「補選で野党圧勝でも政権交代は起きない日本…日本の政治学者が語った理由」
中央日報/中央日報日本語版2024.05.07 07:58

日本の政界が揺らぎ始めた。4月28日に行われた衆院3補欠選挙で最大野党の立憲民主党が全勝し、岸田文雄首相はこれ以上、自民党の「顔」となり得ないという世論が高まっている。

それは世論調査を見ても明らかだ。4月下旬に実施された世論調査では「政権交代してほしい」(62%、毎日新聞)、「政権交代を期待」(52.8%、産経新聞)と政権交代を望む回答が過半数に上るほどだった。

しかし、日本の政治に詳しい専門家は「政権交代の可能性は非常に低い」と見ている。
なぜこうした乖離が生じるのか。
現在、日本の政界で最も注目を集める政治学者の一人である中北浩爾・中央大教授にその理由を尋ねると、世論が望むのは現在の与党から野党への政権交代ではなく、「与党内での政権交代」という答えが返ってきた。中北氏は「ポスト岸田」についての見解も示した。

--補選の結果はどのような民意の現れか。

今回は自民党にお灸をすえたということであって、立憲への政権交代を求める動きとは言い難い。世論調査をみても、自民が暴走しないよう与野党の勢力が拮抗した方がいいというところまでで、野党への政権交代は望んでいない。やはり現時点で立憲に政権を任せられると考えている国民は少数であり、多数は自民内での疑似政権交代を求めているように見える

--自民が唯一候補を立てた島根1区は立憲候補が大勝して注目されたが。

島根のような農村部でも自民の支持基盤が弱まっていることは確かだ。ただ、死去した細田博之氏は安倍派のパーティー収入の裏金化問題や旧統一教会との結びつきなどについて批判が強かった。これに対し、今回勝利した亀井亜紀子氏は元職で知名度が高かった上、父が元自民国会議員で保守系の支持を得やすかった側面もある

--補選直前のメディアの世論調査では、政権交代への期待感が過半数を超える結果が出ていた。それでも現時点で政権交代が起きる可能性はほぼないと言われるのはなぜか。

自民はずっと政権を担ってきており、政権担当能力があるとみられている。つまり、自民は安心できるブランドがあると多くの国民は考えている。一方、2009年に一度、国民は民主党(民進党を経て現在の立憲や国民民主党に分裂)に政権を託したが、うまくいかなかった。立憲の最大の課題は外交安全保障政策だ。民主党政権当時、沖縄県の米軍普天間飛行場の移設問題で米国と摩擦を起こしただけでなく、ロシアのメドベージェフ大統領の北方領土訪問、李明博大統領の竹島(韓国名・独島)上陸、尖閣諸島をめぐる中国との対立激化など、危機的ともいえる状況に陥った。しかも、民進党になって以降、日米安全保障条約の廃棄を掲げる共産党との野党共闘を進めた。しかし、ウクライナ戦争の勃発によって、日本国民は安全保障問題に一層敏感になっており、日米同盟強化への支持が明らかに強まっている。立憲への政権交代が見えてくれば、2015年に成立した安保法制をどうするかをはじめ、その安全保障政策への不安感が国民の間で高まるはずだ

--2012年に自民が政権を奪還してから12年がたつが、立憲は政権当時の総括を未だにできていないようだ。

政権から転落した後、民主は党内対立を恐れて総括できなかった。そのため、民主党政権のどの政策が正しく、どの政策が間違っていたのかという整理がなされず、安倍晋三元首相がしきりに口にした「悪夢の民主党政権」というイメージを払拭できなかった。政策に加えて重要なのは、民主党政権が社民党の連立離脱によって行きづまったことの総括だ。立憲が本気で政権を目指すのであれば、安全保障などで現実的な政策を打ち出すことに加え、安定した連立の枠組みを提示することが不可欠だ。

--9月に自民党総裁選がある。その前に岸田氏は解散をして総選挙で勝利し、総裁選での再選を狙っていたようだが。

今すぐ「岸田おろし」が起きないのは、遅くとも9月には総裁選があるのと、それに向けて「出る杭」になりたくないからだ。岸田氏は衆議院の解散はおろか、総裁選への出馬も難しくなってきた。自民党内や連立を組む公明党からも「岸田氏のままでは選挙は戦えない」と考えられている状態だ。現職の首相が自民党総裁選で負けたのは福田赳夫氏のみで、岸田氏は結局、名誉ある撤退を選ぶのではないか。総裁選に向けた動きが出てくるのは、6月末に予定される通常国会閉会後になると思う。衆議院議員の任期満了が近づくなか、「選挙の顔」になり得る総裁を選ぶことが至上命題となる


