安藤優子×中北浩爾「女性総理は自民党の救世主か」
中央公論
24/6/10(月) 6:30配信

 岸田内閣の支持率が低迷する中、女性総理の待望論が囁かれている。果たしてそれが意味することとは。なぜ女性総理は一度も誕生しなかったのか。『自民党の女性認識』の著書がある安藤氏と、現代日本政治が専門の中北氏が論じる。
(『中央公論』2024年7月号より抜粋)

アウトサイダーが総理になる日
――4月28日に投開票が行われた衆議院議員補欠選挙で、自民党は現職議員の逮捕や裏金問題で出馬を断念した「不戦敗」を含め、3選挙区すべてで敗北しました。岸田文雄内閣の支持率も低迷を続ける中、ポスト岸田をめぐる動きも漏れ聞こえてきています。またここに来て、報道各社の世論調査では次期総理候補として、上川陽子外相が、石破茂元幹事長や小泉進次郎元環境相に次ぐ3位に急浮上しています。

中北》安藤さんは『自民党の女性認識』で、自民党が時に女性議員のクリーンさをイメージ戦略として利用しながら、政権および党運営の中心からは女性を排除してきた歴史的経緯を明らかにしつつ、上川さんや小池百合子東京都知事といった女性政治家のキャリアパスも分析しておられます。上川さんにはどのような印象をお持ちですか?

安藤》1月に麻生太郎副総裁が講演で「俺たちから見てても、このおばさんやるねえと思った」「そんなに美しい方とは言わんけれども」と外相としての上川さんのことを評して、良くも悪くも注目を集めてしまいましたね。麻生さんという人は誰かをストレートに褒める方ではないので、ある種の照れ隠しだったのだろうとは思いますが、まったくもって余計な発言でした。それに対して上川さんが「どのような声もありがたく受け止めている」と受け流したことが、「大人の対応だ」と評判になったり、「毅然と反論してほしかった」と失望を生んだりもしましたが、あれは男性社会で踏ん張ってキャリアを積んできた女性に典型的な態度だったと思います。

 私もマスコミ業界というゴリゴリの男性社会で生きてきた人間なので、「いちいち波風を立てる面倒くさい女」とみなされることでどれほど仕事がしにくくなるかは、骨身に沁みています。私は「ペット化」と呼んでいるのですが、表面的にはおじさんたちに尻尾をパタパタと振って可愛がってもらいながら実績を積んで、派閥のボスや財界の大物から一本釣りで候補者に引き上げられる、そのような来歴の女性議員はかなり多いと思います。

 ただ上川さんの場合、ペットになって可愛がられてという処世術とは、かなり異なるキャリアを積んでこられた方ですよね。

中北》2000年の衆院選の際に自民党の公認候補がいる静岡1区で出馬を強行して、党から除名され、苦しい選挙戦を制して初当選した後、復党しました。男性組織の壁を突破して国会議員の座をつかんだ気骨のある人です。

安藤》三菱総合研究所で研究員を務めた後、フルブライト奨学生としてハーバード大学ケネディ・スクールで学んで政治行政学修士号を取得し、民主党上院議員の政策スタッフを務めたりと、政治家になることをゴールに据えて着実にキャリアを積んできた方ですから、ちょっと容姿をネタにされたくらいではビクともしないのでしょう。

中北》安藤さんの著書では、大平正芳の「政党は大きなイエ」という発言を基に、自民党の体質を「イエ中心主義」と分析しています。その中では上川さんはアウトサイダーでしょうか?

安藤》アウトサイダーですね。

中北》女性であり、かつ世襲議員でもない、と。

安藤》スポーツ選手や芸能人、アナウンサーといったメディアで顔を売って引き上げられた人でもありませんから。麻生さんの発言がルッキズムの観点から批判されるのは当然ですが、上川さんにいち早くツバを付けて、自身がキングメーカーになろうとしているのではないかと疑いたくもなります。上川さんがこのまま誰のペットにもならないで、総理総裁まで上り詰めようとされるならば、私は内心では大応援団になってしまいますね。(笑)

 ただ、5月には静岡県知事選の応援演説での「うまずして何が女性か」発言がありました。ご本人は発言の真意とは違うとおっしゃっていますが、男性優位社会を実力でのし上がってきたという意識が、ごく普通の女性たちの感覚とのズレをどこかで生じさせていないかは、気になるところです。

「自助」と「共助」を担うのは誰か
中北》安藤さんは著書で、なぜ女性議員がここまで少ないのかという疑問から出発し、2018年に「政治分野における男女共同参画推進法(候補者男女均等法)」が成立して、国会議員や地方議員の選挙で男女の候補者が均等となるよう各党に努力義務を課してもなお、自民党が「明らかに『均等』の理念に背を向けた候補者擁立」を続けていることを痛烈に批判しておられますね。

