イージス・アショア代替艦こと「イージス・システム搭載艦」の新しいイメージ絵が公開
Yahoo!ニュース
24/7/12(金) 17:47

JSF軍事/生き物ライター

 7月12日、防衛省から令和6年(2024年)版「防衛白書」が発表されました。その中でイージス・アショア代替艦こと「イージス・システム搭載艦」の新しいイメージ絵が公開されています。(令和6年版防衛白書の278ページに「図表Ⅲ-1-4-5 イージス・システム搭載艦の能力」が掲載)

令和6年(2024年)版「防衛白書」より「イージス・システム搭載艦」
イージス・システム搭載艦の能力
 SPY-7レーダー

SPY-1の5倍の追尾能力によりロフテッド軌道や同時複数の弾道ミサイルに対処
 CEC

他艦艇などが追尾した対空目標をリモートで射撃・誘導が可能となる共同交戦能力(CEC)を付与
 SM-3ブロックⅡA

高い迎撃能力を誇る弾道ミサイル迎撃用誘導弾を搭載
 SM-6

巡航ミサイルなどに加え極超音速滑空兵器(HGV)に対し、ターミナル段階で対処
 VLS

各種能力強化に伴い128セルに増強(まや型は96セル)
HGV対処(滑空段階)のための将来装備品への拡張性を付与
2032年以降搭載を予定する装備品(拡張性)
 12式SSM能力向上型

対水上戦において、相手の脅威圏外から相手艦艇に対処
 トマホーク

島嶼防衛などにおいて、相手の脅威圏外から地上部隊に対処
 高出力レーザーなど

ドローンによる飽和攻撃に対処
略語の説明
CEC:Cooperative Engagement Capability、共同交戦能力
VLS:Vertical Launch System、垂直発射システム
HGV:Hypersonic glide vehicle、極超音速滑空体
SSM:Surface-to-surface missile、地対艦/艦対艦/地対地/艦対地ミサイル

「イージス・システム搭載艦」新旧イメージ絵の比較

上:令和6年版防衛白書(2024年7月12日)、下:令和6年度概算要求(2023年8月31日)
解説:イージス・システム搭載艦の新旧イメージ絵から設計変更の比較

HGV対処(滑空段階)のための将来装備品への拡張性を付与
 「イージス・システム搭載艦」の令和6年版防衛白書で気になった記述はVLS(垂直発射システム)の「HGV対処(滑空段階)のための将来装備品への拡張性を付与」という部分です。これは日米共同開発の極超音速兵器迎撃ミサイルである「GPI(滑空段階迎撃誘導弾)」を指すのでしょうか?

GPI(滑空段階迎撃用誘導弾)のMDA提供イメージ図が公開(2023年12月23日)
日本の極超音速兵器迎撃ミサイル「HGV対処用誘導弾」(2023年3月20日)
 それとも日本独自で開発する予定の巨大な「HGV対処用誘導弾」を搭載できるように専用の大型VLSの空きスペースを確保しておくという意味でしょうか? 

 というのも、日米共同開発のGPIは既存のイージス艦用のMk.41VLSに搭載可能なサイズで開発する予定と見られるので、「将来装備品への拡張性を付与」という説明とGPIは合わないように思えます。それともこの拡張性とはソフトウェアの対応の意味なのでしょうか? しかし設計段階で拡張性を付与しておくという意味だと、VLSそのものの話をしているように思えます。

12式SSM能力向上型(12式地対艦誘導弾能力向上型)の艦発型
 なお「12式SSM能力向上型」とは12式地対艦誘導弾能力向上型のことで、イージス・システム搭載艦には艦発型(艦艇発射型)を2032年以降に後日装備する予定となっています。関連:12式地対艦誘導弾能力向上型の試作ミサイルが初公開(2024年7月12日)

 SSM(Surface-to-surface missile)とは「表面から発射し表面を攻撃するミサイル」の意味で、この表面とは地上や海上を指します。地対艦/艦対艦/地対地/艦対地の全てを含む範囲の広い言葉で、12式SSM能力向上型(艦発型)の場合は艦対艦ミサイルに分類されます。

 2隻建造を予定しているイージス・システム搭載艦は2027年と2028年にそれぞれ竣工予定となっています。完成時点では世界最大のイージス艦となる予定です。


イージス・システム搭載艦の新旧イメージ絵から設計変更の比較
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24/7/12(金) 23:23

JSF軍事/生き物ライター

防衛省の資料より「イージス・システム搭載艦」新旧イメージ絵の比較

 7月12日、防衛省から令和6年(2024年)版「防衛白書」が発表されました。その中で「イージス・システム搭載艦」の新しいイメージ絵が公開されています。(令和6年版防衛白書の278ページに「図表Ⅲ-1-4-5 イージス・システム搭載艦の能力」が掲載)

