月・静かの海に巨大な「地下空洞」が存在 将来の基地建設の可能性も
Forbes JAPAN
24/8/8(木) 10:30配信

NASAの月周回探査機ルナー・リコネッサンス・オービター(LRO)が収集したレーダー観測データの分析により、月面で知られる最も深い洞窟の可能性があると考えられる地下空洞の存在が明らかになった。この空洞には、直径約100mの「天窓」のような入口がある。

将来の月面基地建設の候補地となる可能性があるこの空洞は、月面の平原「静かの海」に位置している。55年前の1969年7月21日に初めて人類を月面に到達させたアポロ11号の着陸地点の近くだ。

■天井の崩壊

専門誌Nature Astronomyに掲載された論文では、イタリア・トレント大学などの研究チームが、静かの海の縦穴に関する詳細について報告している。月には、このような穴が約200個存在する。月面の縦穴は、洞窟や溶岩チューブ(溶岩洞)に通じる入口となる開口部の可能性がある。溶岩チューブは、地下の溶岩流が流れ出して空洞ができる場合に形成される。縦穴は、溶岩チューブの天井の一部が崩壊する際にできると考えられている。このようにして内部が直接露出している穴は、天窓と呼ばれる。月面にある穴200個のうち、16個ほどが溶岩チューブに通じているとみられている。

■知られている最も深い穴

今後解明すべき点は、静かの海の縦穴から通じる洞窟や溶岩チューブが正確にどれくらいの大きさがあるかだ。これまでに知られている最も深い縦穴のように見え、垂直の壁や張り出した壁と、傾斜した床面を持っている。研究チームの推定によると、穴の深さは約130~170m、地下部分の長さが約30~80mで幅約45m。穴から地下空洞への到達は可能と考えられている。

月の穴の実態解明を可能にするかもしれないのが、欧州の探査プロジェクト「ルナーリーパー(LunarLeaper)」だ。跳躍で移動するロボットを天窓に到達させ、内部がどうなっているかを観察する初めての機会を科学者に提供する。これもLROによって発見された、嵐の大洋の西部にあるマリウスの丘に位置する縦穴を調査対象とするこのプロジェクトは、洞窟もしくは溶岩チューブの天井が崩壊した原因の究明と、大型の探査車や宇宙飛行士によるさらなる調査が可能かどうかの解明を試みる予定だ。

天然のシェルター(避難所)を宇宙飛行士に提供
■天然のシェルター

月の平原には多数の火山洞や洞窟が存在する可能性があり、その一部は天然のシェルター(避難所)を宇宙飛行士に提供できると、今回の論文は示唆している。これが重要になる理由は、月面の宇宙飛行士が有害な放射線や極端な温度、微小隕石などにさらされるからだ。

LROのデータを用いた過去の研究では、月の表面温度が昼間は最高127度まで上昇し、夜間はマイナス173度に低下するのに対し、月面の穴と穴から通じている可能性のある洞窟や溶岩チューブは熱的に安定で、17度前後の快適な温度に保たれると考えられることが判明している。

■火星の穴

火星の表面にある同様の縦穴を捉えた画像が最近、ソーシャルメディア上で拡散された。この穴の入口から通じている可能性のある洞窟は、未来の宇宙飛行士のシェルターになる他、地球外生命が存在する可能性も示唆されている。NASAの探査機マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)が2022年5月15日に撮影したこの画像には、火星の赤道近くに位置するアルシア山の山腹にある、直径わずか数mの穴が写っている。アルシア山は、現在は死火山となっている3つの巨大な盾状火山の1つだ。MROの観測ではこの他にも、2009年や2020年に発見されたものを含め、同様の縦穴が多数見つかっている。                   Jamie Carter

(引用終わり)
将来的に月面に有人の宇宙基地を建設する際には、危険な放射線や極端な気温の変化や微小隕石から宇宙飛行士を守る為にも、地下に避難所が広がる宇宙基地を建てるのが現実的となります。

地球から近く、人類が長期生存を実現できるのは月面、それも月面地下空洞しかないでしょう。

水資源獲得のめどもついたし、エネルギーもほぼ無尽蔵に手に入る。
月面都市が新たな人類社会の最前線となろう。