分が惑わされているからです。そして「世間的に就いた方がいいと言われている職業」と、自分が心の底から本当にやりたいと思っていることの間に「乖離」があるときに落ち込むのです。

 

大学時代、私も悩んでいました。大学の先生方には、自分の「進路」についてこんな風に悩みを打ち明けていました:

 

「作家にもなってみたいし、批評もやってみたいし、ジャーナリズムも気になるし、研究もやってみたい。詩も書いてるし、翻訳も楽しいし、だからいろんなバイトをやって実際にライターや翻訳、通訳でお金をいただいていている」

 

ある著名な大学教授の先生(日本人)からこんなことを言われました:

 

「どれも全然違うじゃないか、それぞれなり方も、全然違うし、いったい何をやりたいのか支離滅裂でわからない、ふらふらして非常に心配だ。どれか一つに絞らないと路頭に迷うよ」

 

その発言にショックを受け、さらに深く悩んだ私は、当時その大学に招聘されていた、海外の著名なアーティストに相談してみました。大学から頼まれて、私は彼女の通訳兼アシスタントとして、一緒に過ごしていたのです。その彼女の、大学教授の発言への反応は:

 

“That’s bullshit.”

 

直訳すると「そんなんクソくらえだ」という感じでしょうか、要するに「そんなくだらない言い分あるか」てな感じです。

 

彼女は、教科書にも載っている様なアーティストで、ふとした会話に出てくる人物交流などもぶっ飛びな内容だらけで、如何に「世界的な一流人材」なのかが痛いほど伝わってくる人でした。

 

たとえば私が

「日本って◯ール・◯ースターがすごい人気なんですよ~」と言うと、

 

「ああ、◯ールね。めちゃ仲いいわよ、彼ってめっちゃチャーミングなのよ~」

 

 

とか、「◯リップ・◯ラスが気になるんですけど」というと、

 

「あ~◯~。あの人あんなに有名になっちゃったけど酒飲むとろくでなしでさぁ~」

みたいな。

ま、マジすか…みたいな。

 

そんな感じの


グローバルな一流人は、物事を「本質」でしか捉えない


のである、ということを、彼女と過ごした夏学期でとくと学びました。それってどういうことかというと、

・「世間一般」で言われていることは完全にスルーし、自分の経験と知識と、研ぎ澄まされた分析力、それも受験勉強では到底獲得できないような、天才的かつ感覚的かつ感性的な分析力で、物事を判断するということ。

・利害関係や、しがらみにも全くとらわれず、自分の「本当の声」に耳を傾け、自分のことや他人のことをよく観察し、考え、判断する


ということです。凡人も、できればなるべく真似をすれば、間違った判断を避けられます。

さて、そんな世界的な天才に進路相談した結果、言われたことは:

 

「そいつの言っていることの方が支離滅裂よ。あなたの言っていることはどれも一本筋が通っているじゃない。あなたがなりたいこと、そしてすでにやっていることは、全部“言葉=Word”に関わることよ。あなたがやりたいのはWords=言葉なのよ。そしてあなたととても密な時間を過ごさせていただいた私が太鼓判を押すわよ。あなたは“言葉”に対してとても鋭い、スペシャルな感性を持っているわ。だから言葉に関わる仕事すべてに惹かれるのよ。もうあなたは道を見つけているのよ。そのまま進めばいいじゃない。人間が付けた仕事の“名前”なんて気にする必要は無いのよ。あなたはあなた自身の、あなただけの“言葉”を紡いでいけばいいのよ」

 

いかがでしょう。「なりたい仕事って何ですか?」と問われたときに、「言葉」って答えると、それは「答えになってない」と言われてしまいますよね。でも、そんな社会的常識なんて、実は本当に「クソくらえ」でございますよ。そんな狭い考え方でいるから、心が苦しくなっちゃって病気になっちゃうんです。「言葉」が好きなら、「言葉を仕事にしています」と堂々と言っちゃえばいい。

 

あれから二十数年。今、私は「言葉」にひたすらこだわり続けてきた結果、とても幸せな場所から地平線を見渡しています。あの時、「天才」が見抜いた私の「本質」を的確に表現する言葉は、今まで幾度となく私を救ってくれました。「進路」や「仕事」で悩んだ時こそ、あなたの「本質」を掘り下げることがあなたを救ってくれるはずです。


(つづく)。

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