 この記事では防衛省の資料から「イージス・システム搭載艦」の新旧イメージ絵から設計変更の比較を行います。なお旧イメージ絵は年代によって複数があり、今回の比較用には最新のイメージ絵の一つ前の旧いものを使用します。

「イージス・システム搭載艦」新旧イメージ絵の比較
上:令和6年版防衛白書(2024年7月12日)、下:令和6年度概算要求(2023年8月31日)
新旧イメージ絵の変更点

艦首の上面が丸くなった→もがみ型護衛艦に似た設計変更
艦中央のSSM発射筒が剥き出し式から箱型の形状に変更
艦後部にMk46に似た対水上艇用遠隔操作機関砲を搭載
電子戦装置や衛星通信装置など細部の装置の描写を追加
艦尾のLSO(ヘリコプター発着艦指揮所)の位置を修正
参考:ロッキード・マーティンのイージス・システム搭載艦イメージ絵

ロッキード・マーティンよりASEV(イージス・システム搭載艦)のイメージ絵(2024年4月4日)
SPY-7 Radar On Japan’s Aegis System Equipped Vessel Achieves First Track Of Objects In Space | Lockheed Martin

イージス・システム搭載艦はロッキード・マーティン製SPY-7レーダーを採用しており(イージス・アショア選定時に購入したもの)、同社が日本防衛省の旧い方のイメージ絵をベースに独自に細かくディティールを追加して作成したイメージ絵。
艦首の上面が丸くなった→もがみ型護衛艦に似た設計変更
防衛省の資料より「イージス・システム搭載艦」新旧イメージ絵の比較
 艦首の上面が丸く変更されています。これは海上自衛隊の最新鋭護衛艦「もがみ」型と同じ特徴となります。

参考:護衛艦「もがみ」の丸い艦首

海上自衛隊の公式Xより護衛艦「もがみ」の引渡式・自衛艦旗授与式より
艦中央のSSM発射筒が剥き出し式から箱型式に変更
艦後部にMk46に似た対水上艇用遠隔操作機関砲を搭載
防衛省の資料より「イージス・システム搭載艦」新旧イメージ絵の比較
 旧イメージ絵のSSM発射装置は発射筒が剥き出しの通常の設計でしたが、新イメージ絵ではSSM発射装置らしき箱型の構造物が配置されています。(※SSMとはここでは艦対艦ミサイルの略)

 また新イメージ絵では艦後部の側面にMk46に似た対水上艇用遠隔操作機関砲らしき装備が見えます。旧イメージ絵では同じ場所に丸い構造物が配置されていますが、ディティールが荒いので砲身は見えていません。ただし旧イメージ絵を元にしたロッキード・マーティン社のイメージ絵では同じ位置に機関砲を確認できます。

参考:ロッキード・マーティンのイージス・システム搭載艦イメージ絵

ロッキード・マーティンよりASEV(イージス・システム搭載艦)のイメージ絵
 ただしこちらの艦後部の側面に置かれた対水上艇用遠隔操作機関砲はMk46とは全く似ていません。また艦中央部のSSM発射装置は発射筒が剥き出しの形式です。

参考:コンテナ式SSM発射装置
(9)12式地対艦誘導弾能力向上型(艦発型)、17式艦対艦誘導弾及び90式艦対艦誘導弾の設計及び製造ができる能力を有し、かつ、当該機器に関する技術 資料を利用することができること。
(10)哨戒艦等のSSM未搭載艦におけるコンテナ式SSM発射装置の装備に関する技術的検討ができること。

出典:令和6年度「コンテナ式SSM発射装置に関する技術調査」の契約希望者募集要項:海上自衛隊補給部(令和6年5月16日)

※海上自衛隊の計画している「コンテナ式SSM発射装置」はアメリカ軍のロッキード・マーティン製Mk70VLSとコンセプトが同様の発射装置である可能性が高い。ただしイージス・システム搭載艦用の箱型SSM発射装置と関連があるかは不明。

参考:ロッキード・マーティンのMk70VLS。Mk41のコンテナ型

ロッキード・マーティンよりMk70VLSコンテナ型発射機

(引用終わり)
男の夢が具現化したような海自最大最強の海上戦闘艦だ。
ミサイル満載で、対水上戦、対潜、対空、対地だけでなく宇宙空間の衛星や弾道弾も攻撃できる。
さらにレールガンやマイクロウェーブ砲まで搭載すれば、今はやりの戦闘用ドローンにも対抗できる。

仮想戦記小説の傑作「旭日の艦隊」の主役格超戦艦「日本武尊」を彷彿させます。