安藤》研究する中でヒアリングをした自民党選挙対策本部の関係者は、「ダンナの世話をしながら選挙戦を戦える女性がどの程度いるか?」「選挙資金と一定の支持者がいないと難しい」と、明らかに均等法には否定的でした。女は母であり嫁であり、イエに従属して家族のケアを無償で行うべき存在である、という思想が55年体制から現在まで、ずっと底流してきたのだと改めて痛感しました。

中北》世襲議員でない限り、イエに従属させられている女性が地盤、看板(知名度)、鞄(資金力)の「三バン」を得る機会はそもそもないということですね。

安藤》本の基になった博士論文を構想した時も、今も、自民党批判の研究ではないのです。私自身もマスコミ業界で生きてきて、どうしてこんなに異物として扱われるのかずっと理解できなかったのですが、政界を取材してみてようやくわかったのは、公的領域たる男の世界に私的領域から女が侵入してきたことへのハレーションなのだということでした。

 この「女は家庭という私的領域をまず守るべし」という社会通念の源流を辿っていったら、石油危機による景気後退で頓挫した田中角栄の「福祉元年」構想に代わって打ち出された、伝統的なイエやムラによる自助や共助で国家による公助を小さくするというビジョン「日本型福祉社会」に行きつきました。これは女性が家庭をケアすることが前提になっています。現在まで続く自民党の女性認識のベースはここにあり、だからこそ菅義偉政権が「自助・共助・公助」を打ち出した時には、またここに戻るのかと驚きました。

中北》安藤さんご自身の経験がバックグラウンドにあるからこその問題意識が、自民党の根幹をえぐり出していて、非常に読み応えがありました。取材先である自民党からの反発はありませんか?

安藤》ないどころか、自民党議連での講演や意見交換会などに何度も呼ばれました。いかにも「キャッチ・オール・パーティー」(包括政党)を自認する自民党っぽくないですか?

中北》まさに。どんな異論もひとまず包摂し、エネルギーに変えようとする。本気で改心するかは別にして、そのあたりは懐が深いですよね。

安藤》本当にその通りだと思います。旧民主党が主張していたはずの子育てや社会保障の政策も、安倍晋三政権がいつの間にか自分たちの政策にしてしまった融通無碍さからすれば、私の本くらいは歯牙にもかけないんだろうなと感じました。

中北》安藤さんがお書きになった話題の書、そんなことはないでしょう。

安藤》前総務会長の遠藤利明さんも読んでくださって、「自民党が抱えている問題が端的に指摘されている」と褒めてくださりつつ、「女性議員を増やすためには、選挙戦を懸命に勝ち抜いた現職の男性議員に立候補を辞退させないといけない。現実問題としてそんなことは言えない」と、現職を外してまで女性候補を入れることの難しさ、非現実性を指摘されました。

「女性議員3割」の実現可能性
中北》岸田さんが党改革を公約にして2021年の総裁選で勝った後、自民党は「ガバナンスコード」を策定しました。私は外部有識者委員としてこれに関わり、出来上がって以降も、運用にあたるガバナンス委員会に参画しています。研究者として特定の政党色が付く懸念もありましたが、二つの理由から就任依頼を引き受けることにしました。

 一つは、今まさに岸田総理を窮地に立たせている「政治とカネ」の問題です。この問題は過去、自民党に大きなダメージを繰り返し与え、政権運営を停滞させる原因になってきました。国全体にとっても望ましくないので、「政治とカネ」の問題がなるべく起こらない仕組みを作りたいと思いました。

 もう一つは、安藤さんが言及なさっている、自民党に女性議員を増やすことです。この二つを内部から実現しようと考えて委員になり、しつこく発言してきました。

安藤》そんな経緯があったのですね。

中北》今回のパーティー券の裏金問題は、私にとって非常に残念です。女性議員についても、まだまだ不十分ですが、22年の参院選では自民党の比例代表の候補者の3割が女性になり、翌年には今後10年間で女性議員の比率を3割に引き上げる「基本計画」が、ガバナンスコードに基づいて作られました。

 ガバナンス委員会では遠慮なく発言してきましたが、それでも辞めさせられることはありませんでした。これはまさに安藤さんが経験されたキャッチ・オール・パーティーとしてのダイナミズムなんでしょうね。多様な意見を包摂し、内部で綱引きしながら少しずつ変化していく体質は、党首公選を公然と唱えた党員を除名処分にしてしまう共産党とは、対極にあるといえます。

安藤》私も選択的夫婦別姓議連で講演をしましたし、超党派フォーラムでも話をしました。茂木敏充幹事長が「女性議員3割は自民党が改革政党になれるかのメルクマール」と発言し、介護やベビーシッター、一時保育などの費用として新人衆院支部長に活動費100万円を支給すると明言したのも、おそらく本気でおっしゃったんだと思いますし、党内の共通認識にもなっていると感じます。

 選挙そのものが「三バン」を持つ男性現職に有利なシステムになっている中で「3割」を掲げるのは、名簿上の数合わせに過ぎないという批判があるのは当然ですし、このシステムを変えない限り本質的な改革にならないことにも同感ですが、一度でも名簿に載って選挙戦に晒されてみないと、女性候補者も戦い方がわからないという現実があります。だから「3割」が明言されたことは大きいと思っています。