--ほとんどの派閥が解散した状態で迎える総裁選。どんな候補者が出てくるか。

2001年に総裁に選ばれた小泉純一郎氏のように、「古い自民党をぶっ壊す」と叫ぶような人が出てくる可能性もないわけではないが、総裁選は決選投票になれば国会議員票のウェイトが大きくなるので、それほど破壊的な人物は選ばれないのではないか。今のところ、上川陽子外相や石破茂元自民党幹事長が有力候補ではないかと思う。上川氏なら初の女性総理になるし、石破氏の場合は安倍氏に異を唱え続けた「脱安倍政治」というストーリーがある。両氏とも総裁になれば相当なインパクトがあり、時を置かずして衆議院解散に踏み切れば、自民、公明両党で過半数を維持する可能性は低くない

--韓国との政治制度や風土の違いは。

日本は議院内閣制だが、韓国は大統領制で、政治制度が大きく異なる。また、韓国では、今もある程度、支持政党に地域差があり、与野党がそれなりに均衡している面があると思うが、日本は全国的にほぼ自民一強だ。例えば全国の都道府県議会での自民の割合は2023年12月現在、約49%を占めているのに対して、立民は約9%に過ぎない。この差は大きい

中北浩爾 中央大法学部教授

1968年生まれ。東京大法学部卒。法学博士。専門は現代日本政治論など。著書に「自民党―『一強』の実像」「自公政権とは何か―『連立』にみる強さの正体」「日本共産党―『革命』を夢見た100年」など。

(引用終わり)
自衛隊廃止、日米安保条約破棄を党の公約にしている共産党を政権に入れる訳にはいかないでしょう。

中露からすれば、日本国が一時的でも混乱していれば、好き勝手出来ます。
台湾侵攻は、日本がいる限り不可能ですから。

野党は所詮、球拾い。
自民党は腐っても政権党。

この違いは大きい。
到底、今すぐ、一軍の自民党にとって代われる政党はいない。

今の日本の左派野党の最大の問題は、立憲民主の単独過半数ではなく「立憲と共産党などの共闘勢力の合計で過半数」になった場合の政権構想が示されてない事だと思う
良いか悪いかは別としても、自民と公明は「自公で過半数を取れば連立政権を組む」という事は明確にして選挙協力をしている
しかし立憲共産はそこを明確に語らず選挙協力だけしようとするから票だけが目的の野合と言われるのだろう
仮に立憲が閣外協力だけしか許さないつもりでも、共産党と合わせなければ衆院の過半数を維持できないとなれば実質的には連立と変わらない
野党は本気で政権を狙って共闘するなら「共闘に参加する全ての政党を含めた政権構想」を示すのが有権者に対する責任だと思うし、それをしないのは国民に対して不誠実だと思う

更に言えば参院は自公が過半数を握っており、現実的には自公とも協力しなければ何も出来ない政権になる事もしっかり考えた方が良い

基本的には、外交と安全保障に関しては、政権交代において大きな違いが無い事は前提条件なのでしょう。後は、コンサバティブとリベラルの関係。これは、米国も英国も同じ方向性であると思います。
日本の場合、外交と安全保障という意味で、立憲、共産、れいわ、社民の所謂左翼4党は、自民とから維持継承という事で不安定でしょうね。そもそも論で言えば、集団的自衛権を違憲と定義したのは愚策でした。
日本国憲法では、武力の行使と軍事力の保持を認めていません。ただ、自衛権の行使に関しては、国連憲章により認められている固有の権利であると主張している訳です。その国連憲章51条には、集団的自衛権を容認しています。
つまり、集団的自衛権を違憲とし個別的自衛権を合憲とする正当性はあまり無いのです。
集団的自衛権が戦争法案などという煽りもまた失敗でした。短絡的でしたね。
まあ、支持者を納得させるためには仕方なかったのでしょうが。

日本とイギリスの政治体制の違いは、自民党とイギリスの保守党がほぼ同じと言っていもいいが、労働党に当てはまる政党が日本に存在して来なかったからである。かつての日本社会党は社会主義を党是としていたし、民社党は今の国民民主党と同じどっちつかず。イギリスの労働党に近いのは社民党である。今後日本がイギリスと同じように政権交代を繰り返して行くのは、この先長い時間を要する気がする。

