この記事のポイント:
・派遣やフリーランスから正社員になるのは人手不足と産業構造変化が起きている今が絶好のチャンス。
・日本では、よほど稼いでいない限り、フリーランスや派遣よりも正社員の方がメリットが大きい
・派遣や契約で仕事をしていて「正社員は無理」と諦めているのはもったいない。
・自分の「スキル」を見定めて、それが求められる会社を探してみるのが良い(こちらは次回記事以降)

あなたは今、どんな立場でお仕事をされているでしょうか?
中小企業の正社員、派遣社員?
役所など公共機関の正規職員、契約や嘱託職員?
大手企業の正社員、派遣?

もし雇用形態が正社員ではなく、正社員になりたいと思っていたなら、今がチャンスです。理由は、二つ:
1 日本は空前の人手不足だから。
2 雇用主の多極化と多様化: 中小企業がダイレクトにグローバル市場に進出している今、人材の多様化とハイスキル化が加速し、これまで大企業向きだった人材の活用先が増えている。外資系も、中国リスク低減のため、これまでになく日本進出や、日本法人強化に積極的。
だから、諦めかけていた方も、ぜひ思い切ってチャレンジすることがおすすめです。


派遣、契約、嘱託などの短期や限定された期間の雇用契約ではなく、、長期の雇用契約を結ぶ人を「正社員」と呼びます。日本はOECD諸国の中でもこの正社員を守る規制が一番厳しい部類。健康保険や厚生年金も充実していて、正社員が享受するメリットはそうでない場合に比べて非常に大きい。
特に、就職氷河期に社会人となった30代後半〜40代後半の世代は、最初の就職がうまく行かず、以来派遣契約での仕事を続けているという方が多いとされています。その中の多くの方が、正社員となった同年代よりも、これまでの累積賃金は大きく差が出ているケースが大半を占めるはずです。

実際に正社員でない立場で働くと、ある程度現場で経験を積んで行く中では、やはり組織の中にいないと大きな仕事はやりにくいし、大きな組織の中では、正社員とフリーランスや派遣の間に歴然とした差があります。 

一方サラリーマンは、所得税でがっぽり年収を持って行かれます。フリーで継続的に稼げる目算があるならフリーの方が良い場合もあるでしょう。しかし、正社員一人を雇うために会社が負担するコストは年俸の1.5〜3倍と言われていますから、ある程度の元は取れていると考えることもできます。

たとえば、フリーランスで、ある程度の経費があり、10%の源泉徴収も全て戻ってくるとして、月収が手取りで100万、年間1200万円あったとしましょう。
同じ手取りをサラリーマンで得るためには、最低でも年収1700万は必要です。
その年収の差額の500万は大体税金で持って行かれるわけですが、会社の負担は最低でも1000万円はあるとすると、雇用の安定や福利厚生といった正社員メリットで埋め合わせられていると見れば、500万の所得税を払っても、お釣りがある位と考えることもできます。

しかも、日本では人をクビにすることはほぼ不可能に近い。これが実は、日本で正社員であることの最大のメリットであることを多くの人は認識していません。

TwitterやGoogle社の日本法人が、グローバルスタイルの人切りを日本でもやろうとして、批判されました。

米国を含め他国では、会社がクビだといったらクビです。
一方、日本国の労働契約法第16条では「解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合」は認められていません。

客観的に合理的な理由を揃え、かつ社会通念上も相当と認められるためには、多分に主観的な部分も多くなります。
だから、解雇案件がこじれると、よく法廷闘争になり、決着するまで長年、機能していない社員に給与を払い続けるハメに陥る可能性があるので、日本の企業は「解雇」という言葉を使うことを極力避けます。これは、同じ法律が適用される外資の日本法人も同様。

このため「日本では人をクビにすることは不可能」という前提で、管理職も人事部も経営陣も考えて行動しています。
たとえば、イーロン・マスクによって他国では解雇されているような人材も、日本の旧Twitter社では、ある程度の退職金を積まないといけないので、それが提示されるまで踏ん張っている人がたくさんいらっしゃると聞きます。これも、日本の労働契約法あってのこと。マスクは解雇したくても日本の法律ではできないからこそ起きている現象です。ある意味理不尽な形で突然マスクに解雇されてしまった他国の同僚に比べれば、日本の旧Twitter社員は日本の法律のお陰で非常に安定しているのです。

だからこそ、「正社員」を雇う時にはある程度慎重にもなるし、正社員の数を極力限定して、可能なところは、半年などの単位である程度短く雇用期間をクライアントが設定可能なため、予算カットの必要性が浮上した際に調整が可能な派遣社員で賄いたい、と考える。故に「基本的にクビにならない正社員」の人たちのそばで働く非正規雇用の方には、大きな感情的スティグマが生じてしまうのかもしれません。

最近、私の会社では優秀な派遣社員の方はどんどん辞めて行くという現象が顕著です。というのも、今はどの業界も本当に人手不足だから。特に外資系の派遣社員の方は、英語力もあることが普通だったりするので、規模は中堅だけれど、グローバル事業を拡大している日本企業からの引き合いが強い。

うちの会社に、それまではずっと正社員だったけれど、前職でパワハラがあって、とにかく早く転職したいととっさに応募したのがうちの会社で、それがたまたま派遣契約だった、という優秀な方がいました。仮にAさんとしましょう。

彼女は、派遣という立場になるまでは、あまり雇用形態が正社員であることを問題視していなかったそうです。それよりも、パワハラ職場からとにかく早く解放されたいという思いが強かったのでしょう。
ところが、実際に初めて「ハケン」になってみると、立場の世知辛さを意識して深く悩む様になりました。たとえば、全社員が早上がりできる日でも、社員なら給料は減らなくても、時給で計算される派遣社員の方の給与は減額されたり。

このAさんのお話を起点に、次回は派遣という立場のメンタル面の辛さと、そこからどうやって自分の力で切り拓いて行くかについてお話しします。

(この記事の続きは↓)

~このブログを愛読してくれている友人から「面白いけど長い」との指摘を受け、それは改善すべき点と思っていたので、毎回1600〜1800字を目安、上限は2000字にすると決めました~