中北》22年の参院選では自民党の当選者の20・6%が女性で、前回の17・5%から増加しました。比例代表の候補者の3割は、準備不足のまま数合わせで達成した部分が大きかったと思いますが、それでも「変わらなければ」という機運は間違いなくあります。

安藤》ただ、出馬した女性候補者からは、党からはまともに支援してもらえず、女性議員を増やす運動をしている民間団体からボランティアスタッフを出してもらったりしていたという話を聞きました。もちろん手厚い支援を受けた方もいるのですが、濃淡の差が相当にあるというのが実情で、そこの検証は必要かなと思っています。

中北》22年の参院選の比例代表に自民党から出馬して落選した英利(えり)アルフィヤさんが、翌年の衆院補選で千葉5区から出馬して当選しました。数合わせと見られた候補者であっても、一度出馬すると次に繋がるチャンスが生まれるということですね。10年間で3割という目標が党内で公式な目標になっている意味は、決して小さくはないのかなと思います。

安藤》ただ、2033年までに3割とすると、歩みは相当に遅い印象ではありますよね。

中北》その通りで、特に衆議院では達成は難しいと見ています。


(後略)

構成:柳瀬 徹

安藤優子(キャスター/ジャーナリスト)×中北浩爾(中央大学教授)

◆安藤優子〔あんどうゆうこ〕
1958年千葉県生まれ。上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科グローバル社会専攻博士後期課程満期退学。博士(グローバル社会学)。87年からキャスターとして活躍し、「FNNスーパーニュース」のメインキャスターなどを務める。著書に『自民党の女性認識』など。

◆中北浩爾〔なかきたこうじ〕
1968年三重県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学大学院法学政治学研究科博士課程中途退学。博士(法学)。専門は日本政治外交史、現代日本政治論。著書に『現代日本の政党デモクラシー』『自民党──「一強」の実像』『自公政権とは何か』『日本共産党』など。

(引用終わり)
上川外相は不埒な中共大使を叩き出して、日本国首相になるべきだ。
少なくとも、岸田が居座るよりはましだ。

女性総理は自民党だけでなく日本国の救世主となろう。

ポスト岸田に、世間受けしそうな女性総裁を担ぐというのは自民としてありそうな戦略です。メディアではやたら人気となっている石破氏を担ぐよりは現実的かと。というか、今は誰も引き受けたがらないでしょうから、上川さんが岸田首相から禅譲される形になれば、ご本人も周囲もイヤとはいわないでしょう。しかし女性の総理候補といえば高市さんも同じくらい有力なはずなのに、上川さんのみにスポットを当てる記事が散見されますね。なんだか意図的に触れないようにしている感じでやや気になります。

日本の政治の流れを根本から変えて、ジリ貧日本を立て直すには、女性総理誕生しかないと思う。今の自民党や公明党で女性総理誕生は相当困難で、ほぼ不可能だと思うが、今回の岸田内閣の金権政治に対する国民の反発や少子化対策への失望は、その流れを変えるかもしれない。自民公明維新では日本は確実にダメになると国民は明確に判断したと思う。ならばどうするのか。もう女性議員を増やすしかないが、今いる女性議員が自らその道を困難にしているのも事実で、それを解決するには、もっと質の高い女性議員を国民が選ぶしかない。前途は相当多難だけれど他に日本が再生する道は無い。

上川さんは世襲でもないし、他によくある有力ベテラン議員に可愛がられて引き上げられた感じもないし、総理になるかどうかは別にして、期待しています。今以上に色々発信して欲しい。その中で総理に相応しいかどうか見えてくればいいんじゃないの。

自民党の爺さん政治家は家父長制の名残が生きている時代に育っている(下手したら家父長制の憲法・民法の時代に幼少期を過ごしている)から、女性の下に付くのは嫌だという政治家も多いはず。
即ち、女の大臣は認めるが、女総裁・総理のもとで政治活動はしたくない人がものすごく多いはず。
女性総理が出るとしたら、それこそ、○○の娘を担ぐ場合。
即ち、自分は○○先生に世話になったから、その娘は、○○先生と一体だからという考えに達した場合。
だから、加藤鮎子・小渕優子と言った、超大物政治家の父を持つ女性政治家は出世しやすい。

安藤さんの考え方は、男社会の中でも堂々キャリアを積んできた女性こそ実力と才能があるというもの。これも一種の男社会中心主義でしょうね。

「女性の総理」って、日本では初めてのことだから物珍しさも手伝って「人寄せパンダ」にはなるよね。ただ、それだけのことだけれどね。

今の麻生&茂木体制が政局を起こせるとは思わない。このまま岸田政権で行ってかつて麻生政権が沈んだように沈む蓋然性が一番強い。

自民党は未だに男尊女卑があると思う。最近こそ登用してるが、総理については…。まして、バックにある某協会がいい顔しなさそう。

上川より高市だろ。