>労働党に当てはまる政党が日本に存在して来なかったからである

その一因は経済政策だと思います。
何故か日本の左派系野党やリベラル系野党には有効な経済政策を立案できる政党がありません。

ここがアベノミクスで国民の支持を得た自民党政権との大きな違いです。
しかも、これらの政党はアベノミクスの何が良かったのか、何を批判すれば良かったのか、いまだに有効な分析ができていない様子です。
これでは、たとえ政権獲得しても失敗する未来しか予測できません。

>日本社会党は社会主義を党是としていたし、民社党は今の国民民主党と同じどっちつかず。イギリスの労働党に近いのは社民党である。

社民党は旧社会党の左派の流れをくむ「空想的非武装中立論」でしょ。政権を取る能力もなければ、取る気もない。イラク戦争にも参加したブレア首相が政権を担った労働党とは比べるのも失礼でしょ。


>かつての日本社会党は社会主義を党是としていた

トニー・ブレアが出てくる前の労働党も、だいたい同じだと思うが。アトリー以来、労働党の基本路線は基幹産業国有化、医療費無料化(これは、第二次大戦の戦災という背景もあってのことだが)。

自民党の経済政策が、社会民主主義的だったから。小泉政権以降、方向転換した。しかし、それでも社民的要素が残っている。改憲に消極的だったのも、踏み込んでしまうと社会党政権になりそうだったから。その間、政治家が「家業」となってしまい、昭和40年代半ばあたりから、地盤を自分の子に継がせるための準備をするようになった。明治維新は、武家間の政権交代に過ぎず、市民革命ではない。つまり、ちょんまげ切っただけの武家社会みたいなもの。議員世襲がそれを端的に示している。
治安維持法の影響もあり、大半の国民が、社共労の3文字に戦慄し、過剰反応している。

地方都市の議員構成でみると自民党の支持率が3割ある理由がわかる。多くが農林水産、建設、医療や福祉、飲食などの地元企業や団体の役員である。
これらの職層は雇用や契約の権限を有するので、選挙になると従業員や下請け業者、個人事業主は自民党を支持せざるを得ない。ほかにも企業や地方自治体の管理職、自衛隊員や警察官が自民党を支援する。投票率が5割なら自民党は小選挙で勝てる。野党はせいぜい連合加盟企業や公務員の労働組合員で、人口比では家族や退職者を含めても1割もない。野党が政権をとるなどあり得ないのである。

>これらの職層は雇用や契約の権限を有するので、選挙になると従業員や下請け業者、個人事業主は自民党を支持せざるを得ない。

有権者の投票先を確認できないんだから、従業員に対して「投票の強制」なんてできないでしょ。にもかかわらず、彼らが自民に投票するとすれば、それは「自分の利益になる」と思ってるからでしょう。
ちなみに、立憲や共産が政権を取ったとして、誰か得する人っているんですかね。民主党政権の時は日本企業は超円高で競争力を失い、その分、中国や韓国が得したよね。

これはある、そもそもの岩盤支持層の厚さが自民と立憲じゃ違う。戦後ほとんど自民党に与党をさせて既得権益を貪らせた弊害がでてる。

民主党の時には、
莫大な得票数で自民党を打ち倒して民主党政権が誕生しましたよね。

>「遊び半分」のつもりで「面白いから、離脱に票を投じてみよう」という考えであった。国民投票で面白半分にEU離脱に賛成した人々も、その後の経済情勢の悪化を前にして、今では間違った判断をしたと後悔している

まさにポピュリズムの極地ですね。重要な国策を安易に国民投票にかけるという愚策を犯したキャメロン氏の責任は重いでしょう。ポピュリズムを極力排除するための間接民主制であり議院内閣制のはずなのですが。

日本にも戦前は2大政党制がありました。普通選挙法制定以降の9年間は立憲政友会と憲政党(後に立憲民政党)とが交互に政権を担当しましたが、票や選挙資金目当てに汚職がはびこり、選挙のたびに札束が乱れ飛び、選挙の結果地方では役人や警察署長まで首がすげ替えられるという現在よりもひどい状況だったようです。それも1932年の5.15事件で犬養首相が軍人に暗殺されて以降は政党内閣は終わりました。

>それも1932年の5.15事件で犬養首相が軍人に暗殺されて以降は政党内閣は終わりました。

確かに戦前の政治は腐敗した部分があったと思いますが、政党内閣が終わった後の日本は、もっと悲惨な運命が待っていたという歴史も認識するべきだと思います。
そして政治を叩き、軍部のお先棒を担いで国民を煽り軍部の台頭を助長させたのは他ならぬ朝日だということも認識するべきだと思います。


選択肢が無い事は誰が考えても国民にとって不幸。低投票率だから組織票が有る与党が勝ち続け、政治に緊張感がなくなる。ベストが無いから選挙投票に行かないのではなく、もっと利口になって、ベターに投票したり、与党への牽制の為にバランスを見て投票すれば、緩み切った与党への牽制になって、政治に緊張感が生まれる。先進国は政権交代が有るから緊張感が出て、切磋琢磨する。ダメなら次の選挙で交代させれば良いだけの事。政治に緊張感が無い事がダイナニズムを失わせている。低投票率だから25%の得票率で政権与党が勝ち続けている。愚かな政治を続ける与党を信任しているのと同じ。国民自ら選択肢を増やす事が政治に切磋琢磨させる事になるのだから、それが利口なやり方。


自民党に投票する人が多いのは、こうした人々がこの党から相当な恩恵や利権を得ているからに違いありません。たとえどれだけこの政党が腐敗して、腐りきっていても金さえもらえれば誰も文句を言わない。たとえ汚い政治が行われようとも、金さえ得ることができればいい。人間とはそういう生き物かもしれません。利益を得ることができるところに人間は集います。そこには人間としての倫理もへったくれもありません。ただ果たしてそれでいいのでしょうか。利益誘導だけを期待する政治をそろそろ見直さなければならない時期に来ています。理想論かもしれませんが、人にやさしい政治があってしかるべきです。欧米では大衆の力で民主主義を勝ち取りました。日本の民主主義は戦後、上から与えられたもので、私たちはそのありがたみを知らずにきてしまいました。利益誘導だけを期待する民主主義は本当の民主主義じゃない。

>集団的自衛権が戦争法案などという煽りもまた失敗でした。短絡的でしたね。まあ、支持者を納得させるためには仕方なかったのでしょうが。

ここが問題の根本でしょうね。仮に立憲が政権を取れる数を確保したとしたら、必ず「安保法制廃止」という難題を突き付けられて苦しむことになる。共闘を組む共産党は絶対に廃止を迫ってくるはずだし。
実際に安保法制廃止を検討するような事態になれば、鳩山の「最低でも県外」なんかの何倍も日米関係に影響するし、国際的信用も失う。
自民党が嫌いで次は立憲に投票する有権者も多いだろうが、左派政権には国益を失う相当なコストがかかることを理解した上で投票すべきだね。

>イギリスのように定期的な政権交代が行われる国にするには、たとえ連立であっても、野党が政権構想を打ち立てるしかない。野党にはその努力を強く求めたい。

今の日本の野党では政権構想を打ち立てることなど無理な相談だと思います。
イギリスのように定期的な政権交代が行われる為には、自民党が保守系とリベラル系に分裂して、保守勢力には維新、参政、日本保守が、リベラル勢力には公明、国民、立憲の右派が連携して新たな2大勢力を作って政権獲得を競う構図にするしか無いと思います。
2大政党性の良し悪しは別として、今の立憲が2大政党の一方を担うという前提では2大政党は無理だと思います。

現在の日本には、左派の野党は存在するけど、社会民主主義の野党が存在しない。昔の社会党は左派で、民主党は社会民主主義に近づいたけど、現在の立憲民主党は先祖返りして左派に戻ってしまった。

日本で(欧州のような)社会民主主義の政党が成立せず、左派の政党だけになった理由は、歴史的経緯(『政治改革再考』待鳥聡史・20年)。
・戦前戦中のファシズム・軍国主義の時代に、マルクス主義者が最後まで抵抗したため、戦後に、左派が支持された
・マルクス主義は国家の役割や政府統制も認めるので、戦時の統制経済にも意外と適合的で、戦後まで生き残れた
・マルクス主義そのものが、戦前の日本では、最も体系性を持った社会理論だった。西欧近代の「総代理店」として、マルクス主義=近代主義だった

加えて、
・戦前の自由主義者は(自由主義なので)政府に抑圧され、かつ戦前を全否定する立場でもなかったので、戦後には主役になれなかった